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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 9




時間が経つにつれ

チャンミンはまたユノを仕事関係の人として
見ることができるようになった

前とまったく同じ、という訳にはいかなかったけれど
躊躇なく仕事の事で相談することができた


そうはいかないのが、ユノの方だった

抑えても抑えても…
チャンミンへの想いは募り

一度その腕に抱いてしまってからは

チャンミンのすべてが欲しいと思うようになっていた

それでも見事にそれを表に出さず
ユノはプロに徹して仕事をした


「もしもし、ユノさん?」

「チャンミンか、どうした?」

「観覧車の件、どうなりましたか?」


チャンミンが観覧車を蒼いカラーでデザインしてから
ユノから連絡が途絶えていた


「うん…もう少し煮詰めてから話そうと思ったけど」

「はい…」

チャンミンは不安になった
あまりいい結果ではなさそうだ

「結果から言うと、下案を見せた時点で
難色を示されたよ」

「あ……そうなんですか…」

「まだがっかりする必要はない。
コンセプトはしっかりしてる事を伝えてあるから」

「プレゼン…次第って…感じですか?」

「そうだな、そこを頑張ろう」

「はい…」

「プレゼンの仕方を練らないとな」

「打ち合わせしたいです、いいですか?」

「もちろんいいよ」


ひさしぶりに、チャンミンはユノと会った

平日の夕暮れ時に時間を作ってもらって
会社の近くのカフェで待ち合わせた

チャンミンが店に入った時には
すでにユノはテーブルについていた

ユノはいつものスーツ姿で
ノートPCを睨みながら、難しい顔で仕事をしていた

「ユノさん」

声をかけると、ユノがヒョイと顔をあげた

その表情がとてもカッコよくて
チャンミンは一瞬頬が紅潮したかと思った


ユノさんて…こんなにカッコいいんだな

今更ながらにそんな風に思った


「チャンミンひさしぶりだな」

ニッコリと笑うユノは真っ白な歯がまぶしい

「はい…」

「座って、コーヒーでいい?」

「はい」

ユノは店員にチャンミンのコーヒーを注文してくれた。


「進んでいるか?」

ユノがパタッとPCを閉じた

「それが…なかなか…」

「最初は順調だったのに、失速したかな。」

「蒼い観覧車っていうのを、クライアントが難色示してるって聞いて…」

「自信なくしたか?」

「そんなところです。
でも、ユノさん…」

「ん?」

「やっぱり、蒼でいいと思うんです。
最初ユノさんと話したイメージがいちばんしっくりくる」

「うん」

「黄色やピンクで目立たせるより
なんかこう…大人が…カップルが乗りたくなるような
そんな…」

「俺もそれでいいと思う。
最新式のアトラクションを揃えた遊園地ができるほど
広くないし、資金だってないんだ。
そこは俺がちゃんと攻めるから大丈夫だ」

ユノの笑顔はとても頼もしかった


こうやってユノさんと話していると
前向きに考えられる


「プレゼンは動画で見せられればと思ってるんです」

「どうやって?」

「今の遊園地を崩す前に、観覧車を撮影して
あとで加工で色をつけて…」

「いいね、リアルで」

「いいでしょう?イメージビデオみたいに音楽もつけて」

「うん、わかりやすい」


ユノが同意してやると
チャンミンはホッと安心した笑顔を見せた


可愛い…チャンミンの笑顔はほんとうに和む


ユノは愛おしさで胸が締め付けられるようで
思わず視線を逸らしてしまった


「ユノさん、遊園地の工事が始まるのはいつですか?」

「再来週くらいになるな」

「じゃあ、来週には行きたいんですけど」

「いいよ、都合つけるから」

「ありがとうございます」


話がまとまり、2人は別れた

ユノは気持ちが高揚するのを止められない

仕事とはいえ、またチャンミンと出かけることができる
ドライブに行くわけではないことはわかっている
チャンミンはあくまで動画を撮りたいだけなのだ

ユノは自分に言い聞かせた


その夜、高まる気持ちを宥めるため
ユノは繁華街に出た

前にチャンミンが酔いつぶれていたバーへ出向いた
チャンミンがいないことはわかっている
だからこそ来たようなものだ

ユノが重いドアを開けて中に入ると
客の視線が一斉にユノに向けられた

待ち合わせの連れではなくてがっかりする顔もあったけれど、その大半はセクシーなユノを見て心ときめかせた

ユノがカウンターに座って酒を注文すると
早速、誰かが隣にやってきた

「こんばんは」

その声がチャンミンに似ていてドキッとして振り返った

「………」

「覚えてます?前にクラブで…」

すっきりと細面の可愛い顔
今時の子らしく、流行りのマッシュヘアが似合う

そうか…クラブで…

チャンミンに声が似ていて、
個室に引っ張り込んだ…男だ…

「クラブで?会った?」

「そうです。覚えていてくれたなんて感激」

笑うと可愛い

顔の骨格が似てるから、声も似るのかな

ユノはそんな風に思った


「ひとりですか?隣座ってもいい?」

「あ、ああ、いいよ」

その男はユノの隣の席に座り、甘いカクテルを頼んでいる

「あなたの隣を独占して、まわりの視線が痛いです」

男はクスクスと笑った

「俺の隣?」

「お兄さん、かっこいいもん」

「そんな……えっと」

「名乗らなくていいです。気にしないで」

「え?」

「お互い、名前も知らないほうが都合がいいことも多いし」

「………」

「この間…」

「え?」

「僕とやってる時、お兄さん、しきりに誰かの名前呼んでた」

「………」

とたんにユノは気まずくなった


チャンミンの名前を呼んでいたのだろうか


「いいんです。僕があなたを慰めたのなら
すごく嬉しいから」

「………なんて言っていいか…わかんないよ」

ユノは苦笑した

「何も言わなくて…いいです」

男はそっとユノの大腿に手を置いた

「今夜は…そういうつもりはないんだ」

「そうですか…じゃこのまま少し飲みましょう」

男はさっとユノの太腿から手をどけると、グラスを持ってユノのグラスに縁を当てた

「乾杯!」

「ああ、乾杯…」


わきまえている男だった

ルールをわかっている

必要以上にしつこくしない
詮索しない


かと言って、大した話もせず
結局、隣の男は、他の男を見つけてついて行く段取りをつけている

「お兄さん、またね」

そう言って、他の男と腕を組み
ユノへ手を振った

面白くない男だと思っただろうな

ユノはやれやれとため息をついて
2杯目の酒を頼んだ


女々しい自分がイヤになる

いつまでもチャンミンを想う
湿度の高い自分がイヤだ

性格がいいとか悪いとか

好きになるのに理由なんかない

彼氏がいるとか結婚してるとか

そんな理由で諦め切れるはずもない


ユノは長い指でそっとグラスを掴み
少し揺らして氷を鳴らした





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