FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

手を繋いで 32




チャンミンは自分の気持ちをまっさらにしようと思った

ユノがどうだとか

ヨジンがどうだとか

今はそのすべてをまっさらにして

とにかく、ピュアな状態でドフンを感じようと思った

それは、ユノへの愛をしっかりと自分で認めるためでもあった


その日、ヒチョルが車で迎えに来てくれた

「おはようございます
今日はありがとうございます」

「うん、ま、これはミッションだから」

ヒチョルがあえて義務的に言ってくれたのが
チャンミンにはありがたかった。


チャンミンは後部座席に座った


「チャンミン、結構、衝撃的なシーンを見せることになるかもしれない」

「どこに…行くんですか?」

「ドフンね」

「はい」

「結婚するらしくて…」

「……」

チャンミンは一瞬息をのんだ

「あ…もしかして…あの…」

「うん、あの後一緒にいたっていうね、食堂の女」

「はぁ、そうなんですね」

「今日、式場を見に行くらしい
知り合いが働いている結婚式場なんだ。
ドフンと俺の共通の知り合い」

「なるほど…」

「事情を話したら…賛同してくれて…」

「僕も知ってる人ですね、きっと」

「うん…」

「賛同って…」

「ごめんな、チャンミン
ヨジンと同じで、影で見るだけって約束なんだ
今の女とこのまま、チャンミンを思い出してほしくないみたいだ」

「……」

「でも…中に入っていいっていうからさ」

「ありがとうございます
ほんとに何から何まですみません…」

「いや、俺、逆にお節介だったかなってさ」

「そんなことないです
ヒチョルさんと会わなかったら…僕は…一生…」

「ま、そうだよな…」

「感謝してます、ほんとに」

「うん…」


ヒチョルの車は結婚式場についた

駐車場の隅に車を停めた

ヒチョルが後部座席のチャンミンへ振り向いた

「どうする?せっかくだから出ようか」

「ここからでも…見れますか?」

「見れるよ、バッチリとね」

「?」

「隣の白い車はドフンのだ」

「えっ!」

「……どうする?」

「……」

「ドフンが俺の顔を覚えてるかはわからないけど
俺はどのみち、車の中にいる」

「僕も…ここでいいです」

「そう?」

「はい…」


しばらく何も話さず
チャンミンとヒチョルは車の中にいた


チャンミンは思った

ドフンを見るのは…正直少し怖い

5年間…その幻影を恋しく思い、そして苦しんだ

この世にはいないと思っていたドフンが
自分のことを忘れた別世界で生きていたなんて


やがて、結婚式のためだけに作られたチャペルから
カップルと式場のスタッフが出てきた


ドフンだ


さすがにすぐにわかった


遠くからでもはっきりとわかる


ドフン…


懐かしさにチャンミンの胸にギュッと詰まるような苦しさが走る


ドフンは変わらなかった

小柄で可愛い感じの女性と笑いながら
空を見上げている


チャンミンは思わず窓にしがみついた

ドフン…


愛し合った日々…

みんなに反対されながらも
若い自分たちはそれに反撃することに酔っていた

苦労や心の痛みなんて何もなく
幸せだった日々…

チャンミンの目から涙が溢れた

ヒチョルがミラーでチャンミンの泣き顔をみて
ため息をついた

ヒチョルにはその涙がどういうものなのか
推し量ることができない

ここで、チャンミンがドフンへの思慕を蘇らせたりしたら
ユノは…

チャンミンは窓にしがみついて、子供のように泣いた

ドフンとその恋人がゆっくりと笑いながら
こちらへ近づいてきた

「チャンミン…隠れて…」

チャンミンは窓から離れて
ドフンたちから顔を背けた

ドフンたちは、自分たちの隣の車に誰が乗っているのはわかっていても、特にどうということはない

隣の車の助手席を彼女のために開けてやるドフン

窓ガラス越しに、少しだけドフンの声も聞こえる


顔を背けたチャンミンの瞳から
とめどなく涙が溢れる


やがて…

ドフンの車は去っていった


チャンミンたちにはまったく気付くことなく
去っていった


しばらくチャンミンは泣いていた


ヒチョルは声をかけるタイミングもなく
チャンミンを自由に泣かせていた


しばらくして…


「よかった…ほんとに…」

嗚咽の中から絞り出すようなチャンミンの声が聞こえた


「チャンミン?」

「生きててくれて…ほんとうによかった
あんなに幸せそうで…」

「あ…」

「こんな奇跡を起こしてくれた神様に
感謝してもしきれません」

「……」

「ドフン…とてもいい笑顔だったとは思いませんか?」

「うん…思うよ…幸せそうだ」

「ですよね…ほんとによかった」

「うん…よかったよな」

「ヒチョルさん」

「ん?」

「ドフンに会わせてくれて
ほんとうにありがとうございます」

「いや、そんなこといいんだよ」

「僕…ずっと…心の中に燻っているものがあったんです」

「……」

「僕だけが生き残ったことが
すべての人に申し訳ないような気がして」

「……」

「だけど…ほんとに…よかった…」


「チャンミン」

「はい」

「もう、申し訳ないっていう気持ちは消えたか?」

「消えそうです、たぶん」

「今、どうしたい?
店のこととか、自由にしていいんだぞ」

「え?」

チャンミンは泣きはらした顔をあげて
ミラー越しにヒチョルを見上げた

「これからの事、チャンミンの好きにしていいんだ」


「ヒチョルさん…」

「ん?」


「僕は今…めちゃくちゃユノさんに会いたいです」


ヒチョルはその言葉にギュッと目を閉じた

そして長い長いため息をついた

「ほんとに…」

ヒチョルは笑った

「ここにいりゃ、チャンミンの本心が聞けたのに
ほんとにユノは馬鹿だ」


*********


ユノは少し海から離れて
高原に入った

漁師の家に泊めてもらえることも多かったけれど
野宿も多い

少し、緑の多いところで布団で眠りたいと思ったし
なぜか緑の中に身を置きたいという気持ちになった

このあたりは安いロッジが多いのもありがたかった

ロッジに泊まり
ひさしぶりにゆっくりした

地図を見ていて、ふと、このあたりの地名に聞き覚えがあることに気づいた

あ…

まさか…


湖のない高原、白樺が有名な地
そして、清らかな川が山間を流れ、

自分の骨は…
その川に流して欲しいのだと

それは…スンホがいつも言っていた話だ

その話がでるたびに、自分は泣きそうになり
その話をしないようにスンホに頼んだ

連なる山脈の名前も同じだ

そこに流れる川の名前も聞き覚えがある

スンホ亡き後、遠い親戚がなにごとかと病院に駆けつけてきてくれた

スンホの存在でさえその時はじめて知ったという状態だったにも関わらず、その後のことは任せてくれと言ってくれた

ユノは、スンホの遺志を伝えた

ユノは自分が弔うべきではないと
そんな風に思ってしまい、その後を任せてしまった

それなら、この先の川が
スンホが眠る川ということだ

翌朝、ユノはその川に行ってみた

スンホが生まれ育った高原

そこに流れる清らかな川

ユノはそっとその川に手を入れてみると
冷たい水の流れがユノの手に心地よかった

まるで、スンホがユノの訪れを優しく出迎えてくれるようだった

川の流れに手を入れていると
スンホがユノの手に優しく触れているようだった

海沿いを走っていた自分が
ふと、この高原に立ち寄りたいと思ったのは

偶然ではなく

スンホ…お前に呼ばれたのか

ユノは思った

スンホ、俺はお前を好きで幸せだった
俺を親友だと言ってくれて、俺はうれしかった

俺の気持ちを知っていたお前は
さぞかし辛かっただろうな

最期に俺に謝って、お前は心の重荷が軽くなって天国に召されたかな

そうだといいな

俺こそ、お前にありがとうと言えばよかった

だから、今言うよ

俺にかけがえのない時間をくれて
ほんとうにありがとう




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村


こんばんは!百海です
更新遅くなりすみません汗
予約投稿を下書きのままにしていました汗
検索フォーム
ブロとも申請フォーム