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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

蒼い観覧車 1



季節外れの低気圧

今日は思いのほか強い風が吹き荒れる
そうテレビのニュースが無機質に告げている

昼下がりの定食屋は、ほとんど人がいない

ランチを取り損ねたスーツのサラリーマンか
時間が自由な大学生か

そんなところだ

入り口は全面吐き出しになっていて
開け放してある


チャンミンの目の前を
スーパーのレジ袋が風に飛ばされて空に舞う

チャンミンはコングクスを食べる手を休めて
それを見送った

レジ袋が空を舞う姿は
まるでクラゲが海の中を漂うのに似ている

そんな想像をして、チャンミンはフッと微笑んだ


「チャンミン、早く食べないと不味くなっちゃう」

「はい」

チャンミンは隣で同じようにコングクスをすするスビンに窘められ、ニッコリと微笑み、また箸を取った。

大好きなスビン

高校の時、家庭教師だったイ・スビンにチャンミンは恋心を抱き、大学の時に念願が叶って抱いてもらった

そこに愛があったのかはわからない。

でも、スビンに恋い焦がれていたチャンミンは幸せだった。

少なくとも、自分の方には有り余る愛があった。

背が高いわけでも、特別イケメンというわけでもないスビンは、人当たりがよく頭もよく、博識だった。

現在は若くして大学の講師も務めている

人と争うことを低俗だと考え、上昇志向も強く
そんなスビンをチャンミンは尊敬していた

チャンミンにとって、スビンは絶対だった

チャンミンとしては、2人の仲を公開しても一向に構わなかったけれど

スビンがそれを嫌がった

理解できない人間に、あれこれと揶揄されるのがイヤだというのがスビンの理由で

チャンミンはなるほど、と思って納得していた。
スビンの言うことはいつも正しいのだ。


「ねぇ、打ち合わせまでまだ時間ある?」

「あるよ、コーヒーでも飲んで行こうか?」

「………」

スビンは伝票をつかむと、レジで会計をした。

チャンミンは先に外に出て空を見上げると、
まださっきのレジ袋が空を舞っていた


「チャンミン、行こうか」

歩き出したスビンの腕をチャンミンがそっと掴むと
スビンは瞬時にあたりを見回して、自分たちが見られていないか警戒した

「コーヒーじゃなくて、ベッドがいい」

「チャンミン…」

「抱いて欲しい…」

スビンが嗜めるようにため息をつく

「そんな時間はないよ」

「そう…」

フフッとスビンが笑う

「ほんとにチャンミンはなんていうか…」

「なに?僕はなに?」

「突拍子も無いことを言うね」

「……」


結局2人は近くのチェーン店のカフェでコーヒーを飲んだ

「これから会う、チョン・ユンホという男はね
僕の大学時代、ゼミが一緒だったヤツでね。」

「………」

「聞いてる?…まだ、拗ねてるの?」

「そういうわけじゃないけど…」

「チャンミンはフリーで仕事をしていくんだから、
こういう出会いは大事にしないといけないよ」

「はい」

「ユノ…あ、ユンホね、ユノって呼んでるんだけど
以前はバリバリの証券マンだったんだよ」

「へぇ、なんでまたレジャー会社の下請けなんか」

「そこはよく知らないけど」

「ふぅん」

チャンミンは大して興味無さそうに口を尖らせた

「さ、そろそろ行こう」



雑居ビルの2フロアを借りきる形で
その会社は存在していた

会社名は「ジェリーフィッシュ」

社員は4人ほどの小さな会社
レジャー施設の開発や管理の下請け会社だ。

さっきまでクラゲ(ジェリーフィッシュ)のように空を舞っていた袋を思い出して、なにか面白い偶然だとチャンミンは思った。


エレベーターで3階へ向かう。


ガラスドアに、会社名がローマ字で書いてあり
チャンミンはスビンに続いてその部屋に入った

すぐ横に小さな応接ルームがあり
スビンはなんの躊躇もなく、そのソファに座った

そして、スマホを取り出すと何かを話していた

「すぐ来るって、座ってよチャンミン」

「はい」

しばらくすると
ドアが開いて、1人の長身の男が入ってきた


うわ、カッコいい


チャンミンは単純にそう思い、
ソファから立ち上がった

「待たせたね、スビン」

低く乾いた声

180をゆうに越す身長
スーツに包まれたその身体は程よく鍛えられていることがよくわかる。

真っ直ぐな形のいい長い脚

がっしりと男らしい肩の上に乗るその小さな頭

涼しげでキリッとした整った顔立ち

ゆるく立ち上げた前髪から綺麗な額がのぞき
黒い短髪がとてもよく似合う

ともすれば、キツイ表情にも見えそうだけれど
ニコニコと爽やかに微笑む笑顔は
とても人懐こい

昔、体育の先生にこんな感じの人がいたような
そんなムードを纏うチョン・ユンホだった


「ひさしぶりだね、ユノ」

優しく微笑むスビン

「はじめまして、シム・チャンミンです」

その声に
ユノは、隣のチャンミンに視線を移した


そして、ユノは固まった


ぺこりと頭を下げてから、茶色のくせ毛を揺らして顔をあげたその男

白い肌…拗ねたような唇

大きな瞳は憂いを纏い、
優しく目尻がさがっている

彫りの深いはっきりした顔立ちだけれど
どこまでも甘く子供のような幼さが漂う


可愛い…


ユノは一瞬にして、チャンミンに心を奪われた


「どうした?ユノ」

スビンに声をかけられ、ハッとしてユノはスビンに向き直った

「あ…いや…」

「アハハ…可愛いだろ?ハーフに見えるかもしれないけど、韓国人だよ、シム・チャンミン」

ユノはまたチャンミンをみて、狼狽えるようなしぐさを見せた。

「はじめまして。チョン・ユンホです」

しっかりと頭を下げるその姿に誠実さが滲み出る

「よろしくお願いします」

小さな声でチャンミンが頭を下げた


やっと、3人が席に着くと
ユノが電話でデリバリーのコーヒーを注文した

そして、仕事の打ち合わせが始まった


「廃れてしまった小さな遊園地があるんですが
今度、高速道路が近くまで伸びることになって
そこを修繕してまた開園しようって話なんです」

ユノの話は簡潔でわかりやすい

数字の話も芸術畑のチャンミンにわかるように話してくれ、チャンミンがデザインを手がけるに当たって
ある程度のガイドラインを示してくれた。

「一度、現場を見たいのですけれど…」

そう言ってチャンミンはスビンを縋るように見る
いちいちスビンにお伺いを立てないと不安なのだろう

ユノはそう捉えて、チャンミンを可愛く思った

けれど

スビンはチャンミンを不思議そうに見つめて言う

「仕事の話はユノと進めて?
僕は紹介するまで、だから。
僕の顔を見てても仕事は進まないよ」

「はい…」

軽く傷ついたような顔をするチャンミン

チャンミンとスビンを交互に見ていたユノは
2人の力関係をなんとなく把握した。

なんでもスビンの言う通りに動きたそうなチャンミンに
ユノが助け舟をだした

「現地に行くのが不安だったら、スビンに付き添ってもらってもこちらは構わないので。
車は出しますよ」

「おいおい、甘やかすなよ、ユノ」

スビンが笑う

「いや、なんとなく不安そうだから」

「立派な成人で、これからフリーでやっていこうっていうんだから、いつまでも保護者付きじゃおかしいよ」

少しムッとしたようなチャンミンが
強い視線でユノを見た

「大丈夫です。僕、これからフリーでやっていくので
なにかわからないことがあったら、ユノさんに聞きますし」

「そうか、チャンミンさん、それじゃ現地へは…」

「チャンミンと、呼び捨てで構いません
仕事上の付き合いでもみんなそう呼んでます」

チャンミンとは視線を合わせず、
ユノは優しく微笑んで返事をした

「わかった、じゃそう呼ばせてもらうよ、チャンミン」





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こんばんは、百海です。

また新しいお話がはじまりました

今回はちょっと暗めでRな感じです

ファンタジーはゼロです(笑)

このところのお話とちょっと違う雰囲気ですが
お好きな方もいるかもしれません

よろしかったら、また読んでみてくださいね
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