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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 13




「チャンミン?」

車から降り立ったのは、ユノだった


「あ……」

チャンミンは咄嗟に言葉がでなかった


心細くて…

怖くて…

寒くて…


このままずっとひとりぼっちなのかと思って


「ユノ…さん…」

「なんで…ひとりでこんなところまで…」


優しい低い声…

ユノの困惑した顔が、涙で滲んで見えにくい


「ユノさん…僕…」


ユノが手を伸ばした
困惑は穏やかさに変わる


「何も言わなくていい」

「でも…僕…」

チャンミンの顔が大きく歪むと
ユノが優しく微笑んだ


「おいで」

「ユノさん…」

「帰ろう」

チャンミンはこっくりと頷くと
次から次へと涙が溢れ出した

我慢して強がっていた分
一気に決壊したように涙と嗚咽がとまらない

ユノはたまらず、伸ばした手でチャンミンの腕をひっぱるとそのまま抱きしめた。
チャンミンもまた、飛び込むように抱きついてきた


「ごめんなさい…僕…ほんとに…ごめんなさい…」

泣きじゃくるチャンミンの頭をユノは優しく撫でた


「もう、大丈夫だから」

「ほんとに…迷惑ばっかり」

「迷惑だなんて…そんなこと思わないよ」


チャンミンが泣きはらした顔をあげて
ユノを見つめた

涙を溜めた大きな瞳がキラキラと輝く

ユノが慈しむように、そんなチャンミンを見つめる


ススキが夜風にそよぐざわめき

2人を照らすのは月明かりだけ


愛おしくて

狂いそうだ…


ユノは顔を傾けて、チャンミンにくちづけた

チャンミンはそっと目を閉じてそれを受け止める

冷たくて、少し乾いたユノの唇が
チャンミンのそれを捉えようとして動く


僕はきっと…ユノさんが好きなんだ…
そう思って、いいんだよね?


チャンミンは少し唇を開いて、ユノの熱い舌を受け入れた


ユノは優しくチャンミンの肩を抱くと
助手席に座らせて、自分は運転席に入りドアを閉めた

ススキがそよぐ農道を、2人を乗せた車が走る


「もう涙は止まった?」

チャンミンの嗚咽が静かになったところで
ユノが問いかけた

「はい…」

「俺から、少し話をしてもいいか?」

「…はい」

「どうしてひとりで帰ろうとしたのかは聞かない」

「………」

「自分だって、よくわかってないんだろ?」

チャンミンは黙ってこっくりと頷いた


「チャンミンが少し不安定になってることは…
知ってた」

「………」

「電話しても様子が変だったし」

「すみません…」

「謝ることない…知ってて俺がどうにかしてやればよかったものを」

「いえ…」

「これはそっとしておいてやったほうがいいのかって。
そんな風に捉えてたんだよ」

「………」

「仕事が負担か?」

「いえ」

「じゃあ、俺の存在?」

「え?」

「自惚れかもしれないけどさ
俺とスビンとの間で気持ちが揺れているってことはないか?」

「…………それが」

「うん」

「………」

「うん、ゆっくりでいい。
何言ってもいいから、正直に話してほしい」

「よく…わからないんです」

「そう…か」

ユノは落胆するでもなく、少し難しい顔をしている


「ユノさんのことを…好きになったと思うんです」

「…チャンミン」

「だけど…浮気はしたことあるけど、スビン以外の誰かを好きになったことってなくて」

「高校生からずっとスビンが好きだったんだもんな?」

「そう…それも…なんていうか、恋い焦がれて
やっと付き合ってもらえたようなところもあるから」

「そうか」

「なんでもスビンの言う通りに生きてきて」

「………」

「親の言うことより、スビンに従ってきた…」

「それで…正解なことも多かったわけだ」

「たぶん」

「………」

「だから、正直言って…
スビンときっぱり別れた自分が想像できないし
だからといってユノさんが誰かと付き合ったりしたら
耐えられないし…」

「俺は…」

チャンミンが少し興奮気味になる

「そんな自分が…すごく嫌なんです
スビンと別れればいいのに、それは不安すぎて
ユノさんとも一緒にいたいし
あまりに中途半端で、誰に対しても不誠実で」

ユノがハンドルを握っていない手で
そっとチャンミンの手を握った


「ユノさん…」

「もういい」

「嫌ですよね、こんな僕なんか
わがままで自分勝手だってわかってるんです
自分でも、何言ってるんだって…」

「もういいから」

「嫌いになりました?…よね?」

チャンミンが不安で目を見開いてユノを見つめる

ユノはチャンミンの手を強く握り返して
それでも視線は前を向いたままだった


「うれしいよ、チャンミン」

「うれしい?」

「少しでも、俺を思う気持ちがあるなんてさ」

「だって…」


あの時…ホスに対する嫉妬を自覚してしまったんだ…


「正直言って…」

「はい…」

「スビンから奪い去りたい気持ちでいっぱいだよ」

「ユノ…さん…」

「だけど…チャンミンが不安なのにそれはできない」

「………」

「ゆっくりでいい、自分の気持ちに正直に」

「だけどそれじゃ…」

「いいんだよ、自然に俺の元に来てくれたらそれでいい」

「………」

「今そんな気持ちで、白黒はっきりつけることない」

「僕が自分でそれは嫌なんです」

「でも、答えが出ないんだろ?」

「出します!」

そんなチャンミンにユノが笑った

「いいんだよ、チャンミン
俺がそれでいいって言ってるんだから」

「………」

「でもね、これは言わせてもらう」

「はい…」

「容赦なく奪いに行くから」

「え?」

「俺に少しでも気持ちがあるのなら遠慮はしない」

「………」

「今の俺の言葉に返事しなくていい。
これは俺の決意」

そう言ってユノは笑った


チャンミンは困惑していた

ますます、気持ちが揺れ動いて
こんなのでいいはずがないのに

ユノが突然話題を変えた


「今日はあのままいれば、美味しい料理が食べれたんだぞ?」

「え?」

「となりにガーデンレストランを一時的にオープンさせて、そこがブッフェになってさ」

「あ…」

そんなこと…すっかり忘れてた
それを楽しみに今日は来たはずだった

「食べ損ねたね、チャンミン」

「あ…それ楽しみにしてたのに…」

「うん、すごく美味かった…」

「あー残念…」

「残念だったな」

「え?でもさ、ユノさん」

「ん?」

「そんな食べる時間あったんですか?
僕を迎えに来ちゃって」

「ん…実は俺も食べてない」

「ユノ…さん…」

「視察から戻って、レストランでチャンミンを探したけど、見つけられなくて」

「………」

「とっくに帰ったっていうから」

「すみません…」

「挨拶しなきゃいけない人たちに一通り挨拶して
とりあえず駅まで行ったりしたんだよ」

「あ…ほんとに…すみません」

チャンミンは申し訳なさすぎて、
下げた頭をあげられなかった

「でも、しっかり料理はもらってきた」

「え?」

パッとチャンミンが顔をあげた

ユノがニコニコしながら、後部座席を示す

振り返って後ろを見ると
大きなバスケットがあった

「あ……全然匂いがしなくて…わからなかった!」

「パッキングしてあるからね、
フルーツもみんなもらってきた」

「すごい!」

「これから、俺の部屋で食べようぜ」

「はいっ!」

途端に元気になったチャンミンに
ユノが可笑しそうに笑った








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