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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車〜完





「あ、そのあたりね、高速沿いの遊園地に行く人で
夕方からは渋滞するから、迂回したほうがいいよ」

「そうですか、ありがとうございます」

ユサンがサービスエリアで掲示マップを眺めているところに、トラックの運転手がアドバイスしてくれた

ネットで迂回を調べてみても

蒼い観覧車の話題ばかりが検索に引っかかる


" プロポーズはあの蒼い観覧車で "

" 入隊する前に、あの観覧車に2人で乗ろう "


ユサンは微笑んだ

チャンミンさんがデザインした観覧車
すごい人気なのね…


ユサンは、ユノとチャンミンがレストランをオープンしたと聞き、そろそろ落ち着いた頃かと思って訪れた


思ったより行き方は簡単で
運転を習い始めたばかりのユサンでも1人で来れた


訪れたレストランはSNSで見たとおりの
素晴らしい店だった


アイビーが絡まる白い漆喰の壁

季節によって、外で食べてもいいし
中の内装も自然に溢れていてとてもいい

赤く塗られた木の門を開けて
チャンミンが出迎えてくれた

長身に白いシャツと黒いカフェエプロンが良く似合う


「いらっしゃい!」

「お久しぶりです」

「ちょうどランチが終わったところで
ユノも中で待ってます」


レンガと木で作られたその店の中に入ると

ユノが満面の笑顔で出てきた

日に焼けた男らしい顔立ちに
優しそうな瞳

店を手伝っていたのか
チャンミンと同じ白いシャツに黒いカフェエプロン


「いらっしゃい」

「オープンしたては混むかと思って
やっと来てみたんです」

「正解です」

そう言ってユノは笑った


「お2人のカッコ良さも、ネットで話題になってますよ」

「そうですか?」

チャンミンも照れ臭そうに笑った


ユサンは席に案内され
チャンミンが腕を振るった美味しい料理をご馳走になった

食後にコーヒーを持ってきたユノが気まずそうに話した


「あの…スビンは…どうですか?」

「ええ、順調だと思います
カウンセリングには本人から積極的に行くようになって
先生もいい傾向だと」

「そうですか、よかった」

ユノはホッとした表情だった

チャンミンがそんなユノの様子をみて安心したように微笑む


「外のガーデンも有名なんですよ?
ユノが手がけているんです」

「それは拝見したいです」

「どうぞ」

チャンミンがユサンを案内した


案内されたガーデンは
あえて整えず、ナチュラルに草花が咲いているように見えたけれど、かなり計算されているのだそう

ユサンとチャンミンはその中を2人で散歩した。


「今度はユノは薔薇をやりたいんだって」

「大変なんでしょ?薔薇って」

「うん、でも僕も手伝ってあげたいから
勉強中です」

「お2人は上手くいってるみたいですね」

「そうでもないですよ?」

「え?」

「いろいろあったんですよーもう!」

チャンミンが笑いながら
怒ったように頬を膨らませる


「どんなことが?」

「このガーデンはユノがやりたいってことで
それに手を貸したのが、遊園地の緑を担当してくれた人なんですけど」

「ええ」

「もう、それが、以前にユノとワケありだった男の子で…」

「あら、それは大変」

ユサンは笑った


「ユノも、チャンミンは俺を信じないとかなんとか
怒っちゃって」

「あらあら」

「結局は僕がユノを信じて正解だったんですけど
そこは気を使って欲しかったなぁなんて」

「ま、そうですよね」


「喧嘩することもありますけど
でも…ユノを失うよりいいって、結局そう思うんです」

「…私も…そう思います」

「僕たちはほんと、そう思いますよね」


「あの…チャンミンさん」

「はい?」

「私、あの時、後から気づいたんですけど」

「あ、もしかして…」

「チャンミンさんも?」

「…あの時の…ご夫婦?」

「そうです」

「僕も、後になって不思議だなって。
あの時は夢中でわからなかったんですけど
ひょっとしたら、亡くなったスビンのご両親だったのかなって」

「そう思うんです、私、確信したんです」

「写真かなにか、見ましたか?」

「ええ、でも、男性の方は声しかわからなくて。
スビンの話だとユノさんによく似てるって聞いてたんですけど」

「そうなんですか…僕もわからなかったな…」

「この間、法事があって、スビンのお母様の写真を拝見して、やっぱり私たちに声をかけてくれたあの方でした」

ユサンは少し涙声になった


「そう…」


チャンミンも涙ぐんだ

「あの時、僕、男の子なんだから泣くなって」

「叱られてましたね、フフ…」

「ご両親、自分の息子には
同じ道を歩ませたくなかったのかな」

「そうでしょうね、きっと。
お父様はユノさんもスビンも救いたかっただろうし」

「あの時、あのご夫婦が声をかけてくれなかったら」

「ほんと…」



ユノがガーデンを散歩する2人に
声をかけた

「もう一杯コーヒーどうですか?
チャンミンが焼いたタルトがあるんです」

「いいんですか?嬉しい。いただきます!」

ユサンはまた店内に戻ってコーヒーとタルトをご馳走になった。


「すっごく美味しい」

「でしょう?」

ユノが自慢気に笑った

「ウチのチャンミンは最高なんです」

「いろいろとご馳走さま」


ユノが穏やかに言う

「いつか…その…スビンと来てください」

「はい、私、スビンをずっと見守ります
もう少し時間はかかるかもしれませんけれど
いつか必ず2人で来ます」


チャンミンが優しく微笑んだ

「となりの観覧車に2人で乗って
頂上でキスしてください」

「え?ああ、伝説ですね!」

「はい、そうすれば2人は永遠に離れません」

「是非!」

穏やかな時間が流れた


「ここでウェディングパーティをしたら
とてもいいと思います」

ユノの表情が明るくなった

「そう思いますか?よかった。
実は来月、元嫁の妹がここでガーデンウェディングをするんです。」

「素敵ですね!」

「はじめてなので、ちょっと力入ってます」



失いたくないと思った愛

手離したくないと思った幸せ

あの時、私とチャンミンさんは
泣きながら走ったのだ


愛する人を
絶対失いたくなくて、必死で。


だから、今ここに笑顔があるのだろう


「私、遅くならないうちに帰りますね」

「あ、今の時間、高速混んでるんですよ、
もう少し先から乗るといいので、俺達が誘導します」

「いいんですか?」

「今日はディナーは閉店します」

申し訳なく思いながらも、
ユサンは2人の軽トラックに誘導されて、店を後にした


チャンミンは助手席でのんびりと外を眺めた

山あいの中に、蒼い観覧車が見える


離れたくない恋人たちが
こぞってあの観覧車に乗りに来る

伝説を作ったのは、僕とユノ


これからも

何があっても

離れない

一番乗りだったんだからね、僕たちは


「何うれしそうな顔してるんだ?」

「うれしそう?」

「ああ、キスしたくなる」


そう聞いて、チャンミンはニッコリと微笑み
運転するユノの頬にキスをした


「あー危ないなぁ、チャンミン
運転してるのにダメだろ」

「自分が手を出せないから
ダメだろ、でしょう?」

「わかってんのか、じゃあ尚更ダメだな」

ユノは笑った

チャンミンも笑った


車は抜け道を通るために
少し街中に入った


ユサンを見失わないように
バックミラーを確認しながら運転するユノが本当にカッコいい。


「せっかく街まで出て来たから、
後で買い物でもする?」

「うん!」


その時、
車の窓の外に何かが飛んでいるのが見えた


それは、風に煽られ

街の中を舞うビニールの袋だった


海の中を意志を持たずに漂うクラゲのようなそれ


かつては、自分も同じような存在だと
憂いたこともあった。


でも


今は違う



しっかりと自分の意志で生きていると
実感している

ユノに甘えることはたくさんあっても

何かあれば、ユノを守ることもできる


チャンミンはそんな今の自分が
好きだった








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長い間、お付き合いいただきまして
本当にありがとうございました

明日はあとがきになります。
よろしかったら遊びにきてくださいね

最終回に20時アップし損ねて申し訳ありません(汗)

百海
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