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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

手を繋いで 完




店のドアが開くと、風がふわっと入ってきた

愛おしい
待ち焦がれたその姿が

風と共に入ってきた

何度も夢に見た笑顔だった

恋しくて、思い出すたびに泣いていた
愛おしい笑顔だった


「ただいま、チャンミン」


忘れたくても忘れられなかった
その優しく低い声が

チャンミンの心に響く


せっかく近づいてきてくれるその姿が
涙で滲んで見えない


「ユノさん…」

愛おしい名を呼ぶ声は
すでに涙が混じって…言葉にならない


チャンミンは
ずっと心に決めていた


今度会えたら

もし、手を差し伸べてくれたら
その手を二度と離すまいと




ユノは心に決めていた

今度チャンミンに出会えたら

この胸に抱きしめてその手を2度と離さないと


チャンミンの大きな瞳から
ポロポロと大粒の涙が溢れる


「おかえり…なさい…」


ユノが革の手袋を外しながら、
ゆっくりと笑顔で近づいてくる

ガソリンの匂いが微かにする

ユノは外した手袋を投げ捨てて
大きく両手を広げた


「おいで、チャンミン」

「あ…」


よろよろとした足取りで
チャンミンはユノへ手を伸ばした

ユノはその手をしっかりと掴むと
自分の胸へ引き寄せた


強く

抱きしめて

強く

抱きしめられて


チャンミンはユノの肩に顔を埋めた


耳元で懐かしい声がする


「ごめんな、チャンミン」

「……」

「愛してる」

「ユノさん…僕も愛してる
愛してます…」


肩を震わせ、泣きじゃくるチャンミンを
ユノはしっかりと抱き込んだ

「待っててくれたんだね」

「そう言ったじゃないですか…」

唇をとがらす可愛い泣き顔


「ありがとう」


しばらく抱き合って
チャンミンがユノの胸から顔を上げた

涙に濡れた大きな瞳

「言いたいことはたくさんあるけど」

「うん」

「よかった、ほんとに
無事で帰ってこれて…」

「心配かけたな」

ユノはポケットから
小さな紙包を出してチャンミンに渡した


「?」

「これはお土産」

「僕に?」

「そう、開けてみて」


チャンミンがまだ震える手でそっとその紙包を開くと

中から真綿に包まれた薄いピンクの貝殻が出てきた

それはまあるい形で、透明感があって
角度によって、紫に見えたりピンクに見えたりした

「きれい…」

「きれいだろ?」

「はい…これはどこかで見つけたんですか?」

「小さな恋の師匠からもらった」

「え?師匠?」

「大好きな人にあげろって」

チャンミンはふんわりと微笑んだ

「だから、僕に?」

「そう、だからお前に」

 
にっこりと微笑んだチャンミンのその笑顔は

あの、かつて見た革のフレームの中の笑顔よりも
比べ物にならないくらい、ユノには輝いて見えた


ユノはチャンミンの頬を両手で挟み
じっとその可愛い泣き顔を見つめた

そして、優しくキスをした



隣のカフェから、パソコンで事務仕事をしていたヒチョルが出てきた

バニョレの前に停めてあるバイクに気付いて驚いた

「え?ユノ?」

店を覗いて、ヒチョルは苦笑した

「おいおい」

ヒチョルは店の札をCLOSEに裏返した

「お前ら、外から丸見えだから」


そしてバイクをペシっと叩くと
口笛を吹いて、歩いて行った

ヒチョルの口笛は軽やかで
その足取りも軽やかだった


バニョレは翌日

開店以来、はじめての臨時休業となった





*********



「ねぇ、卒業式終わったら、ミヨンと帰りにご飯食べてきてもいいかしら」

「ミヨンは友達と食べるんじゃないの?
せっかくの大学の卒業式なのに」

ミヨンが卒業式のマントを羽織って
リビングに入ってきた

「みんなとは、ちゃーんと別の日に集まるのよ」

「そうなのか」

「新しくイタリアンのお店ができたっていうから
そこに行こうよ」

「いいわよ、ミヨンは場所わかる?」

「新しい店だから、わからない」

「あなた、ちょっと調べてくれない?」

「いいよ」

キム・ドフンは妻と娘のためにパソコンを出してきた

ミヨンが父の側に寄ってきた

「お父さんも行こうよ」

「ごめんな、どうしても仕事が抜けられなくて」

「つまんないの
卒業式は出なくてもいいけど、ランチは一緒に食べたかったわ」

キム・ドフンはうれしそうに笑った

そしてパソコンを開いた

「えーと、大学の近くか?」

「たぶん、そう
マップアプリでみるの?」

「うん、わかりやすいだろ」

ミヨンは父のキム・ドフンが開いたパソコンを覗き込んだ


「あ、この通りが大学の前の通りだから
ここを曲がってみて」

「ここだな?」

「うん、イタリアンの店が見えたら教えてね」

そう言って検索を父に任せて
ミヨンは慌ただしく自分の部屋へ行った


娘の言われる通りに
カーソルを動かしていたけれど

キム・ドフンは
ふと、気になってカーソルを止めた

その通りに店があった

服を売る店だろうか


その店の前に

スッキリと細身で長身の男性が
ホウキを持っているのがみえた

ストライプのシャツをきちんと着て
きれいにチノパンを履いている

顔はボカしてあるので年齢はわからない

もう1人の男性が店から半身を乗り出して
手を伸ばし

シャツの男性の
ホウキを持っていない手を握りしめている

そのなんてことない2人が
キム・ドフンはとても気になった


まるで、一枚の美しい絵画を見ているようだった

見ていると、心の奥底が
じんわりと温まるようだ

表情はボカしてあってわからないのに
2人が仲良さそうな雰囲気が伝わってきて

ドフンはなんともいえない幸せな気分になった

しばらく微笑みながら、画面の中の2人を見ていた


「お父さん、わかった?」

ミヨンがやってきた

「ん?ああ、ごめん」

パソコンの画面は切り替わり、少し離れた通りの
イタリアンの店にかわった


毎日一緒に過ごし

年月を共に紡ぎ

ただそれだけのことが


極上の幸せなのかもしれない


ユノとチャンミンは

いつもそんな事を胸に
時を紡いでいた


これからもずっと手を繋いで





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こんばんは、百海です。

35話完結まで、お付き合いいただきまして
本当にありがとうございました。

コメントのほうはお返事をしていませんが
どなたのコメントもしっかりと拝読しております。

リアルの2人には衝撃波も襲ってきましたが

わたしの描く世界はびくともしません

それでも
気持ちは自由だと思いますから

いろんな選択があって良いのだと思います

わたしの描く世界を楽しんでいただくのも
また、それもひとつの自由だと思います

わたしは、わたしの思う通りの主人公を2人に演じてもらうのが、わたしの自由で楽しみであります

またお暇な時がありましたら
遊びに来ていただけるとうれしいです

ここへ来て、「夜香花」の続編を書いてみたいと思うようになりました。

「夜香花」のチャンミンはあまりに幼く可愛かったので
少しオトナになったホスト・チャンミンを見てみたいと思ったのです。

いつになるかはわかりませんが
また、全然違うお話になってしまうかもしれませんが笑

また遊びに来ていただけるとうれしいです

本当にいつも皆さまの貴重なお時間を
わたしの稚拙な物語に割いていただいて
感謝しております

まだまだコロナ禍の中、みなさまご自愛ください

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