FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 32




ユノは忘れていたその温もりに涙した

チャンミンの匂い、声、吐息

時折、涙の残りが鼻をすする声となって
ユノをたまらなくさせた


チャンミンも忘れていたその温もりに涙する

ユノの広い胸に身を預けると
不安が消えて、何も怖くなくなる

これから何が起ころうと
きっと大丈夫だ


もう2度と触れられぬと諦めていたその肌
もう2度と交わせぬと諦めていたその熱


今、ふたたびその悦びを甘受して
2人は激しく愛し合った


チャンミンの涙は悦びの声に変わり
ユノの涙は甘い呻き声に変わった


もう離れないから
もう離さないから


2人は何度も唇で約束を交わした



穏やかにベッドに横たわるチャンミン


ユノはそんなチャンミンの左足を自分の膝に乗せた

チャンミンは慌てて起き上がって
足首を隠そうとした

その無意識の行為は既にチャンミンの癖となっているのだろうか

ユノはそんなチャンミンに優しく微笑みかけて
その左足をさする

まるで怪我をした足を治そうとするかのように
優しくさすってくれる

このタトゥーをいれてしまった事で

チャンミンはすべてを諦めようと思った


ふたたび、ユノと会うこと

ユノにまた愛してもらうこと

全部諦めて…

チャンミンはこれから何も考えず
静かに生きて行こうと思っていた


蒼い観覧車は、そんなチャンミンの最後の仕事だと覚悟していた

息を潜めて生きる暗い世界から
ユノがチャンミンを引き戻そうとしてくれた


ベッドの中、
ユノは後ろからチャンミンを抱え込むようにして
抱きしめている

チャンミンはその心地よさに酔いしれながら
腰に回された力強い腕に触れている



「ねぇ、ユノ」

「ん」

「風が強かったりする日にね」

「ん?風?」

「うん、よくさ、ビニール袋が空を飛んでる時あるでしょ?」

「ああ、うん、風が強い日ね」

「あれって、クラゲみたいに見える時ある」

「ああ、あるね」

「クラゲってさ、泳げないって知ってた?」

「え?そうなの?」

「潮の流れに任せて移動するんだって」

「へぇ」

「自分の意思では動けず
天敵とか来ても、早く逃げることもできないんだって」

「………」

「いつもさ、空を飛んでるクラゲ見てると、僕みたいだなって」

「………」


ユノが後ろからチャンミンを大きく揺さぶった

「うわっ」

「こういう風に?流れるままに?」

「アハハハ、そうそう」


チャンミンが…笑った


「チャンミン…」

ユノが身体を反転させて
チャンミンを仰向けにして、その上に跨る形になった

ユノはチャンミンを自分の腕の中に閉じ込めて
優しくその前髪をかきあげてやる

チャンミンはユノを下から見上げて微笑む


「笑顔がみれた」

「えっ?」

「お前の笑顔が見れた」


「うん、僕、久しぶりに笑ったかも」


「これからはずっと笑顔だ」


ユノの言葉にチャンミンの表情が不安に曇る


「心配しなくていいよ」

「でも…」

「一度、俺がスビンと話してくる」

「やめて、ユノ」

「スジは通さないと…」

「筋とかそういうの、スビンには通じないよ」

「このままじゃ、いられないだろ」

「………」

「ユノの農場が…」

「手は出させないよ」

「それだけじゃない
ユノの大切にしているものが…危険だよ」

「わかってる。
チャンミンにこれ以上何かされないためにも
話してこないと」


チャンミンの瞳に不安が大きくせり上がってくるのが見える

「話なんか通じないって!」


チャンミンはユノを押しのけてベッドから出た

裸の身体にタオルを巻いただけで
チャンミンは冷蔵庫を乱暴に開けて水を飲んだ

ユノはチャンミンに続いて、ゆっくりとベッドから出た


チャンミンはシンクに手をついて
じっと何かを見つめている

その後ろからユノがそっとチャンミンを抱きしめた

ユノが後ろからチャンミンの耳を食む


「チャンミン…」

「………」


「もう、逃げたくない」

「………」

「クラゲみたいに、スビンにこれ以上揺さぶられるのはゴメンだ」

「スビンは普通じゃない」

「わかってる」


************



ユノはチャンミンを自分の農園に連れて帰った

遊園地の事業に関しては、
逆にこちらに来た方が現場に近くて都合もよかった


スビンにはわかるだろうけれど
もう、ユノはそんなことは怖くなかった


そして、チャンミンの引越しが落ち着いたころ

ユノはスビンに連絡をとった


「話したいことがある」

「チャンミンのこと?」

「ああ、一度会えないか」

「それとも農場の薬品のことかな」

「………」

「それとも…これから起こるもっと恐ろしいこと?」

「………」

「フフフ…ごめんごめん、ウソだよ
からかって悪いね。いいよ、会おうか」

「……いつがいい?」

「夜ならいつでも。外がいいだろ?
僕と密室とかはイヤだよね?」

「密室でもいいさ」

「そう?じゃ、レストランの個室を予約するよ
それでいいか?」

「ああ、予約を頼んで悪いな」

「いいさ、僕たちは半分兄弟なんだから」

「………」


電話を切ったユノの顔を
隣でチャンミンが不安そうに見つめる


「大丈夫だよ」

「ほんとに?」

「ああ、筋を通すとかそういうの無しで
とにかく、俺はお前といるっていうことだけ言ってくる」





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム