FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 29



それから、ユノの畑は荒らされることもなく、不審者も出没しなくなった。

それなのに、ユノは落ち着かない日々を送っていた

今まで知らなかったスビンのもうひとつの顔


しかし、一度は取り押さえたあの男が
果たして信用できるのかどうか

スビンの事を知っていても
果たして本当かどうかはわからない

それにたとえば今チャンミンのところへ行って
無事を確かめたところで

何しに来たのか、と問われたらなんて答えるのだ

まずはスビンのことを調べたほうがいいのかもしれない

何もわからないまま、走り出すのは危険に思えた


そんなある日、ミンスから連絡があった

「義兄さん、ちょっと話したいことがあるの」

何か恋愛相談かな、などとユノは考えて
ミンスに持たせる果物や野菜を用意したりしていた

駅までミンスを迎えに行ったユノは
その様子が恋愛ではなさそうだと思った

少し、無理した笑顔

「待ったか?」

「ううん、今来たばかりよ
ごめんなさい。忙しいのに」

「全然大丈夫だよ。ミンスこそ、こんな田舎まで来てくれて」

ユノはバンにミンスを乗せてのどかな田園風景の中を走る

「畑荒しは収まったの?」

「収まったよ。警察も来るようになったから
ビビったんだろ。」

「そう…」


家に着くと、ユノはコーヒーを淹れた

ミンスは田舎家の窓から山を見る


「絶景ね!」

「ああ、いいだろ?」

「あ…」

「なに?」

「あの山の間に小さく見えるの、もしかして…」

ミンスが指差した遠くを、ユノも見て微笑んだ


「企画してた遊園地だよ
今、工事の真っ最中」

「義兄さん、あの遊園地が見えるからここにしたの?」

「正直、それも…ある」

「……」

「もし、あの遊園地が完成したら、少しは見えるかと思ってさ」

「………」

「あ、でも、母親の施設もとなり町なんだよ、だから」


ミンスは胸が痛くなる

義兄さんは…チャンミンさんと企画して作り上げた
あの遊園地の側にいたいのだ

義兄さん…

あなたの想い人は今…


「チャンミンさんとは…連絡とってるの?」

「え?」

ユノが顔を上げると、ミンスが真剣な顔でユノを見つめている

「連絡は…とってないよ」

「どうして?」

「どうしてって…」

「今、なにしてるか気にならないの?
こんな風に、遠くから想っているだけで…」

「ミンス…」

ミンスがイラついている


「あのね、義兄さん、チャンミンさんに会いに行ったほうがいいと思うの」

「ミンス…チャンミンに会ったのか?」

「………」

「どんな様子だった?」


ユノが前のめりにミンスに問う


こんなに…気になってるじゃないの、義兄さん

ミンスはため息をついた


「覚えてる?姉さんがあの田舎町に行く前に
変な占い師があの町に立ち寄った話」

「占い師?」

「災いをもたらす、新参者って…」

「あ、ミンスが先に行ってた時の…」

「そう」

「思い出した。そんな話あったな」

「その占い師が…チャンミンさんと一緒にいたのよ」

「え?」

「誰といても、いいんだけどね
ただ…」

「ただ?」

「チャンミンさん、なんか人が変わったみたいになってた」


「………」


ユノの表情が固まっている

「憔悴しきってる、っていうか…
かなり痩せて…」

「………」

「幸せそうにはとても見えないの。
なんか、あの男といるっていうのが、引っかかる」

「どこで、見たんだ?」

「新しくできたショッピングモールで」

「………」



ユノはミンスにそれまでの事を一通り話した

ただ、その占い師がスビンだという確信はない。


その日、ユノはミンスを家まで送った


「結局、家まで送らせちゃって…」

「いいんだよ、俺が野菜持たせすぎたんだから」

ユノは笑った
農業をはじめて、健康的に日焼けしているせいか
その笑顔から白い歯がこぼれる


優しい義兄さん

大好きだけど、私があなたに見てもらえる日は
永遠に来ない…


「じゃあね」

「またな」

「あの…」

「ん?」

「何が起こっているのかよくわからないけど、チャンミンさんを助けてあげて」

「ミンス…」


「ごめん、義兄さん、実はチャンミンさんね、
すごく義兄さんに会いたがっていたのよ」


「え…」


「私、会社に書類届けたでしょ?
チャンミンさん、義兄さんがどうしているのか、
すごく気にしてた
居場所も知りたがって…」


「………」


「ごめんなさい」

ミンスはぺこりと頭を下げた

「…いいんだよ、俺が自分でそうしたんだから。
ミンスは悪くない」

「だから、できたらこのまま、チャンミンさんのところに行ってあげて」

「………」

「お願い」


「そのつもりだよ」


その言葉に、ミンスは少し微笑んだ


「義兄さん、幸せになってね」

「ミンス…」


「いろんなことがあったけど
義兄さんは何も悪くない。姉さんを幸せにしようと
一生懸命だった。母さんたちもそれはよくわかってる」

「………」


「もう、自分の幸せだけ考えてね」


「………」


「ありがとう」



それから、ユノはチャンミンのアパートに行って見たけれど

窓に灯りはついていない

まだ寝るような時間でもないので
インターフォンを鳴らしてみたけれど返事はなかった


どうしようか


ユノは少し考えて
ここで待つことにした

ユノはチャンミンの為に、野菜や果物を持ってきた


そのダンボールを脇に置いて
ドアの前に座り込んだ

一つため息をつく


俺に…会いたがっていたというチャンミン


胸がつまる思いがする


ふとエレベーターが動く音がして
ユノは立ち上がった


この階でそれは止まる


ユノの胸が高鳴った







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム