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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 23




チャンミンはその日、植栽業者と打ち合わせのため
ジェリーフィッシュの会議室で相手を待っていた

プレゼンの用意はかなり進み、植栽部分の最終的な詰めを行う予定だった

「遅くなってすみません」

会議室に顔を出したのは、技術者のコ・ホスひとりだった。

あの式典で会った…男だ

「あ、大丈夫ですよ。営業の方は?」

「それが、車が渋滞にハマってしまって
僕だけ電車で来たんです。営業的な話もできますから
大丈夫です」

「あ、そうですか、わかりました」

「早速ですが、ユノさんから資料を出すように言われていて…」

「ユノ…さんから?」

「はい、植えられるグリーンを選別しておいてくれと」

「あ…なるほど…それをユノ…さんが?」

「はい」

「チャンミンさんのイメージに合わないと
いくつか却下されちゃったんですが…これがリストです」

「僕のイメージ?ユノがそう言ったんですか?」

チャンミンがユノを呼び捨てにすることに
ホスが反応した。

「あ、はい…ユノさんはこのリストに目を通してます」

「そう…なんですか…」


そんなことまで…ユノはしてくれていたんだ


ホスが優しく微笑む

「ユノさん…らしいですよね」

「え?」

「ユノさん、チャンミンさんのことが心配で仕方ないんでしょうね。ほんとに甘い人ですね」

「心配って…」

「そういう人です。どこまでも優しくて」

まるでユノを知り尽くしているようなホスの言葉に
チャンミンはカチンときた

「ユノと知り合いとでも?」

「あ…」

ホスはニヤリと笑った

「世間では言えないけど、知り合いといえば知り合いです」

「どういう知り合いだっていうんですか?」

前のめりになるチャンミンをホスが窘めた

「心配しないでください。
僕は完全にチャンミンさんに負けてますから」

そう言って、ホスは苦笑した

チャンミンがイラついた表情を見せる

「正直言って」

チャンミンは完全に怒っている

「あまりいい気分ではないんですが」

ホスがそのセリフに真顔になった

「それじゃあ、率直に言ったほうがいいかな。
仕事中にする話じゃないけど」

「どうぞ?僕達2人だけですし」

チャンミンは完全に応戦モードだった


「ユノさんとセックスしたことがあります。
抱いてもらいました」


その答えは…予想していなかったと言えばウソになる

それでも、あまりに率直な言葉に
チャンミンは言葉が出なかった

「なっ……」

「率直過ぎちゃったかな」

ホスは苦笑した


「抱いてもらったって…言うけど」

チャンミンは椅子に座りなおした

「はい」

「どうせ、あれでしょ?ハッテンバみたいなところでしょう?」

「ええ、そうです」

「抱いてもらった、なんてよく言うね
そんなのは、ヤッたヤラレタって、そういう世界でしょう?」

「それが…」

ホスは少し照れたように俯く

「ユノさんって、それこそ一晩限りのヤッた相手なのに
朝まで腕枕しちゃったりするんですよ」

チャンミンは睨みつけるように
ホスをみつめた

「でもね、チャンミンさん」

ホスが真っ直ぐにチャンミンを見つめ返す

「あの人はずっとチャンミンさんの名前を呼びながら
僕を抱いていました」

「え……」

「後で聞いたら、片思いなのだと…言ってました」


「………」


「僕はいつでも身代わりになるから、と言いましたよ
あの人と一晩過ごせるなら、それでもいいって思いました」

「………」

「でも、あなたとの事で随分悩んで
僕が慰めようとしても、断られたりしましたけど」

「………」

「羨ましいですよ、チャンミンさん」

「………」


「ユノさんはあなたに夢中で」


チャンミンはフッと悲しそうに微笑んだ


「もし…そうだとしたら」

「?」

「僕は大変な間違いをしたんです」


ホスは微笑んだ

「手遅れってやつですか」

「ん…まさに…手遅れってやつです」



「ユノさん、明日出発って聞きました」


「え?出発?」

「もしかして、会社辞めること以外は何も聞いてないですか?」

「僕が…突っぱねてしまったので、何も…
あの…出発って…どこへ?」

「すみません、どこへかは聞いてません
ただ、明日ここを離れるってだけで」

「そう…ですか…」

「海外とかでは、ないと思います
車がどうとかって言ってたし、何度か現地に行く仕事は残ってるみたいなので」

「そうですか…」

「見送りに行ったらいいですよ
普通に仕事で世話になった人が辞めるんです。
チャンミンさんが行ってもなんの不思議もないでしょう」

「…そう…ですね…」



その夜、チャンミンは悩みに悩んで
意を決してユノを見送りに行くことに決めた

なんだかんだと行く理由をいろいろと取り繕ってみたけれど

結局、ホスの言う通り、お世話になった人が辞めるから
という気持ちで行くことにした


朝から秋晴れの快晴で

それはユノの旅立ちを応援しているような空だった


チャンミンはいつものステンカラーコートにジーンズにブーツ

何も持たずにジェリーフィッシュに行った


「あれ、チャンミンさん、どうしたの?」

ジェリーフィッシュの社員が驚いた

「ユノさん、出発だって聞いて、ここに寄ると聞いたので」

「あーはい、寄るって言ってました
だから、みんなここに集まってます」

チャンミンはホッとため息をついた

「そうですか、よかった…
どういう流れになっているか、今ひとつわからなくて」

「ユノさんはチャンミンさんにも何も話さないの?
行き先とか」

「はい…何も聞いてません」

「そうか…仲良かったみたいだったけど
ま、俺たちも聞かされてないしね」

「そうですか…みなさんも知らないんですね」

「農業やるって言ってたよね」

「え?!農業?」

「あれ、それも知らなかった?
去年から農業やりたいって、オーガニックかなんかの」

「いや…聞いてないです…」

「土地が見つかったんだよ、どこだか知らないけど」

「そう…なんですね…」


そんなこと、なにも聞いてなかった

ユノは僕に将来の夢を語らなかったのは何故だろう

あなたの将来の設計図には
僕はまったく入ってなかった、ということか


そりゃ…そうだよね


スビンとユノとどっちつかずで甘えてフラフラしている僕なんかに

そんな話できなかったよね


「チャンミンさん、ユノさん来たみたい」

「え?」

チャンミンは顔を上げた


「裏の駐車場、なんか卒業式の校庭みたいになってるって」

「あ……」

「さ、行きましょう」

「はい…」


その人の言う通り

裏の駐車場はユノを囲む人集りで
まるで卒業生を送り出す学校の校庭のようだった


みんなの輪の中で、
ダンガリーシャツを着たユノが爽やかに笑っている


ユノ…ひさしぶり…


チャンミンは鼻の奥がツーンと痛くなった


会いたかった…

こんなにも、あなたに


みんながユノと握手をしたり挨拶したり
何か手土産を渡す人も多い

とにかく

ユノの人望の厚さが伺える人数だ


僕に、なかなか回ってこないかもしれない


ユノが近づいてくるにつれ
チャンミンの胸の奥から何か大きな塊のようなものが
込み上げてくる


ちゃんと挨拶しなきゃ

最後まで甘ったれな僕でいたくない

この人数でこの騒ぎだと
きっと本当に言いたいことは…言えない


僕は…あなたを愛しています

どうか…わかって


近づいてきたユノが、チャンミンに気づいて固まった


大勢の人の中、しばし、見つめ合う2人


ユノ…






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