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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 34




ユノは母親の施設に野菜を持って行った

「この間はトラブルあってさ、
少ししか置いていけなくて悪かった」

「いいのよ、そんなの」

「あのさ…ちょっと聞きたいことがあって」

「なに?」

「父親のこと…なんだけど」

母親はため息をついた

「いいわよ?もうあなたも大人なんだから
いろいろ知っていいわよね」

「話したくないことは…話さなくていいから」

「わかったわ、どんなこと?」

「父親は奥さんと旅行先で亡くなったって言ってたよね」

「そうよ」

「どこで…どんな風に?」

「この先に岬があるでしょ?そこから落ちたの」

「この近くで?」

「そう」

「そうなんだ…」

「私ね、思うんだけど」

「?」

「心中じゃないかと、思うのよ」

「心中?」

「ええ、旅行に行く前に、あの人から連絡があってね」

「……」

「もう私の声を聞くのは最後かもしれないって」

「そういう連絡があったの?」

「そうなのよ」

「それは…心中かもね」

「でも、2人、一緒に落ちたわけではないみたいだから」

「え?別々に?」

「警察の人はそう言ってたわ」

「警察が…来たの?」

「何かいろいろ不審なことでもあったのね
私なんか、一番先に疑われちゃうのよ」

「……」


一番疑われるのは母さんじゃない


スビンがこのことに関わっているなら
本当に危険だ

ユノの心に大きな不安があったけれど
それをチャンミンの前では出さないようにしていた


やがて


遊園地の工事が仕上げに向かい

遊具の試運転の時期になった


「ユノ、僕がデザインした観覧車なんだから
僕が一番先に乗っていいよね!」

「頼んでみるよ、もう俺、社員じゃないけど」

「大丈夫だよ、みんなユノに帰ってきてほしそうだし」

「それとこれとは別だよ」

「そうだけどさ、ね?最初に一緒に乗ろう!」

「わかった、約束するよ」


喜ぶチャンミンをユノが抱きしめる


季節は暖炉を灯すようになり
2人は暖炉の前で一緒に毛布にくるまった


「ユノ、暖炉っていいね」

「だろ?これが良くてこの家にしたんだ」

「ちょっと薪割りとか大変だけど」

「何言ってんだよ、お前は何もしないくせに」

「へへへ…そうでした」


可愛いチャンミン…

ユノはたまらず、その頬にキスをした


「ユノがお膳立てしてくれたから
蒼い観覧車が実現したね」

「チャンミンがプレゼンがんばったからだよ
みんな褒めてたぜ?」

「そう?」

「ああ」

「じゃ、一番に乗る権利あるね」

「本当はね、すでに何人か試運転で乗ってるけど」

「ユノはなんでそういうつまらないこと言うかなー!」

「アハハハハ、だってそうだろ」

「仕事じゃなくて乗るんだよ、僕たち」

「はいはい」


綺麗な秋晴れの日


オープンを待つだけとなった遊園地に2人はやってきた


園には工事の人たちが何人もいて
その一人一人に挨拶をしてまわった


「どうします?観覧車乗ってみます?」

「あ、夕暮れになったらにします」

「あーそうですか、あ、でも灯りの具合とか見るんで
それでもいいですよ」

「ありがとうございます」


2人は遊園地の中を見てまわった


「小さいからあっという間にまわれちゃうね」

「そうだな、でもいいんじゃないか?
ちょうどいいさ」

「うん」

ふたりは小高い山の上のベンチに座った

「ずいぶんいいところにベンチを設置したんだな」

「いいでしょう?僕のアイデアだよ」

「恋人たちのため?」

「そう」

「………」


遠くに秋色に変わった草木が揺れている

山はオレンジに色づき、赤へのグラデーションが
とても綺麗だった

ユノはチャンミンの肩を抱いた


「なぁ、チャンミン」

「なに?」

「お前さ、俺の夢に自分はいないって拗ねただろ?」

「拗ねた?あーうん、拗ねたね」

「いるんだよ、それが」

「ユノの夢?」

「ああ」

「農園をやる話に、僕なんかいなかったでしょう」

「俺の夢はね」

「?」

「この遊園地の隣に、ガーデンレストランを作って
俺が育てた野菜でお前が料理して」

「いいね!それ」

「ああ、この観覧車を乗りに来た恋人たちが
それを美味しく食べるんだよ」

「それがユノの夢?」

「そうだよ、俺の夢の中心はチャンミンなんだ」

「へぇー」

「チャンミンの夢は?」

「僕の夢はね、今日叶うんだよ」

「観覧車の完成?」

「ユノと観覧車に乗ること」

「そうか」


ユノは微笑んだ

切れ長の瞳が弓なりに細められて
それはチャンミンを優しく見守る


やがて夕暮れが近づき
頃合いを見て2人は観覧車に乗った


ゆっくりと始動する観覧車


思っていたより、観覧車から見る景色は絶景だった

山合いに覗く町の灯りが綺麗だ

反対側を向くと、岬の向こうに海が見える


「うわー!すごい!」

「思ったより綺麗だ…」


空はオレンジからパープルへとグラデーションを描き
その下には夕焼けに照らされた紅葉が燃えるように赤い


時間と自然が織りなす、素晴らしい景色だった


「ずっと見ていたいな」

ユノが遠くを見つめる

「うん…」

「チャンミン」

「ん?」

「観覧車が頂上に来たらキスしようぜ?」

「高校生みたいだなぁ」

「伝説作ろうぜ、俺たちが最初に」

「どんな伝説?」

「この観覧車でキスした2人は…」

「2人は?」


「何があっても離れない」


「ユノ…」

ユノはチャンミンの頬にそっと手をやり
自分の方へ引き寄せた

チャンミンは瞳を閉じて
ユノのキスを受け止めた


愛してる

愛してるよ

ずっと離れないで…一緒にいようね


2人で夢をみよう

2人だけの未来を描こう


やがて、観覧車は地上へ戻ってきた


「どうですか?速度とか」

作業の人が聞いてくる

「ちょうどいいと思います、ほんと景色が最高で」

「そうなんですか?よかった」

「乗ってないんですか?」

「まだです。ほかの遊具は乗りましたけど
これはお2人が初めてですよ」

「そうなんですか?!わー!」


みんなに挨拶をして、ふたりは帰途についた


「僕たちが初めてだって!」

「そんなわけないよ」

「え?」

「乗らないと工事できないところもあるよ」

「もう、ユノはほんとにつまらないこと言うね
いいでしょう?僕たちが最初ってことで」

「そうだな!そういうことにしよう」

車を運転しながら、ユノはチャンミンにキスをした


少し走ると、ユノは車を停めた


「どうしたの?」

「チャンミン、降りてごらん」

「あ!もしかして、観覧車?」

チャンミンは急いで車から降りた


「うわーー!」

「綺麗だな」


チャンミンのデザインした観覧車は夜空に溶け込むような蒼に、オレンジの灯りが綺麗に灯った

それは観覧車のカタチをクッキリと表し
とても幻想的だった

自然の景色と人工物である観覧車が
その色を蒼くしたことで上手く馴染んでいる

「大成功だよ、チャンミン」

「うん…やっぱりこのデザインにしてよかった」


夜風があたると肌寒く感じる

それでもチャンミンはこの場所にずっといたいと思った



夜になれば、お互いが自然に相手の温もりを求める

それは熱に変わり、吐息は自然と熱くなる


忌まわしい模様はまだチャンミンの左足を縛る

あるはずのない荊の痛みを感じるようにもなってしまった。

「僕は…ユノと結ばれてるはずなのに…」

「大丈夫、そんなの肌だけの問題だよ」

「ユノ…」


ユノがチャンミンの首筋に唇を這わせると
チャンミンが震えるようなため息をつく


「ユノ…もう…」

「チャンミン…」


あまりの快感に
2人とも言葉にならない声を出す


不安が消えたわけじゃない
けれど、この時間はふたりだけの宝物で

何にものにも代えがたい
至極のひとときだ







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