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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 36




チャンミンはスビンの妻を名乗るユサンを家に入れた。

憔悴しきった感じのユサンはチャンミンに勧められダイニングの椅子に座る。

チャンミンはコーヒーを淹れながら
いろいろな事を考えた


この人は…スビンを探してこんな田舎まで来たのか

スビンは夫人のことを小馬鹿にしたような言い方をしていたけれど、
ユサンはスビンがいなくなって、悲しんでいるように見える

夫婦関係については…よくわからないけれど…


「コーヒーでいいですか?」

「あ、はい、すみません、忙しいのに」

「いえ、どうぞ」

チャンミンはマグカップを2つテーブルに置いた


「ここがなぜわかったのですか?」

「スビンの机に…ここの地図が」


チャンミンはそれを聞いて震えた

やはりユノの農園に薬品を撒いたり
自分の部屋に火をつけたのは、スビンなのか


「あの、チャンミンさん…ですよね」

「はい」

「あなたの名前が…その…スビンの足首に…」

「……」

「すみません…スビンは何も教えてくれなくて」

「そうですか…でも、その理由はスビンに聞いたほうがいいですね。僕からは何も話すことはありません」

「そう…ですよね」

「いなくなったって事ですけど、いつから?」

「1週間くらい経ちます」

「心当たりが、僕のところに?」

「ユノさんが何か知ってるのかと」

「なぜユノが?」

「えっと…その…兄弟だから」

「あの……兄弟って言っても…」

「ええ、そうなんですけれど、でも…」

「………」

「ネットの履歴を見たら、この辺りのホテルを一度予約した形跡もあって…」

「駅の近く?ずいぶん離れてますけど」

「ちょっと不安になって…」

「…どんな…ことが?」

「その…スビンのご両親がこの辺りで亡くなっているんです」

「事故で…ですよね」

「……ええ」

「あ……」

「はい?」

「いや、なんでもないです。
あ、あのユサンさん」

「はい」

「どういう状況でご両親が亡くなったかご存知ですか?
僕、そのあたりをよく知らないんです」

「スビンから聞いた話ですけれど、
岬の立ち入り禁止区域に夫婦で入ったらしく…」

「立ち入り禁止?」

「ええ、詳しくはわかりませんけれど」

「僕は…ご両親が亡くなられた時、スビンと一緒にいたんですけれど、なんていうか…そんなに驚いてなかったんです。
ご存知だと思いますけど、なにせああいう落ち着いた人だから」

「チャンミンさんがおっしゃりたいことは、わかります」

「………」

「スビンがご両親を殺害したなんて…
そんな恐ろしいことはありません」

「僕は…」

「すみません…そう思われてますよね。
今、彼が何に執着して苦しんでいるかも、わかっています」

「苦しむ?」

「彼の執着は病だと、私は思っています」

「失礼ですが、苦しめられているのは
ユノですよ。」

「………」

「スビンが何をしたかご存知なら
被害者は誰だか、わかりませんか?」

「………」

「今、あなたから、スビンの行方がわからないと聞いて
僕はとても恐怖です」

黙っていたユサンは、嗚咽に耐え
静かに泣いていた

チャンミンはため息をついた

この人は何しに来たのだろう

スビンを庇いに来たのか?


「それでも…私はスビンを愛しています」

「………」

「チャンミンさん、ご存知でしょう?
スビンは冷たいように見えますけど
とても神経細やかで、困ってる人には本当に優しい」

「でも、スビンより秀でてる人、スビンより幸せな人には牙を剥くのも事実です」

「あの人は…寂しいんです」

「だから?寂しかったら何をしてもいいんですか?」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい!
私が、私がすべての責任を負っても構いません
でもスビンが心配なんです。
これ以上、間違ったことをしないでほしいんです」


「僕にどうしろと?一緒に探してほしいというなら
申し訳ないけど」


「もし…あの人がこの辺りにいたら、
もし…姿を見かけたら、私が探していると…
伝えてほしいんです」


ユサンの必死さは伝わって来た


この人は、かつての僕のように、
スビンに支配され、洗脳されているのかもしれない


「わかりました。
もしそういうことがあれば、お伝えします」

「ありがとうございます」

「僕は…ユサンさんにひとつだけお話したいのですが」

「はい」

「スビンがあなたにとって唯一無二の存在になってるとしたら」

「……」

「スビンがあなたの絶対だとしたら」

「……」

「あなたも病んでいるんです」

「……」

「おせっかいですが、それだけ言わせてほしかったので」

「………」

「駅まで送ります。
ここまでどうやって来られたんです?」

「タクシーで」

「ま、そうですよね
軽トラでちょっとなんですけど、乗って行ってください」

「すみません」

チャンミンはユサンを玄関で待たせて
トラックを出してきた



「ユノさんとここで暮らしているんですね」

「あ、はい」

「幸せの匂いがします」

「え?そうですか?」

「はい」

チャンミンはなんと答えていいかわからず
照れ臭そうに微笑んだ


「羨ましい…」

「僕も…ユノがいないと生きていけません。
まったくダメなんですよ、僕は」

「それでユノさんがいいと言うのなら
いいのだと思います」

「どうかな…」

軽トラに揺られながら
2人は少し話をした


「ユサンさんは、お仕事は?」

「小学校で教師をしています」

「そうなんですか!」

「はい」

「いろんな生徒がいるんでしょうね」

「そうですね…
スビンも…私の生徒のようなものです」

「え?」

「愛が足りてなくて…もがいてばかり。
気づかせてあげたいけれど…大人は難しいです」

「あ……」

「………」

「なんか、僕、さっきは偉そうな事言っちゃいましたね」


*********


その頃、ユノは街の図書館で調べものをしていた

パソコンの画面に、当時の新聞記事が映し出されている


スビンの両親が岬でなくなったことに
不審な点がなかったか

当時、岬の柵が老朽化して破損箇所がいくつもあり
立ち入り禁止となっていた。

観光客など滅多に来ない土地だけに
岬は放置され、破損を直そうとする動きはなかった

夫婦2人が岬に入った時の不審点と言えば
立ち入り禁止のロープが外されていたらしいということ。

そんな区域だとは知らずに岬に入って
手摺や柵が老朽化していたことに気づかず
落ちてしまった。

そういう事故として片付けられていた

ロープが外されていたのは
その岬が放置されていたため、管理も行われていなかったからか?

その事故が起きてからは、立ち入り禁止の立て札も新しいものに変えられたということだ。


ユノのスマホに通知音が届いた

野菜の発注が客から入ったのだ

ホームページから入れるようになっていて
会員登録が必要だった

通常それは、ユノからチャンミンに配達の指示が行くようになっていた。

けれど

新規会員のその注文は

住所があの岬になっていた


家なんか建っていないその住所


要望欄には、キャンプをしているから
そこへ届けてほしいとある。

キャンプなんかできる場所ではない

なにしろ、立ち入り禁止なのだから


ユノはその情報をチャンミンに流すことはせず

一旦家に帰った






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