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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

この世の果て



この想いの終点はどこなのだろう

あなたを想う心はあまりに熱く
深く、重い

透明で透きとおるダイヤモンドより硬いこの想いは

氷のナイフとなって
やがては自分をもキズつけるだろう

何が正しくて、何が間違っているのか
それさえ僕にはわからない

ひとつだけ言えるのは

ユノ…

あなたを死ぬほど愛してる

この世の果てがたとえ地獄であったとしても

どこまでもあなたと落ちていく

それが僕の極上の幸せだ



この想いの終着駅はどこなのだろう

心とか体とか、そんな生易しいものなんかで愛せない

俺は、魂でお前を愛し
生命をかけて守り通す


そのガラス細工のような繊細な魂を
もう誰にも触れさせない

そのためなら
俺は悪魔にだって簡単になれる


逃げて

俺たちを傷つけるものからどこまでも逃げて


たとえその行き着く先が
この世の果てであったとしても


チャンミン…


俺はお前を離さないよ






************



チャンミンは洗いたてのタオルをスポーツバッグから取り出すと

買ったばかりのドリンクと一緒に
小さなメッシュのトートバッグに入れた。
ロッカールームから出て、そのまま四角い窓のついたドアを開けた

体育館ほどの広さがあるボルダリングジムには

カラフルな突起物がたくさんついた
ボルダリング用の人工壁が設置されていた

その壁にユノがしがみつくようにして
トライしている

ユノは少し悩みながらも、次に掴むべき突起物を的確に判断して軽々と高い場所へ上がっていく


チャンミンはその後ろ姿を優しく微笑みながら見つめていた

「ヒョン」

チャンミンが呼びかけると
ユノはチラリとこちらへ頭を向けた

顔まではこちらを向けないようで
「おぅ」と返事だけをした

「そろそろ帰ろう、僕もうお腹が空いちゃった」

その長身で上質なスーツを着こなした姿からは
想像できない甘えた声だ


「もう少しだけ待って、チャンミン」

薄いTシャツの背中はユノの汗を吸い
張り出した肩甲骨を浮き彫りにする

突起を掴み、更に上へとその身体を引き上げようとする二の腕は

見事に筋肉が盛り上がり、ユノの体躯の良さを現す


美しいユノ

そう、僕だけのユノ

チャンミンは目を細めてユノを見つめる

やがて、ひょいと身軽に岩から飛び降りて、
ユノがこちらを振り向いた


「ごめんな、メシ食いに行こう」

額に汗が光る
爽やかな笑顔

白い歯が輝き、優しい眼差しが光っている

チャンミンは身体中の血が沸き立つような錯覚を覚えて

毎日唱える呪文のような言葉を
心で反芻する

好きだ、ヒョン
愛してる


この爽やかな笑顔の裏に
深い苦しみがあることを僕は知っている


そう、僕だけがあなたの理解者

それを、どうか忘れないで


ユノはタオルとドリンクボトルをチャンミンから受け取ると、タオルで顔の汗を拭き、ドリンクボトルを頬にあてて心地良さそうな顔をした。

「つめてぇー気持ちいい」

チャンミンはそんなユノの様子を
微笑ましそうに眺めた

「ヒョンは明日会議でしょう」

「そうだよ」

「資料を揃えておきました」

「え?俺、揃えたよ」

「見直しをさせていただきました。
ちょっと足りないと思えたので、少し足しました」

「そうなのか?助かるよチャンミン
あとで確認させてもらう」

「若きユンホ部長なんですから
営業部に恥をかかせるわけにはいきません」

「いつもありがとうございます
チャンミン専務」

「専務って、言わないでよ」

チャンミンが口を尖らす

「だって、立派な専務だろ?
俺たちの若き指導者だ」

「俺たちって、他の部長も入れてる?」

「企画部やその他いろいろ」

「僕を仲間はずれみたいに言うね」

大きな会社の跡取り専務で、実力もあるのに
ユノの前では昔のままだ

小さな弟のチャンミンだった

いつも自分にくっついて歩く
可愛い弟

その小さな足取りで、一生懸命ユノに追いつこうと
額に汗をかいていた幼いチャンミン


ユノがこの世で唯一守るべき
愛おしい存在

それは理屈ではない

本能だ

全力で守りたくなる
その唯一無二の存在

それがチャンミンだった




************


(20年前)


「チャンミン、ちょっとこちらに」

「はぁい」

優しい母に呼ばれて
幼いチャンミンは可愛い声で返事をする

ちょこちょこと走りながら
応接間に入ったチャンミンは視界に入ってきたその人に、

目と心を一瞬にして奪われた


あの時の衝撃が
その後のチャンミンを変えたと言ってもいい


そこには、チャンミンよりいくつか年上の、
綺麗な男の子が立っていた


子供にしてはすっきりと大人っぽい顔立ち

同じ年頃の子より幾分背が高そうだ

緊張しているのか
キリリと唇を引き結ぶ

切れ長の瞳は黒目がちで
強い視線でチャンミンをまっすぐに見つめた

「チャンミン、紹介するわね、
あなたのお兄さまよ」

「え…」

「今日からあなたのお兄さまになった
ユンホくん」

チャンミンの瞳が輝いた

「ほんと?ほんとに僕の…ヒョン?」

母は、ユンホの肩を優しく抱いて
話しかける

「この子はチャンミン。
お兄さんが欲しくてたまらなかったのよ。
ユノが来てくれて本当によかった」


ずっと兄が欲しくて

いつも母に無理を言っていた

まさか、自分に兄ができるなんて
しかも、こんなに綺麗でカッコいいヒョン

きっとサンタクロースが少しだけ早く
自分にプレゼントをくれたのだ

だって僕は毎晩お祈りしていたんだ

「ヒョンがほしい
カッコいいヒョンを僕にください」

チャンミンはぱーっと笑顔になって
にっこりと笑った


可愛い

ユノは単純にそう思った


ここに来るまでに
自分が壊れてしまうのではないかというほど緊張していた

そんな自分の強張りを
チャンミンの可愛い笑顔が解してくれるような気がする

「僕の…ヒョン?」

大きな瞳がキラキラと輝く
丸い頬がピンク色に紅潮してつやつやとしている

「うん…よろしくね、チャンミン」

そう言って、ユノはおずおずと片手を差し出すと

チャンミンは突然弾けたように
その手を掴み、応接室から飛び出し
ユノを引っ張って行った

突然のことにユノはよろめいたけれど
チャンミンについて小走りに部屋を出た

「僕の部屋に来て!
見せたいものがたくさんあるんだ!」

母は楽しそうに廊下へ出て
チャンミンの様子に微笑んだ

「チャンミンったら、ほんとうにヒョンがほしかったのね」

チャンミンがふと、母へ振り返った

期待に輝く瞳

「ねぇ、お母様
ユノヒョンは僕と同じ部屋でいいでしょう?」

「いいけど、お兄様がいいって言ったらね?」

チャンミンは、その小さな手で
ユノの手を掴み、縋るような瞳でユノを見上げる

「ヒョンは僕と同じ部屋ではダメ?」

「僕は…もちろん…構わないよ」

ぱーっとチャンミンが笑顔になった

「一緒に寝てくれる?
その前に絵本を読んでくれる?」

「う、うん、もちろん」

弾けるようなチャンミンの笑顔
その瞳がキラキラと輝く

「ヒョンは僕と同じ部屋でいいって!」

チャンミンが母に乞うような視線を向ける

「あら、そう?それはよかったわね?
じゃお兄様の荷物をチャンミンのお部屋に持っていくわね」

「はーい!」

チャンミンは再びユノの手を取り
自分の部屋へ小走りに走った

「よかったわ、ユンホもとても良い子そうだし。
上手く行きそうね」


側にいたお手伝いの女性は
そんな2人を訝しげに見た

「でも、奥様、あの子は…」

微笑んでいた母の表情が少しだけきつくなる

「ソンミ、ユンホは姉の忘れ形見です。
誰に似ていようとその事実は変わらないわ」

「はい…」


ソンミと呼ばれたお手伝いの女性は
恭しく頭を下げた。


チャンミンの母は
そっと子ども部屋を覗きに行った

欲しがっていた兄ができて
チャンミンは少し興奮している

まだ緊張して強張っているユノに
チャンミンが次から次へとおもちゃを出してはユノに触らせている

とっておきの大事なおもちゃも
躊躇することなくユノに渡してしまうチャンミン

母はクスッと笑った

これで、いいのだ
きっとすべてうまく行く

だから姉さん、安心して天国で休んでね


いつもなら、なんだかんだと理由をつけてベッドに入らないチャンミンが
今日は早くに風呂にも入り、すっかりパジャマに着替えている

「あら、チャンミナ今日はいい子なのね」

「だってね、ボクのヒョンが絵本を読んでくれるから」

「チャンミン、お兄さまは今日は疲れているのよ、
絵本は明日にして休ませてあげて?」

「……はい」

少し寂しそうにチャンミンは言った

いつもなら、ワガママを言って困らせるのに、ユノが疲れていることを気遣っているというのだろうか

母は少し驚き、そしてそんな思いやりがチャンミンにあることを知って嬉しくなった

「優しいのね、チャンミナ。
きっとお兄さまはあなたの事が大好きになるわよ」

「ほんと?」

「きっとそうよ」

チャンミンの丸い頬を母は撫でた


ユノはひとりで風呂に入った
一緒に入りたいとチャンミンがワガママを言っていたけれど、

チャンミンの母がそれを窘めた


ユノはゆっくりと湯船に浸かり
まるで大人のように大きくため息をついた


これからどうなるのだろう

自分がこの家で受け入れがたい存在であることは、
この話が決まった時の空気でわかった

だから
ここに来るまでは、本当に緊張していた

けれど、小さなチャンミンが
それこそ全身で自分を受け入れてくれた

あの可愛い笑顔で
自分の緊張がかなり解れた

叔母もとても優しい

これからの生活に少し期待していいだろうか。

幾分楽しみもあるのかもしれない

そう思うと、ユノの表情が緩んだ


風呂から上がると、数少ない荷物から
着古したパジャマを取り出し身につけた

その様子をチャンミンが脱衣所まで来て
嬉しそうに眺めていた

「ユノヒョンはこのパジャマでガサガサしないの?」

「ガサガサ?」

「だって…」

着古してゴワついたパジャマの生地を
チャンミンは小さな手のひらで撫でた

「着慣れてるから、大丈夫。」

ユノは白い歯を見せて笑った

チャンミンは、ユノの笑顔をとても綺麗だと思った。

綺麗という言葉はお姫様やお花を褒める言葉だと思っていたけれど

こんな風に、男に…しかもまだ子供の。
そんな存在にも当てはまる言葉なのだと
幼心に感じた


チャンミンのベッドは、
ユノと2人で寝転がってもまだ十分な広さがある

チャンミンは憧れていた兄と

ユノは叔母の言う通りたしかに疲れていたけれど、
チャンミンの望む通り絵本を読んでやりたいと思った


最初はゆっくりと本を読んでやっていた
その内にチャンミンの質問責めが始まった

ヒョンは、いつどこで生まれたの?
好きな食べ物はなに?
歌は歌える?
算数は好き?


ユノはひとつひとつ答える代わりに
チャンミンの頭を優しく撫でた

「いっぺんに答えられないよ、チャンミン」

「じゃあ、ひとつだけ」

「なに?」

「ユノヒョンは、サンタさんのプレゼント?」

「え?」

「僕が毎晩お願いしたの。
クリスマスに、ヒョンをくださいって」

「あ、それで…僕が来たから?」

「ちがうの?」

一瞬、キョトンとした顔をしていたユノだったけれど
そのうち、可笑しそうに笑い出した

その笑顔が明るくて眩しくて
チャンミンはうれしくなった


「そうだよ、サンタさんがね
チャンミンがヒョンを欲しがっているから
どうか行ってあげてって」


チャンミンは得意げに
そして心から嬉しそうに笑った




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おひさしぶりです
百海です。

新しいお話がはじまりました。

2人がこんな切ない物語の映画に主演してくれたら

今回もそれがテーマだと思っています。

苦しく思われてしまう方は読むことを無理しないでくださいね。
忙しい毎日の中で、ちょっとだけ現実逃避のために
書いています。

よろしくお願いします
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