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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

この世の果て 38



チャンミンはいつになく緊張していた

今日ははじめて、イ・ユアンと対峙する日だ

グループの社長が開発反対派と直に会うなんていかがなものかと、社内ではそんな意見が多かった

けれど、反対派の方としてみれば
敵の将軍が自ら出向いて来る、ということなら
こちらも誠実に向き合う、という心づもりでいた

会社の大きな会議室で対峙することとなった

思ったより大勢でおしかけてきた反対派のほとんどを
外に出して

チャンミンは反対派の幹部だけを
会議室に通した

イ・ユアンはさっぱりと髪を切って
スーツを着ていた

そんなユアンが部屋に入って来る様は
まさに、ユノそのものだった

やはり、ユノだ

僕は…見間違えたりしない



唖然としたチャンミンは椅子に座ることもできず
ユアンを見つめたまま、立ち尽くした

懐かしくて、愛おしくて
今、自分がどんな立場で、何をしているのか
忘れそうになる


ユアンを先頭とした幹部3人は
棒立ちになっているチャンミンを前に

椅子に座るわけにもいかず
ただ立っているしかなかった

相手方の若い社長の様子がおかしい

そんなことを考えながら

反対派の3人はチラリとお互いを見やりながら
仕方なくそのまま立っていた

チャンミンから驚いたような視線を浴び続けていたユアンは少し咳払いをした

見かねた側近が、チャンミンに耳打ちした

「社長、とりあえず席につかれたほうが」

ハッとしたチャンミンも咳払いをひとつした

「どうぞお座りください」

チャンミンの一言で、ようやく会談という状況になった

一同席について
チャンミンから順番に挨拶をしていく

ユノは…

「イ・ユアンです」

としっかりと挨拶をしていた

少しだけ、肩を落とすチャンミン

そんな事は知るよしもなく
ユアンが早速口を開いた

「今日は話を聞いてくださるということで
お時間を作っていただき、ありがとうございます」

「………」

チャンミンは手元の資料を見ることもせず
じっとユアンを見つめていた


ヒョン…

僕の愛するユノ…

間違えるわけがない

だって、僕たちはずっと一緒に過ごしてきたんだ


「お手元の…資料を見ていただきたいのですが」

ユアンがチャンミンの視線に負けずに
説明をはじめる

ユアンが何を話しているのか
チャンミンにはまったく理解ができない

その懐かしい声ばかりに意識がいって
内容など入ってこなかった

ページをめくるその指

あたりを見回すその視線

しっかりと抱きとめてくれた
その広い胸

すべてがチャンミンの命を震わせる

ホクロやちょっとした傷痕も
まさにユノそのものだった

何か、硬い話を告げているその唇は

かつて、自分を大好きだと
愛してると語ってくれた唇だ

ユノ

愛してる

今なら思う

もっと愛してると言えばよかった

ちゃんと言ってあげればよかった


そう思った途端


チャンミンの瞳には涙が溢れだして

身体が震えだしたかと思ったら
嗚咽が止まらなくなってしまった

苦しそうに、けれど激しく泣き出したチャンミンに

まわりは騒然となった


ユアンも、資料の説明をやめて
席を立ち、チャンミンの様子を見にきた

「大丈夫ですか?」


苦しさで声の出ないチャンミンは
ユアンが側まで来たことで
また烈しく泣き出した

「ううう…う…うう…」

まるで子供が泣きじゃくるように
チャンミンは泣いた


今まで泣きたくても泣けなかった

泣いたら、ユノはもういないのだということを
認めてしまうことになる

だから

泣くのを我慢していた


机に突っ伏して泣きじゃくるチャンミンを
秘書たちがその両腕を抱えて
会議室から連れ出そうとした


「ううう…大丈夫…です…このまま」

この部屋から連れ出されてしまったら
もうユノには会えなくなるんじゃないか

そんな恐怖がチャンミンにあった

「大丈夫…このまま…」

連れ出そうとする側近と嗚咽に苦しむチャンミンが
ガタガタと無様な姿を晒していたけれど

ユアンが泣きじゃくるチャンミンに声をかけた

「ここで待っているんで。
落ち着いたら、また話しましょう
とりあえず、落ち着くまでどこかで休んだほうが
よさそうです」

「………」

ひっく、と喉が音を立てている

チャンミンは軽く頭をさげて
今度はおとなしく部屋を出た

隣のもう少し小さい会議室に入って
チャンミンはひとり、椅子に雪崩れ込むように座った

「社長、大丈夫ですか?」

「申し訳ない」

社長が " 申し訳ない"という言葉を発したことに
側近たちは驚いた

冷酷な管理者というイメージしかなかったのに

最近の社長は
表情というものが生まれているような感じだ


「お水かなにか、お持ちしましょうか」

「頼みます」

だんだんと落ち着いてきた

ユアンは待ってくれるといった

その言葉がとても安心できた


側近が持ってきた水を一口飲み
チャンミンは椅子に腰掛けて頭を抱えた

ひさしぶりに感じた、ユノだった

僕を見ても、何も感じないのか

あんなに…あんなにも愛し合って
片時も離れず、一緒にいたというのに

もしかしたら、わかっているのではないか

僕の元に戻る手段として
反対派のリーダーなんてやっているのではないか

だとしたら

どうにかして、2人で会えるようにしなければ

チャンミンは側近を呼んだ

「あのリーダーをここに呼んでくれないか
ここで説明を聞く」

「あの、イ・ユアン…ひとりですか?」

「こちらも私1人で話を聞くから」

「それはいけません。
言った言わないの話になると困ります。
誰かが間にはいらなければ」

「公式な約束事は一切しない
個人的になぜあの漁村を守りたいのか
知りたいだけだ」

「しかし…」

「とりあえず、ここへ連れてきてくれ」

「……はい」


2人きりになったら、きっとユノはなにか言ってくれるはずだ

チャンミンは自分の頬を両手で軽く叩いた




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