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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 37




ユノはバイクで家に戻った

「チャンミン?」


いつもの「おかえりー!」という明るい声が聞こえない


「チャンミン…」


ユノは仕事部屋に入ったけれど
チャンミンはいない

ダイニングに戻り、シンクを覗くと
マグカップが2つ置いてある


だれか…来たのか…

まさか…


ユノは不安になった

「チャンミン!」

納屋を探して、農園を見に行こうとしたその時
ユノの軽トラが無いことに気づいた

どういうことだ

チャンミンは誰かと軽トラでどこかへ行ったのか

ユノの想像は悪い方へ悪い方へと傾いていく

その時

エンジンの音がして振り向くと
農場の向こうから、ユノの軽トラが戻ってきた


チャンミン…


ユノは棒立ちになった


全身から緊張が一気に解けていく



チャンミンが不思議そうな顔をして
軽トラから降りてきた

「ユノお帰り。どうしたの?」

「チャンミン…」

「ん?」

ユノはチャンミンに走り寄ると、
いきなりチャンミンを抱きしめた

「ちょっ!」

「チャンミン!チャンミン…」

「どうしたの?ユノ」


「お前が…帰ってこないかと思った…」


「え?」


「このまま、帰ってこないかと思った…」


「ユノ…」


チャンミンもユノを抱きしめた


「僕は…絶対に帰ってくるから
心配しないで…ね?ユノ」


うんうんと頷きながらユノはチャンミンを
強く抱きしめた。


もう、こんなことはやめにしよう

こんな毎日はたくさんだ


ユノはチャンミンを搔き抱いた


2人は肩を抱き合い、キスをしながら家に入った

ユノの性急で激しいキスに
いかにユノが不安だったがわかり、チャンミンは胸が熱くなった。

もうこんな不安な毎日はやめにしたい

チャンミンはユノのキスを受け止めながら強く思う


仕事中だというのに、ユノはチャンミンを寝室に引っ張り込み、着ていたTシャツを脱ぎ捨てる

陽に焼けた二の腕が更にユノの男らしさを強調して
チャンミンは心奪われる

もう数え切れないくらい
自分はユノに心を奪われている、と思った

ユノとの行為に慣れる、ということがない

毎回ドキドキさせられて溺れる

この綺麗な人に惹かれたのは
心が先か、この行為が先かはわからないのが本音。

けれど今は…

チャンミンの服を脱がせようとする
その雄の瞳に思う

あなたの夢に存在したいと思うほどに
あなたの人生の中心になりたいと思うほどに

ユノそのものを深く愛している

その強さも弱さもすべてひっくるめて愛している


熱く抱かれて

それはユノの不安を表していた

チャンミンを離したくないという気持ち
チャンミンと離れたくないという気持ち

それはチャンミンの悦びとなって
全身を電流のように駆け巡る


秋の陽は午後を示す

「ユノ…仕事しないといけないのに…」

チャンミンがベッドの中でクスクスと笑う

「そうなんだけどさぁ」

ユノが身体を反転させて
チャンミンの上に乗る

上からチャンミンを見下ろすユノの瞳がとても綺麗だ

ユノは自分の人差し指をそっとチャンミンの唇に挟む
チャンミンはそれを受け止めてそっと前歯で噛む

「チャンミン…」

「ん…」

ユノの指で上手く話せないチャンミン

午後の柔らかい日差しがユノの顔に陰影を作る
ユノの瞳が優しい


「俺…あまり幸せだと思ったことがなくてさ…」

「………」

「でも…お前と会えて…俺の人生って素晴らしいんだって思えた」

「………」

「覚えておいてほしい。俺、すごく幸せだ」

チャンミンの瞳が泳ぐ


「俺はずっとお前と一緒だ…」


ユノの切れ長の瞳が優しく細められて
柔らかく微笑む


あまりの美しさに
チャンミンは怖くなった


「………」


しばらくユノの顔を見つめていたチャンミンは
ユノを押しのけて、ベッドから起き上がった


「なんで?」

チャンミンの声が涙ぐむ


「なんで…そんなこと言うの?」


ユノはもう一度ベッドに座ってチャンミンを抱きしめた


「なんでこんなこと言うかって?」

「………」

ユノがそっとチャンミンの髪を撫でる


「言いたいことは言っておかないと
後で後悔するのはイヤだからだよ」


「そんなさ…」

ユノがチャンミンの背中をトントンとあやすように叩いている


「そんな…会えなくなるみたいな言い方…しないでよ」


「バカだなぁ、俺がお前から離れるわけない」

「ほんと?」


ユノがチャンミンを離すと
2人は向き合った


涙に濡れた大きな瞳


「こんな泣き虫を置いて、どこかに行くわけないだろ」


「……」


「俺はお前とずっと一緒だって、今言ったばかりだろ」


「………」


「な?」


ユノの笑顔がどこか儚く見えてチャンミンは怖かった


「さ、仕事行ってくる」


ユノはベッドから立ち上がって服を着た

チャンミンはその様子を見ていたけれど
思い立って自分もジーンズとシャツを羽織った


「ん?チャンミンもどこか出かけるのか?」

「お見送り」

「え?」

「仕事に行くユノをお見送りするんだよ」

ユノは笑った

「そうか、嬉しいね
やっぱり一緒に暮らして良かった」


ユノは野菜をダンボールに入れると
それを軽トラに乗せた

チャンミンはずっとユノの後を付いて
ユノがやることを見ていた

積み終わると、ユノはトラックのエンジンをかけた


そして、チャンミンのところまで来ると

その頬を両手で挟んでそっとキスをした


「じゃあね、チャンミン
行ってきます」


「行って…らっしゃい…」


「早く帰るから、今夜はシチューにして。
あーやっぱりカボチャのポタージュ、あれがいい」

「ん…わかった」


ユノは運転席に乗り込む時
もう一度チャンミンを見て微笑んだ

その笑顔が

なぜか…もう2度と見れなくなる気がして
チャンミンは焦った


「ユノ?」


ユノはトラックに乗り込むと
ホーンを鳴らした


その音にチャンミンはビクッとした


あ…

ユノ…


遠くなるエンジン音の代わりに
農道沿いの草木が風でカサカサと音を立て始めた

それはやがて大きくなり

チャンミンの不安は大きくなっていった


ダメだ…

ダメだよ…ユノ…行っちゃダメ


チャンミンは走り出した

羽織ったシャツが風を含み、まわりの草木に合わせて
風になびく


「ユノォォォーーーー!!」


チャンミンの甘い叫び声が風にかき消される

走るチャンミンのその涙も

風になびいて、チャンミンの耳に入る


誰もいない農道をひたすら走るチャンミンを


両脇に茂る黄金色のススキが
道案内をするように揺れる


ユノ!!!!

行っちゃダメだ!!!!


嗚咽が込み上げて、涙が溢れる


やがてチャンミンは立ち止まった

はぁはぁと自分の荒い息遣いだけが
耳に響き渡る


ユノ…

僕が…スビンに土下座すれはいいのか

どうしたらこの恐怖から逃れられる?

ユノを失う恐怖に比べたら

僕は全身にタトゥーを入れたって構わない


チャンミンはスビンに連絡を取ろうと家に戻った


僕が決着をつけたらいい

ユノには手を出させない


家に戻ったチャンミンは
パソコンをつけた

チャンミンのスマホからは
スビンの連絡先を除いてしまった

パソコンには通知が来ていた
それは、野菜の配達の注文だ

ユノはなぜ僕に通知をよこさなかったのか

なにげなく、それを、開いて場所を見た

これは…岬のあたりか



まさか

あの岬…


チャンミンはハッとした

ユノ


どうしよう…

どうしたらいい…







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