FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 21



「へぇードーナツって真ん中に穴を開けて作るんですか!」

「これが基本だよ、チャンミン」

「この開けた後の丸いのはどうするんですか?
捨てたら勿体無いですね」

「それはそれで揚げて、丸いお菓子にするんだよ」

「それは名案だと思います!」


その時だった


「牧師さま!大変です!」

教会の前のアパートに住む夫婦が駆け込んできた

「?」

「教会の子供が!
門のところの木の上に乗ってしまって降りられないんです!」

「まさか…あの木には登らないように言って聞かせてたのに!」

「牧師さま…」

チャンミンも戸惑う

「枝に腐っているところがあって危ないんだ!」

「え…」


カン牧師はエプロンを取って、キッチンを出て行った


チャンミンは胸騒ぎがした

まさか…

チャンミンも急いでエプロンを取り、カン牧師を追った


外に出てみると、教会の門の側にある大きな木から
子供の怯えた泣き声が聞こえる

よくみると、枝の先の方に跨るようにして
ひとりの男の子がしがみついている

高さは何メートルあるだろうか

落ちたら、危険だ

しかもその枝が弓なりにしなっている

カン牧師が腐っている枝があると言っていた


そして、その枝の元を見てチャンミンは思わず声が出た


「ユノ!」


ユノが木の上に登り、枝元で男の子に話しかけている


「今、助けてやるから待ってろ
泣くなよ、男だろ?」

「うわーーん!こわいよぉ!落ちちゃう!」

「騒ぐな、じっとしてるんだ、わかったか?」


木の枝の先には赤い風船がひっかかっている

あの風船をとろうと、この大木に登ってしまったのか
僕がみんなの為に持ってきた風船を…


木の下では、子供たちが不安そうに見守っている

チャンミンが駆け寄ると
子供たちが抱きついてきた


「ユノヒョンがこの木には登っちゃだめだから
風船は諦めてっていったのに…」

みんなの目に涙が溜まっている

「大丈夫だよ、大丈夫だから」

「ユノヒョンが助けてくれるよね?ね?」

「うん、ユノは強いからね
きっと助けてくれるから、みんなはもっと下がって」


カン牧師が消防署に連絡をして
夫婦は家からハシゴを持ってきた


ユノが優しく話しかける

「大丈夫だから、動かないでじっとしてるんだ」


ユノ…


チャンミンは気が気ではない


この状況は…

まずい…



夫婦が持ってきたハシゴはとても枝には届かない
届いたとしても、それが引き金になって枝が折れてしまいそうだ


ユノ

ユノ


チャンミンは願うように、様子を見守った


たくさんの天使たちが木のまわりに集まってきた
チャンミンは天使たちを見上げて睨む


" この子じゃないね?この男のほうだね "

" みて、チャンミンがいる "

" チャンミンの仕事みたいだ "


その時、ギシっとイヤな音がして

枝が更にしなった

「わぁぁぁぁ!」

子供は半狂乱だ

「騒ぐな!大丈夫だから!」

ユノが思わず大きな声を出す


一旦しなりだした枝は、みるみる円を描き
頼りなげに折れはじめた


「!!!!」


誰にもどうすることもできなかった

「何か!布かなにか!」

カン牧師の叫び声と、集まってきた人々のざわめき


消防車はまだか?!


もう子供の乗った枝が折れるのは時間の問題で
とうとうユノが動いた

ユノは別の枝に乗って少しずつ子供に近づいていく


危ない!

ユノ!


チャンミンは必死に祈る


消防車はまだ来ない



と、その時



子供の乗った枝が耐えきれずに音を立てて折れはじめた


それは


まるでスローモーションのように


チャンミンには見えた


折れる枝と泣き叫ぶ子供

ユノは隣の枝から体を伸ばして子供を抱こうとしていた


きっとユノが思ったより、枝の折れる速度は速かったのだろう…

ユノの身体が枝から離れ、子供の腕を引っ張りあげるとそれも同時に、子供の乗っていた枝は完全に折れた

ユノの身体はすでに枝から離れていた

引っ張り上げられた子供は
ユノに抱き抱えられ、2人とも木から落ちてきた


何も考えなかった…

チャンミンは何も考えなかった

身体が勝手に動いた


ユノは子供を自分の中に抱え込むように
かばいながら落ちてきた


そんな2人に向かって


チャンミンは手を伸ばしながら走った


" だめだ!チャンミン!"
" あの死神は何を考えているの!"
" 掟破りだぞ!"
" チャンミン!"


" 人間の運命を変えては…ダメ!!"


まわりの天使たちが一斉に手を伸ばして
チャンミンを止めようとした


チャンミンはそんな制止は目に入らず
耳には聞こえず


そして、チャンミンは落ちてくる2人を抱き抱えるようにして、地面に激しく背中を打ち付けて倒れた


「チャンミン!!!」


ユノの…声だ…

ユノ?助かったね?

子供の泣き声も聞こえる

2人とも…助かったんだね…


「チャンミン!!チャンミン!!」


ユノ…

愛してる…

どうか…やり遂げて

生きてやり遂げて…

教会を建て直すんだよね


「チャンミン!!!」

ユノの悲痛な叫び声


「大丈夫ですか?!」

ユノの声…

「大丈夫ですか?!しっかりしてください!」

ユノの声なのに…

チャンミンは違和感を感じて、ゆっくりと目を開けた


目の前にユノの顔があった

心配そうにチャンミンを覗き込むユノ


あ…ユノ…


チャンミンの視界の端に赤い風船が飛んでいくのが見えた

チャンミンはゆっくりと手をユノに伸ばそうとした


「あ!気がついた!大丈夫ですか?!」

「あ……」

「今、救急車が来ますからね」


ユノが周りを見渡して大きな声で呼びかける

「この方が誰かわかりますか?!
お知り合いの方!!」


え?


カン牧師がユノにささやく

「名前だけでも聞いておいて
後で必ずお礼をしなければ」


「お名前は…なんて言うんですか?!」

「………」

「話はできないですか、そうしたら無理しないで」

「………」

「助けてくださって、本当にありがとうございます!
あなたがいなかったら…」


チャンミンはユノに向かって伸ばそうとしていた手を
ゆっくりと下げた


ユノ…


こういうことか…

人間の運命に手を出した僕への罰は…


あなたを愛した罪深き僕への罰は


これか…


最も…僕が苦しむ罰とは…


それは…ユノ…あなたが僕を忘れてしまうこと…


チャンミンはゆっくりと目を閉じた
涙がチャンミンのこめかみに次々と流れ落ちていく


ユノ…

ありがとう


遠くで救急車のサイレンが鳴っている



あなたに出会ったあの夜

一緒に食べたスムージー

あなたの笑顔

「チャンミン」と僕を呼ぶ甘い声

僕を抱く力強い腕

優しい瞳

ボロボロの部屋

ユノが淹れてくれたコーヒー

笑いあった昼下がり


すべて…

とりあげられてしまった


チャンミンは薄っすらと微笑んだ


それでも…ユノは生きている


よかった…


ユノ、僕はあなたに恋をしたことを
後悔なんかしていない…


たとえ全能の神がそれを否定しても

あなたが僕を忘れてしまっても


僕は…あなたが大好き






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム