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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

この世の果て 37



ドンホは息をのんだ

チャンミンの瞳が
悲しげに輝いてドンホを責めるように見つめる

あまりに真剣なチャンミンに
ドンホは視線を逸らすことができない

「ユノを…どこにやったの…」

「チャンミン…」

ドンホもしっかりとチャンミンを見つめて
ゆっくりと話しはじめる

「じゃあ、聞くけど」

「なに?」

「2人とも…あの時、生き返ったとして…」

「……」

「元の生活に戻れたと思う?」

「……戻れたよ、もちろん」


「ユノ先輩は…僕に頭をさげに来た」

「……」

「俺が…責任を持って…チャンミンを止めるからって」

「……」

「力を貸してくれって…そう言ったんだ」

「……」

あの日のキスをチャンミンは思い出していた

僕とユノの最後のキス


「ユノ先輩…ほんとうに捨て身で…」

気づいていた

ユノはもう僕が罪を重ねないように

すべてを終わらせてくれようとしたのだ

命をかけて

あのユノの瞳…悲しげで…それでもとても優しい

優しくキスをしてくれた

一緒にこの世の果てまで旅にでるための…キス


「もう、君たちは別々に生きたほうがいいんだ」

「……」

「チャンミン…わかるでしょう」

「…ドンホ…」

「……」

「僕たちの人生に…君を巻き込んだことは
ほんとうに申し訳ないって思ってる」

ドンホは下を向いた

「それは…いいんだ」

ドンホは少し笑った

「僕は…チャンミンが友達になってくれて
嬉しかったんだから」

「……」

「僕が好きでしたことだから…」

「……」

「ユノ先輩が…君を心から愛してるのは
よくわかってる…だけど」

「ドンホ…僕とユノはね…離れたらいけないんだ」

「……」


「お互いが…自分の居場所なんだ」


「……」

ドンホがギュッと目を閉じた

「チャンミン…」

「……」

ドンホは一度大きく深呼吸をして

そしてポツリと話しはじめた


「先に意識が戻ったのは…ユノ先輩だった」


「……」

「蘇生して…すぐだったんだけど
少し、様子が変で…
しばらくしたら記憶に障害があることが…わかった」

「……」

チャンミンはごくりと唾を飲んだ

「自分と家族、友達なんかのことがごっそりと
記憶から抜けていたんだ」

「……」

「思い出せないことに苦しんでたみたいだったけど
そのうち、なんかまわりでヤバイってことになって」

「何がヤバイの?」

「生かしておくのが」

「え?」

「僕がその始末を頼まれた…
けれど…できなくて」

「なんで始末なんて…」

「会社的に…都合が悪かったんだろうね
無理心中なんて…聞こえも悪いし、死んでしまったことにしようと」

「………そんな簡単に」

「会社の権利がチャンミンの所有から他に移らないように
見守ってたのは、ユノ先輩だったらしいし
そういうのもあったんだと思う」

「ふん…なるほど」

「よくわからないけれど」

「元々、ユノの母親、僕の叔母だけど
不貞を働いたってことで、一族とは関係ない人間として排除されてたし」

「……そういう感じだと思う
ユノ先輩がいると、いい思いができない人もいたんじゃない?」

「それで?」

「企んだ」

「……」

「病院を脱走したことにして」

「脱走…」

「僕以外の誰かに、始末されてしまう前に」

「そんな…」

「漁村の上にちょっとした山があって
ユノ先輩なら、ひとりで楽に降りてこれるようなところ
わざと、そんなところを選んだ」

「そこに…放り出したっていうのか」

チャンミンがワナワナと震える

「あの時…それが僕たちにできる
最大限のことだったんだよ」

ドンホの声が悲しげだ

「僕たち?」

「チャンミンとユノ先輩のことを知る人間だ」
刑事さんも、ソン先生も」

「…パク刑事も?」

「チャンミンの意識は戻るかどうかわからなかった
もし、ユノ先輩の記憶が戻ったら、先輩がどれだけ苦しむか…」

「………」

「パク刑事が…そんなことも心配していた」

「……」

そんなに周りの人々が
自分とユノを守ろうとしてくれていたなんて
チャンミンは知らなかった

けれど…


ドンホは静かに話す

「チャンミンが、こうやって僕のところへ来るだろうなってわかってた」

「パク刑事から連絡があった?」

「うん、たぶんそっちへ行くだろうって」

「ユノのこと口止めされたでしょ?」

「いや」

「え?」

チャンミンが意外そうな顔をした

「チャンミンがとても真剣で
見てられないって」

「……」

「もう隠し通すのは無理だろうからって
しかも、ああやって、テレビなんかに出られたら」

「じゃあ…やっぱり」

「多分そうだと思う。状況から考えても」

「……」

「反対している漁村はたしかに
あの時の山の下にあるしね」

「……」

「しかも、あんなに似ていたら…さ」

「ユノ…なんだね…あの男」


「自分で…確かめてみたら」

「……」

「そう言ったのはね、実はパク刑事だ」

「…そう」

「ああやって、表に出てきて、逆によかったんだと思う」

「始末…しにくい…から?」

「うん」

ドンホははーっとため息をついて
そして今度は顔を上げて言った

「会うの?あの男に」

「もちろん、会うよ」

「チャンミン…」

「思い出させてあげる、時間がかかっても」

ドンホが下を向いた

「2人とも傷つくだけだよ…」

「乗り越えられるよ」

「………」

「僕たちは…きっと相手を思いすぎて
道を誤ってしまったんだ」

「チャンミン…」

「愛しているんだ…今もずっと…」

「じゃあ、もし…ユノ先輩が
新しい愛に生きていたら?」

「……」

「2年以上経っているんだ
何があっても、おかしくないじゃないか」

「そのときは…
ユノに選択してもらうよ」

「今から言っておくけれど
僕は魔法使いじゃない、ユノ先輩の記憶を取り戻すとか
チャンミンを好きにさせるとか、そんなことはできないからね」

「必要ないよ、そんなこと」

「……」

「ヒョン…が…」

「……」

「命をかけて、僕のしてることをやめさせようとしたんだよね」

「そうだよ、チャンミン」

「僕は…止めて欲しかったのかもしれない
自分でも、どうしていいか…わからなくて」

「………」

「僕も、ユノが嫌がることは、やめる」

フッとドンホが笑ってつぶやいた

「僕も…誰か、止めてくれる人がいたら」

チャンミンが少し微笑んだ

「僕が止めようか?
あまり説得力がないかもしれないけど」

ドンホも顔を上げて少し笑った

「ありがと、チャンミン
僕を止めようとする人の命が危ないよ
だから、いいんだ」

「そうか…」

「でも、ユノ先輩は地獄まで一緒に来てくれようとしたなんてね、チャンミンがやっぱり羨ましい」

「……」

「僕は…地獄に行くなら1人で行かなきゃ」

すべてを諦めたように
ドンホは笑った

「僕も地獄行きだから、向こうで会うか」

チャンミンも笑った

「え?アハハ…ありがとう」

「……」

「ドンホさ」

「うん」


「僕が友達になってくれて感謝してるって言ったけど」

「うん」

「僕も、友達になってくれて
ドンホに感謝してるよ」

「……」

「……」

「そっか」

「うん」

「よかった、それなら」


2人は笑った

どこかで、意図することなく道を外れてしまって
とんでもないところまで来ている自分たちを

2人は嘲笑った





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