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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 8



チャンミンは自分のアパートへ帰った

なんとも後味の悪いユノとの出来事に
チャンミンは何か苦いものでも食べたような
難しい顔をしていた

スビンはどうしているかと、ふと思った。

念のため確認しても、スビンから連絡は入っていなかった

気にしてないのだ
僕が何をしようと

それほどスビンの懐は広くて深い

チャンミンはそう理解して疑わなかった


いつものことだけれど
チャンミンからスビンに連絡をした

「もしもし?チャンミン?」

「ん…」

「今、アパート?」

「そう…」

「昨夜は忙しくて…突っぱねて可哀想なことをしたね」

「……」

「もう落ち着いたから、構ってやれるよ?」

スビンにそう言われると
なんともくすぐったいチャンミンだった

「仕事だもん」

「そっか」

「昨夜はなにしてたか、聞かないの?」

「んーそうだな、ハッテンバに行って適当な相手を探そうとして…結局見つからずに1人家に帰ったってところか」

「浮気したよ」

「おやおや…そうだったか」

電話の向こうでスビンが笑う

「すごくカッコいい人だった」

「上手かったか?」

「なにが?」

「エッチに決まってるよ」

「激しかった」

「痛い目には合ってないか?」


痛い?

ユノさんは…あんなに激しかったのに
僕に触れる手はもどかしいほど優しかった

チャンミンは突然そんな事を思い出したりした

「痛い目になんてあってない」

「じゃ、上手だったんだよ、そいつ」


結局、僕はスビンの手のひらの上で
もがいて甘えているだけ

スビンはなにがあっても動じない

ユノさんみたいに…余裕なく僕を欲しがったりしない


そう言いつつ…チャンミンは昨夜のユノの淫靡な表情が頭から離れない

チャンミンは仕事がはかどらなかった

言われていた園内のグリーンを構築し直さないといけなかったのに、なにも手に付かなかった

ユノさんと…あんなことになったのは
本当にまずかった

仕事の関係だし
スビンの友達だし

でも、ユノさんは大人だから
きっと仕事には昨夜のことは持ち込まないだろう

やりたい仕事ではあったけれど
早く終わるといい、そんな風にチャンミンは思った

やっと仕事に取り掛かる気になれた頃

突然ユノから連絡があった


「あ…僕ですが…なにか…」

チャンミンは慌てた

なにしろ、昨夜の今日だ

「さっき観覧車の模型が出来上がってきたから、早く見せたいと思って。いつ来れる?」

いたって仕事の会話という感じで
昨夜、あんなに絡み合ったことなど微塵も感じさせなかった

「あーえっと、そうですね、明日でもいいですか?」

ちょっと今日行くというのは、憚られた
まだ自分の身体からユノの匂いがしてきそうな状態だ

「わかった。明日何時でもいいから。
結構いい仕上がりだから、楽しみにしてて」

「あ、はい…」


晴れやかなユノの声に
昨夜の事をどうこう思ってるのは自分だけなのかな、とさえ思った。

「あのさ、チャンミン…」

「はい?」

「来づらかったら、スビンも一緒でいいよ」

「え?」

「遊園地の模型なんてなかなか見れないしさ、
俺が連れてきていいって言ってるってさ、そう話してみたらいいよ」

「はい…」

「なんなら、俺がスビンに会いたがってるとか、適当なこと言ってくれてもいいし」

「ん…ちょっと聞いてみます」


電話を切って
ユノはため息をついた…

やっぱり気まずいんだな

自分としては、昨夜のことを吹っ切るために
できる限りなんでもない風を装ったつもりだった


まだチャンミンの温もりが残るこの身体


忘れなきゃ

忘れないと…前に進めない…


ユノは仕事が終わり1人になると、人肌を求めずにはいられなかった

チャンミン…

求めるのは…チャンミンの身代わり

その夜も馴染みの繁華街で、相手を探すユノ

何人もがユノと肌を合わせたくて
そして抱かれたくて縋ってきたけれど

ユノはその夜、誰も抱こうとはしなかった

チャンミンの残り香を
感じていたかった…

それが本音


昨夜の事は…自分にとっては夢の一夜でも
チャンミンにとってはちょっとした間違いなのだ

寛大なスビンは笑って許すのだろう

俺とのちょっとした間違いを



翌朝、チャンミンはスビンを伴って会社にやってきた

「何か滅多に見れない遊園地の模型があるって聞いて
忙しいのに邪魔して悪いね」

スビンはいつもの柔和な笑顔で挨拶する

「いいんだよ、俺が呼んだようなものだから。」

「………」

チャンミンはやはり気まずそうに黙っている

ユノは2人を別の部屋へ通した。

そこには大きな台しかなくて
その上に真っ白な遊園地の模型があった

「うわぁ」

チャンミンが思わず模型に駆け寄る

「ジオラマみたいですね」

「ここにチャンミンが色をつけていくんだ」

「僕が?」

チャンミンが振り向いてみると、
優しそうに目を細め、微笑むユノがいた

チャンミンはドキッとした

その笑顔に色気を感じてしまったから


「緑の部分のジオラマも作らせてるから
今度それと合わせてみよう」

「あ…はい」

ユノが模型のひとつひとつを説明する

指を指す時に、手首に筋が立って
思わずチャンミンがそれを見つめる


この節くれた綺麗な指を辿っていくと、逞しい腕に繋がっているのを僕は知っている

そして、その腕が僕を抱え込み
狂ったように僕を欲したのだ

整然と冷静に模型について語るユノの
もうひとつの顔を僕は知っている

欲望を剥き出しにして
あなたはあんなにも僕を欲しがった

チャンミン、チャンミンと名を呼び

もしかして、あなたにとってあの夜は
思いを遂げた記念すべき夜だったのでは

そんな風に自惚れたくなる

ふと、視線に気づきそちらを見ると
スビンが僕を見つめていた

すべてを見透かしたようなその瞳に
僕は動けなくなる


案の定

帰り道、タクシーの中でスビンがポツリと呟いた


「浮気相手ってユノだったんだね」

「………」

「その辺の輩じゃなくて良かった」

「………」

「ま、だけど、ある意味面倒くさいヤツだから。
なんていうか、良くも悪くも真っ直ぐだしね」


「…そうでもないよ、あっさり解放してくれたし」


チャンミンのその言葉にスビンは吹き出した

「解放してくれた、か…アハハハ」

チャンミンはスビンの態度に困惑した


「あー、ユノはそんなに激しいのか、ウケるなぁ」


「そんなに…可笑しい?」

「知らないからさ、そんなユノを」

「………」

「ま、ユノなら安心した」


それでも


チャンミンの困惑はやがて霧が晴れるように
明るく消えていく


スビンの手のひらの上は
どんなに暴れても大丈夫だ

そこから落ちることなんてない

僕のやることすべてを見守って
緩やかに成長させようとしている

こんなに大きな愛で包まれて
僕は安心して生きていくことができる…


チャンミンはスビンの手を握った

「なに?どうした?」

「ううん、なんでもない。
こうしていたいだけ」







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