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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

ナイルの庭 17



ユノのマンションで2人だけの温かな夕食をとった

ユノは2人でいるこの時間があまりに幸せで、
手離したくないと思う

いつも、こんな風に
チャンミンと過ごせたら

外でどんな嫌な事があったって
耐えられる

チャンミンも気に入らないことがあったりすると
ひどく甘えん坊になるから

それを自分が甘やかしてやって
逆に自分が癒されたりする


「ねぇ、ユノ」

「ん?」

「先のこと、少し決めない?」

「先のこと?」

「ユノ、言ってたでしょう?
僕が少しずつ拠点を動かして
それでも故郷と繋がっていられるようにって」

「うん」

「キュヒョンがね、何か故郷を紹介できるようなそんな仕事がしたいって、こっちに出てきてる
そういうのもあるんだなぁって思って」

「へぇ」

ユノが少し身を乗り出した

「何か、観光とかそっちを考えているのか?」

チャンミンがフフッと笑った

「まだ、なにも
コンビニでがんばってバイトしてる。
僕も、何か動き出そうかなって」

「そっか…」

「僕…ユノの側にいたい」

「………」

俯くチャンミンに、ユノが探るように問う

「チャンミン…俺のこと心配?」

「………心配っていうか」

ユノは言葉を探すチャンミンを愛おしそうに目を細めて見つめる

「チャンミンが俺を思いやってくれるのはわかってる。
すごくありがたい」

「………」

「だけど、俺、とりあえず自分の事務所に引っ張りこんでしまった人間をどうにかしてやらないと」

「責任感じてるの?」

挑むようなチャンミンに
意外そうに、首をかしげるユノ

「当たり前だよ、チャンミン
責任を感じるだろ」

「けど…」

「だけどなに?」

ユノがイラつきはじめても
チャンミンは負けてはいなかった

「僕の事とは…全然違うかもだけど
その…一緒に仕事するっていうのは、それなりにリスクもあるわけで全部が全部、ユノが悪いわけじゃないでしょう」

「チャンミンの仕事の事を例えて言ってるの?」

「………」

「チャンミンの畑で野菜がとれなかったりするのは、
そりゃ天候のせいで誰のせいでもないって言えるだろうけれど
俺の仕事はそうじゃない、全部俺の責任になるんだ」

チャンミンがキッとユノを見据えて
強い視線になった

「ユノが、有名なデザイナーの誘いを断ったから?
その人の恋人にならなかったから?」

「………」

ユノが驚いたようにチャンミンを見つめる

「ユノが悪いんじゃないでしょう!
それで立場が悪くなったら、みんなで助け合わなきゃ」

「全然違う、そんな簡単な話じゃない」

「じゃあ、ユノはその有名な人の恋人になればよかったの?!それならうまくいったって言うの?」

「………」

「そんなことまでして得るものってなに?」

「お前の畑と俺の事務所は違う」

チャンミンが大きく目を見開いた

その顔を見てユノは、まずい、と思った

ユノが言いたいことは
上手くチャンミンには伝わらない

ユノは決してチャンミンの仕事をバカにしたり、
下に見ていたわけではなく
性質の違うものだと言いたかったのに

元々、田舎というコンプレックスを持っていたチャンミンには歪んだ形で伝わってしまった


「どうせ、僕にはこんな服がどうのこうのって世界はわかんないよ
そのために、好きでもない人と寝るとか
信じられない!」

ユノの切れ長の目がさらにシャープにつり上がる

「誰から聞いたのか知らないけれど
わからないなら余計な口出しするな!
お前にはわからない世界なんだよ!」

「だから!どうせ僕にはわからないよ!」

「………」


何か言いかけてユノは黙った

これ以上話しても、埒があかないと思った

「もうやめよう、チャンミン」

「………」

「どうせ、僕は理解できないから?」

「そうじゃない」

「僕はただあなたのそばでニコニコ笑っていればいいだけ?」

「……チャンミン」

「僕にそういうのを求めてる?
田舎者のなんにもわからないただニコニコしてるだけの」

「…………」


ユノが少し哀しそうな顔をした

チャンミンはまだ息が荒い

ユノは口角を片方あげて無理に笑顔を作るけれど、
その瞳はとても寂しげで
それでも声を絞りだすように語る

「ただ…ニコニコなんて…
チャンミンはすぐ怒って、寂しいとわがままを言って俺を困らすし
ストレートに不満をぶつけてくるし…」

その言葉にチャンミンがハッとして
ユノを見つめた

「だけど…そんな風に甘えてくれることが
俺は可愛くてたまらない
たまに笑ってくれると、ほんとに俺は」

ユノのフォークを持つ手が微かに震えている


「ユノ…僕…」

チャンミンの小さな声を遮るように
ユノが凛として顔をあげた

「だから、俺はお前に責任が持てるように
もっと頑張りたい…」

「………ユノ」

「今のままの俺じゃダメだ」

「………」

「きっとやれる」

ユノは自分を奮い立たせるように
自分に言い聞かせるようにつぶやいた


チャンミンはうな垂れた

酷いことを言いすぎた

なのに、ユノはそれを責めることもせず
自分を戒めるようなことを言っている

「ユノ…僕…違うんだ
ほんとにごめんなさい」

「………」

「いつも、こうやって、僕は後先考えずに
なんでも口に出してしまう
そして、いつもユノに許してもらってる」

「そんなことないよ
気にするな」

「………」


ユノが優しく微笑む

「キュヒョンから何を聞いたか知らないけれど、
そんな話聞いてショックだったよな?」

「うん…でも、ユノ、それを拒否したって聞いたから、なんかカッコイイと思ったよ」

「どうだったのかな
受け入れなきゃいけなかったのかもしれない…事務所のことを考えたら」

「そんな…」

「だけど、そんなことだけで仕事をもらっていたら、
いったい俺はなんの職業なんだって話」

「そうだよ!」

ユノがからかうように
チャンミンを見る

「チャンミンは、ヤキモチ妬いた?」

「……そういうことになったら
イヤだと思ったよ、許せない」

「仕事だったら仕方ないと思えた?」

「どこが一流なのか知らないけれど仕事にそんなの持ち込むのは大した人じゃないと思う」

「………」

ユノがチャンミンを見つめると
チャンミンはバツが悪そうな顔をした

「知ったような…ことを…僕はまた言ってるかもだけど」

「そんなことない。それが普通の感覚だよ、チャンミン」

「………」

「こういう業界のそんな汚い部分が少しでも改善できたらいいと思っているんだ」

「………」

「寝て仕事をもらうとか、そんなことが罷り通るなんて、もうそういう時代じゃない」

「それも、ユノの夢?」

「そうだ」

「僕にできることは…ない?」

真剣に言うチャンミンに
ユノはフッと微笑んだ

「できたら…」

「なに?なんでもするよ?」

「さっきみたいに、俺を叱ってほしいんだ」

ユノの瞳は優しい

つい前のめりになっていたチャンミンは
少し引いてしまった

「え…べつに…叱ったわけじゃ…」

「俺が…間違っていたり、
驕り高ぶっていたりしたらさ」

「じゃあ、ユノが無理をしすぎて
自分を責めすぎてる時も叱るけどいい?」

「ああ、ぜひそうしてくれ」

ユノが嬉しそうに笑った


その夜、洗面所に行こうとするユノにチャンミンが声をかけた

「どこ行くの?」

ユノが狼狽えて、その視線ご泳ぐ

「あ…ビタミン剤を…その…」

チャンミンがユノを背後から
しっかりと抱きしめた

「そんなのいらないよ
僕がユノを抱きしめて寝るから」

「チャンミン…」

「ね?」

「あ…」

「僕が…ビタミン剤になってあげるから」


それで一旦はベッドに潜ったユノだけれど

結局は、明け方に起きて洗面所で錠剤を口にした

チャンミンはベッドで背中を向けて丸まって
寝ているように見せていたけれど

その大きな瞳を見開いて
ユノの様子を背中で感じていた








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