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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 10



ユノは仕事をまとめて終わらせ
チャンミンともう一度遊園地に行く時間を作った。

仕事的にはそろそろ次の段階へと進まなければならない

その朝、ユノは会社には戻らないつもりで
スーツではなく普段着でチャンミンを迎えに行った


いつものステンカラーコートにジーンズのチャンミンが
ユノを見て驚く

「ユノさん…」


その日のユノは完全にオフ仕様だった。


ヘアスタイルは洗いっぱなしでサラサラとして
ユノをいつもよりうんと若く見せていた。

ジーンズに白いTシャツ、濃紺のパーカに白いスニーカー
何も気負うところがなく、まるで大学生のようだ


「おはようチャンミン」

「ユノさん…」

「ん?どうした?」

「なんか、今日若い!」

チャンミンが思わずそう叫ぶと、ユノが楽しそうに笑った。

「なんだよーいきなり失礼な挨拶だなぁ、
元々若いんだよ」

「だって、なんか、そう思ったんですよぉ」

「今日は会社寄らないからいいかと思って」

「はい、遊園地だし、いいと思います!」

ニッコリと優しそうなチャンミンの微笑みに
ユノの心が苦しくなる


時折溢れ出して、止められなくなりそうなチャンミンへの想い…


ユノはそんな気持ちを振り切るように笑った

「さ、乗って?出発しよう」

「はい!」


車中では、たわいない話で盛り上がった。

ユノのカジュアルな雰囲気がより親しみさを増して
2人は仕事という枠を離れてより距離が縮まる

話題も仕事を離れ、自分のプライベートな話で盛り上がることも多かった

「ユノさん、ちゃんと料理してるんですかぁ?
食事は大事ですよ、フフフ」

「まったくしないなぁ、アハハハ…
たまに義妹がたくさん作り置きしてくれるけどさ」

「あ、ミンスさん…でしたっけ?」

「そう、俺がダメダメだから気になるみたい」


その話を聞いて、なぜかチャンミンの心が少しだけ
ジリッと焼け付くような気がした


なんだというのだ。


独り身の義兄を心配して、料理を作りに来てくれる。
それがなんだと?

一度寝たからって、ユノのセクシャルな部分を独り占めできる立場ではない

あの夜、あまりにユノがチャンミンを欲したものだから
ユノが自分の手中にあると勘違いをしているとしたら

だとしたら、自分はひどく失礼なヤツだ。


「どうした?チャンミン、疲れたか?
少し休もうか」

疲れるのは運転しているあなたの方なのに
僕のことを気にする

「はい、ユノさんも少し休みましょう」


景色のいいサービスエリアに車を停めると
ユノは車を降りて、大きく伸びをした

その時、チャンミンの視界にユノの裸の腹が見えて
心臓がドキドキした


その細い腰にやはりどうしてもあの夜を思い出す


仕事上の付き合いがあるからと言っても
やはり、あの夜をなかったことにはできないのかもしれない。

チャンミンはそんな気持ちを払拭するように
明るくユノに声をかける。

「あのベンチに座っててください!
僕、コーヒー買ってきます」

「え?あ、じゃあ、これ、」

ユノが慌ててジーンズのポケットから財布を取り出そうとする

「いいんです、僕が買うから」

「あ、ちょっと…」

チャンミンは走って売店へ行き
コーヒーを2つ買ってベンチに座るユノのところへ来た。

「なんか悪いな」

「いいんですよ、これくらい」

「いただきます」

軽くお辞儀をして、ユノはコーヒーを飲んだ

「ユノさんて…」

「ん?」

「こんなこと言ったら失礼だけど
きちんと躾られて育った感じがします」

「そうか?」

「はい、そう思います」

「母子家庭だから、その辺は母親が気を使ったと思う。
厳しかったよ、よく挨拶とか、細かいことで叱られた」

「そうなんですか…」


母子家庭だったのか…


「母は妾だし、俺はいわゆる婚外子ってやつだから
そのことでバカにされないようにって思ったんだろうねぇ」

凄まじい環境を、この人はいとも簡単にあっさりと話す

そんな風に生きて、結婚したのに…奥さんは自殺

そのあたりの事が知りたかったけれど
とてもこちらから聞けるような内容の話ではない

興味本位で、そういう事を聞くのもよくない

そうチャンミンは思って少し話の矛先を変えた

「そういえば、今日動画を撮れたら
アプリで色を変えられるみたいで。だからそれで
プレゼン資料として動画を作ってみようかと思ってます」

「アプリやソフトを持ってるか?」

「あ、スビンが…持ってるはずなので…」

チャンミンはなぜかスビンの名前を出すことが憚れた


「それで上手くできればイメージを伝えやすくていいね」

ユノはスビンの名前を出したところで何も感じてない

あたりまえだ

ユノさんはもう、僕とのことは仕事としてとらえてくれてるんだ。

僕がそう望んだんじゃないか…



やがて、車は遊園地に着き

ユノはセキュリティから鍵をもらって園に入った

高台の観覧車は色も落ちてしまって寂れている
これはもうすぐ取り壊されて、チャンミンがデザインした観覧車が作られる予定だった。

「さぁ、動画を撮ろう
観覧車を回すことはできないから、撮りながら俺が動いて、こう、動きをだすかな。」

「はーい」

チャンミンはそう返事しながらも、まだ観覧車に触れている

優しそうな横顔

観覧車に触れて、何かを感じとろうとしているのか


ユノは思わず、そんなチャンミンにビデオカメラを向けて
撮影をオンにした

モニターの中のチャンミンは
柔らかな前髪が風に吹かれてなんとも儚く美しかった


上を見上げるために伸ばされた、細くて長い首…


触れたい…

ユノの中に抑えている衝動がぶり返す


ふと、モニターの中のチャンミンがこっちを向いて
ユノは慌ててカメラをオフにした。


「そろそろ撮りますか?僕どいてますね」

「あ、ああ、頼む」


グルリと観覧車を下から撮影し、途中でチャンミンと交代した。

「どうだ?」

「後は植栽の部分も撮りますね」

チャンミンはすっかり仕事モードで
真剣に各部の動画を夢中で撮っていた

ユノはいまひとつ、することがなくなり
ベンチに座ってチャンミンを見ていた

それに気づいてチャンミンがニッコリ笑った

「ユノさん、眠そう」

「そんなことないよ」

「いいですよ、風が気持ちいいからユノさん寝てて。僕、もう少し撮りたいから」

「うん…」

寝ないつもりのユノだったけれど

いつのまにか、ウトウトと眠ってしまった


チャンミンはしばらく夢中であちこち動画を撮っていたけれど、やがて満足してユノが座るベンチに戻ってきた

ユノは頭をベンチの背に預けて眠っていた


綺麗な顔…


男らしく涼やかな目元から
高い鼻筋へとチャンミンの視線は移り

その柔らかな唇を見つめた


この唇がチャンミンの全身を隙間なく食むり
息もできないほど口付けてきたのだ

なんどもなんども…

だらんと膝から落ちた力の抜けた手

筋ばっているけれど、長い指がセクシーだ

この手が優しく頬に触れて
力強く頭を抱きこんだあの夜


指を絡ませて僕を壁に押し付けたそれ

次々にリアルな感覚が蘇る


チャンミンは腰のあたりにぞくりと寒気に似た快感を感じた

ユノはぐっすりと眠っている

チャンミンは…ゆっくりと顔を近づけ

その柔らかそうな唇にそっとキスを落とした






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