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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 35




ユノの農園に越してきたチャンミンは
田舎家の一室をもらって、デザインの仕事ができるように少しリフォームしてもらった。

自立して仕事がしたいとチャンミンは熱く語り
ユノも同意しているにもかかわらず

結局、ユノはいろいろと手を出して甘やかしてしまう。

そして、チャンミンも喜んでそれに甘んじている

そんな2人の毎日だった


チャンミンは農園の仕事を手伝うことはしなかったけれど、
フルーツや野菜の盛り合わせなどを駅近くのホテルや店へ届ける仕事を手伝った。

小さなバイクに荷物を載せたり
軽トラックにたくさんの野菜を積んで街まで行ったりした。

けれど

ユノはチャンミンに配送の仕事をさせるのを嫌がった


不安にさせないようチャンミンには言わなかったけれど
ユノはスビンに怯えていた

配送するチャンミンに、スビンが何か仕掛けないとも限らない。

できれば、チャンミンを家の中に置いておきたい気持ちが強かったけれど、そういうわけにもいかない

チャンミンはそんなユノの心配をわかっていた。

チャンミンもスビンに怯えていた。


今になって、なぜスビンが自分にタトゥーをさせたのか
わかってきたような気がする

離れていても、左足につきまとう重い足枷

いつでもどこにいても、その存在を忘れないように
いつも恐怖を感じるように

そう仕組まれていたのだとわかる

2人は幸せそうに過ごしていても
スビンの存在に怯えていた

時折かかってくる、非通知の電話番号

近所から投函されたと思われる
真っ白な紙が一枚入っただけの封書


何をどう脅されているわけでもないのに
2人は怯えていた


ユノとチャンミンは初めて街に出て病院を訪れた

チャンミンの左足のタトゥーを消すためだった。

少しでもチャンミンの気持ちを穏やかにしたい
そんなユノの考えだった。

時間はかかるけれど
根気よく通えばほとんどわからなくなるまでになりそうだ。

そんな回答を得て、2人は少し気持ちが軽くなった


「チャンミン、せっかく街に出たんだから
何か家では食べられない物でも食べよう」

「うん」

料理が上手なチャンミンは、畑でとれたもので
美味しいものを作ってくれたけれど

そんなチャンミンが食べたいものを選ぼうとユノは考えた。


「ケーキが食べたいよ」

「食事じゃなくていいのか?」

「参考にしたいんだ」

「なんの?」

「いずれはフルーツを使ったケーキを作ってみたいから」

「ウチのフルーツで?」

「そう」

「なるほどね、いいよ」

2人はフルーツタルトが有名な店をスマホで探して、
感じのいいカフェに入った


チャンミンはいくつもタルトを頼んで
店員が少し驚いていた


目の前に並んだタルトを前に
チャンミンが挑むような表情でひとつひとつ味見をする

ユノがクスクスと笑った

「チャンミン、あまり美味しそうに食べてるようには見えないよ」


「ユノ」

「ん?」

チャンミンが内緒話をするように
顔を寄せてきた

「僕、ここのより美味しいタルト作る自信がある」

「そうか?」

「果物の味がもう全然違うから」

「それは楽しみだな、チャンミン」


すべてのタルトを2人で平らげて
少し濃い目のコーヒーで寛いだ

まだ何やら真剣にメモを取っているチャンミンを
ユノは愛おしそうに見つめる


「勉強熱心ですね、チャンミン君」

「ユノ」

「ん?」


チャンミンが顔を上げてニッコリ微笑む


「僕ね、とっても嬉しかったんだよ」

「何が?」

「ユノの描く夢に、僕がちゃんといたこと」


「………」


「そんなことでって思うだろうけど」

チャンミンは照れ臭そうに微笑む


「ちゃんといるどころか、俺の夢みる未来の中心だからね、チャンミンは。」

「だからさ、僕、頑張るよ」

「無理しなくていいよ」

「無理なんかじゃない、
嬉しくて仕方ないんだ」

「そうか?じゃ期待しようかな」

「期待に応えるからね、ユノ」



それはちょうど2人が店を出たところだった


ユノのスマホに着信が入った

それは近所の農園の人からだった


ユノの表情がみるみる変わる

「ユノ?」


チャンミンの胸に大きな不安がせり上がってくる

また何か…2人の幸せを邪魔するような?


「わかりました。すぐ戻ります」

「どうしたの?!」

「ボヤ騒ぎがあった」

「え?!ウチ?!」

「そう、通りがかった近所の人が気づいてくれて
裏を少し焼いただけで大丈夫みたいだ」

「………」

「とにかく帰ろう」

「ねぇ、裏って、僕の部屋だよね」

「ああ、中までは燃えなかったみたいだから
大丈夫だよ」

ユノは緊張した表情の中、少しだけ笑ってみせた

「ユノ…」

「大丈夫だから、ね?」


ユノに肩を抱かれて、チャンミンはなんとか頷いた


車を走らせるユノとチャンミンは
何も話さなかった。


口には出さなくても
心は恐怖でいっぱいだった


家について、燃えた後を確認すると
その範囲は大したことはなく、消防車を呼ぶほどではなかったという


「本当にご迷惑をおかけしました」

ユノは近所の人たちに頭を下げた

「原因を調べて、2度とこんなことが起こらないようにします」

チャンミンも頭を下げた


近所の農園の人はみんな優しかった


「いやね、元々古い家だったから、あんたらが住むって聞いて、電気系統なんかが心配だったんだよ。
一度そこは見てもらった方がいいかもねぇ」

「はい」

「この程度で済んで本当によかった」


大した被害もなかったせいか
たぶん、漏電か何かだろうということで片付いた

けれど

2人はそうは思っていなかった


その夜、ベッドの中でチャンミンはユノにしがみつくようにして眠っていた

怖かったのだろう

それを口に出さないチャンミンがユノはいじらしくて仕方ない


ユノのスビンに対する怒りは頂点に達していた


ユノは暗闇の中、優しくチャンミンの髪を撫でながら
切れ長のその瞳だけが強く天井を睨みつけていた



翌日

ユノが農園に出かけてしばらくたった頃

チャンミンは昨日燃えた箇所をもう一度丹念に調べ
仕事部屋へ戻って、パソコンで検索をしていた。


僕たちはお互い何も言わなかったけれど

2人とも、見えないスビンの影に怯えている

少なくとも僕は…とても怖い


その時、家のチャイムが鳴って
チャンミンはビクッとした

誰だろう


古い木造の家だったけれど
ユノが用心してなのかインターフォンを付けてくれていた。

チャンミンが恐る恐るモニターを覗くと
そこには1人の若い女性が立っていた

知らない人だ


「はい」

「あ、朝早くすみません、私、イ・ユサンと申しまして」

「ユサン?」

「あの…イ・スビンの妻です」


スビンの奥さん?

ウェディングの姿しか見たことがなくて
そう言われてもすぐにはわからなかった


チャンミンはドアを開けることを躊躇って


自分が外に出ることにした


「あ、なにか…」

「ユノさん…ですか?」

「いえ、僕はシム・チャンミンと申します」

ハッとしてユサンは顔をあげた

「あなたが…チャンミンさん…」

「はい」

「式に来ていただいていたんですよね
すみません」

「いえ」

「あの、実は…」

「………」

「スビンが…いなくなってしまって…」


え?






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