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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 27




「コーヒーでいい?」

「はい…」


落ち着いた一流ホテルのカフェで
チャンミンはスビンと久しぶりに会っていた

運ばれてきたコーヒーは
さすが一流だけあって美味しい


「美味しいね、チャンミン」

「はい、さすがですね」

「うん、ホテルがなにしろ一流だからね」

「………」

「部屋もさすがなんだよ?」

「え?部屋?」

「うん、スィートなんてね、景色もそのまま
インテリアの一部にしているんだよ」

「そう…」

「一番いい部屋はさすがに無理だったけど
その下のランクならなんとか手が届いたから
今夜とってみたんだ」

「?」


スビンは穏やかに微笑んだ

「何を不思議そうな顔をしているの?
僕とチャンミンで泊まる部屋だよ?」

チャンミンはあきれたように言った

「スビンこそ、何言ってるの?」

チャンミンも微笑んだけれど
その目は笑わず、スビンを凝視した

「スビンには奥さんがいるでしょう?」

「だから?」

「だからって…」

「僕が結婚したからって、僕とチャンミンは変わらないよ。そう言ったよね」

「言っている意味が…わからない」

「チャンミンだって、モラルとかそういうの
気にしないよね」


チャンミンは落ち着いていた


「モラルは気にしない。
でも、好きではない人とは寝ないよ」


「ほぅ…」

スビンは楽しそうに笑った


「プレゼンを一人でやり遂げて
ひとつ大人になったかな?」

「なぜそれを知ってるの?」

「そんなの知る方法はいくらだってあるさ」

「企業機密なのに、部外者に知られているとは
問題なんだけど」

「言うねぇ、チャンミン。
ほんとうに大人になった」

「………」

「じゃあ、こういうのも企業機密かな?
ユノにもだいぶ助けてもらったね?」

「………」

「ユノは、今なかなか大変そうだけれど」

「ユノに何があったか、知ってるの?」

「うん、農業にはありがちな事だよ」

「どうして、それをスビンが知ってるの?」

「チャンミン」

「………」


「あまり、僕を馬鹿にしないほうがいい」


「え?」

「チャンミンが知らないこともいろいろあるし」


チャンミンの表情が険しくなった

「結婚は失敗だったよ、チャンミン」

「失敗?」

「賢くて聡明な女性を選んだつもりだったけれど
頭の悪い人だった」

そう言ってスビンは笑った


「なにしろね、ユノがカッコいいだのなんのって
結婚式のすぐ後から、そんなことを言う女なんだよ」

「スビン、それはきっと特に深い意味なんかないよ
スビンの招待客を褒める意味で…」

「でも、それを僕に言っちゃいけなかったよねぇ」

「スビン…何が言いたいの?」

「チャンミンも、僕を拒否しちゃいけなかった」


チャンミンは次第にスビンが恐ろしくなってきた


「あんなに愛してあげたのにね、僕を拒否するなんて。」


「僕は…気づいたんだ
あなたのは愛じゃない、支配と洗脳だ」


「恐ろしいことを言うね、チャンミン」


「僕のあなたに対する気持ちも…
愛じゃない、服従だった」

「ほぅ…」

「それでも、感謝してるよ、スビン
楽しい思い出もたくさんある、だけど僕達の関係は少し歪んでいた。今ならそれがわかる」


「今更そんなこと言っても遅いよ、チャンミン」

「……遅い?」

「君はもう僕から離れられないよ」

「……」

「僕から離れたら生きていけないだろ?」

「そんなことない…」


チャンミンは震えた


「おとなしく、いつものチャンミンでいればよかったのに、残念だね」

「スビン…何考えてるの…」

「無理強いはイヤなんだ。
今夜このまま、このホテルの部屋に押し込んだら、
僕は傷害罪になってしまうしね、あ、監禁罪か。」

「………」


「僕から一生離れないという印に
2人でおそろいの何かを持とう」

「え?」

「勘違いしないで、僕も持つんだから。
ここで、ユノに恩返しをしたくないか?」

「どうして、ユノが出てくるの…」

「ユノの農場にね、一部薬品が撒かれてしまって、
ちょっと大変だったんだよ。」

「えっ?じゃあ、育てたものは?」

「離れた一画だったからね、まだよかった。
なにかオーガニックとかで土壌の検査も大変なんだって」

「ねぇ、なんでそんなことをスビンが…」

「ほかの土地に撒かれたりしたら、土壌がきれいになるまで、ユノは何年も農業ができないね。
せっかく仕事を辞めて、あの妾の施設の側で呑気に畑仕事なんかしてたのに」


スビンの口調が…恐ろしくて
チャンミンの手が震えた

ユノに…なにをするつもりだ


「ユノは本当はもっと大きな罰を受けなきゃいけない。
せっかく不幸になっておとなしくなったのに
また僕のものを横取りしようとする」

「僕は…モノじゃないよ」


それを聞いてスビンは可笑しそうに笑った

「なにを言うんだ
僕がいなきゃ、何もできなかったくせに」

「スビン…これ以上あなたを見間違いたくない。
僕のあなたとのいい思い出を汚さないで」

「いい思い出はこれからだよ?チャンミン」

「もう、僕達は思い出を作ることはない!」

「では、仕方ない。
僕と同じような思いをユノにもしてもらおう」

「ユノには…なにもしないで。ユノは関係ないでしょう」

「関係ない?ユノは僕の異母兄弟だよ?」

「え……」

「ユノは一生苦しまなきゃならない。
これはユノが受けるべき罰だからね?
それとも、チャンミンがその罰を引き受ける?」


ユノのために…

これはユノのためだ…

その穏やかな仮面の下にスビンは悪魔の本性を隠していた。

僕はユノのためなら、こんなことなんでもない




熱く痛む左足を引きずるようにして
チャンミンはアパートに戻った

額には脂汗が浮いていたけれど

チャンミンは、少しだけ笑ってみた


ユノ…

僕はね、ユノにしか抱かれたくないんだ

褒めてくれる?

僕は…スビンに指一本触れさせなかった


だけど…

だけど…


これからは上だけ見よう

僕は自分の足元をこれからは見ないんだ


チャンミンの左足首には
唐草模様が巻き付いていた

まるで錘をつけた鎖のように
それはチャンミンの足首をぐるりと彩り

スビンの足首に繋がっていた

唐草模様の葉先にはその繋がる先の名前がある
スビン、と。

どんなに離れても、この唐草が自分に繋がっているのだと、スビンは笑った

スビンの右足にも唐草模様が彩られた。
チャンミンの足首から続くようにくっきりと。


お揃いのブレスや指輪なんかより
お洒落だし強い絆だね、とスビンは笑った


僕はもう…あなたに会えない

こんな模様のある身体を…あなたに見せたくない


だけど、これで
ユノ、あなたは幸せになれる

手を出させはしないよ

今度は僕があなたを守ってみせる

スビンのあなたへの恨みは
すべて僕が受け止める

だから、ユノ、僕は幸せだよ

真っ暗な部屋で、チャンミンは跪いた
そして、声を殺して泣いた






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