FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 20




チャンミンが目覚めると
隣にユノはいなかった

キッチンからリンゴの香りがしてくる

いい匂い

チャンミンは胸いっぱいにリンゴの香りを吸い込んで、ベッドの上に半身を起こした。


その気配にキッチンからユノが様子を見にきた

「気分はどうだ?今、リンゴ剥いてるけど」

「うん、食べたいです」

「皮だけ剥けば大丈夫か?」

「大丈夫です」

「ちょっと熱測らせて」

ユノはベッドに座り
チャンミンの顔を引き寄せると
その額に自分の額を当てた


目の前にユノの端正な顔立ちがある


綺麗な鼻筋がチャンミンの鼻筋をくすぐる


「んー熱はもうないみたいだな」

「ユノのリンゴのおかげ」

「そっか?それならいいけどさ」

ユノがそっとチャンミンに口づける


「なぁチャンミン」

「ん?」

ユノの瞳の奥にゾクっとするような熱を見た気がする


「抱きたい」

「……今?」

「ん」


ユノがチャンミンの髪を撫でる

「リンゴが茶色になっちゃいますよ」

「塩水につけてある」

「ユノ、そんなこと知ってるの?」

「ああ、それくらい知ってるさ」

そう言いながらも
もうユノは我慢できないようで
チャンミンのTシャツの中から、手をいれて
身体を弄っている

「ん……」

チャンミンがくすぐったそうにしながらも
その声は甘い


「お前だって、そんな声出して煽ってる」

ユノが笑うと、チャンミンも笑った

「そういうわけじゃないけど」

ユノがチャンミンを抱きしめた

「もうダメ」

「なにがですか…」

「我慢できない」

「フフ…実は僕もです」



あと

何回くらい…こうやってチャンミンを抱けるだろうか


ユノはチャンミンにもカン牧師にも黙っていたけれど

自分に死期が迫っていることを肌で感じていた


歩いている時に、ふと風が変わったように感じたり

すぐ側にある食べ物が遠くにあるように見えたり

朝起きたとき、鏡の中の自分が死顔に見えてギョッとする

もともと勘の鋭いユノはそういう些細な変化を
感じ取っていた

自分を取り巻く空気に死の匂いがしはじめている


隣でスヤスヤと眠るチャンミンの寝顔を見ていると
愛おしくて、離れる事が悲しくて

ユノは胸が苦しくてたまらない


俺が死んだら
地獄でもなんでもいいけど

チャンミンからは離れないと
子供のように暴れてやろう

神さまだろうが地獄の番人だろうが

この身を引き裂いてみればいい
それでも…俺はチャンミンから離れないから


ユノはもう一度チャンミンを自分の胸に抱きしめた




ユノとチャンミンで揃って教会へ行った

チャンミンは渋ったけれど、
ユノがなだめてやっとその気になった


チャンミンは少し緊張しているようだった。


「大丈夫だよ、チャンミン」

「うん…」

「俺が一緒だから」

ユノはチャンミンの手を握りしめた

「ですね…」

チャンミンは薄く微笑んだ

「僕も、子供たちに謝らなきゃと思って
風船をたくさん持ってきたんです」

「そりゃ、喜ぶぜ?
みんな風船大好きだからな」

「だといいけど…」

「まだ不安そうな顔してる」

「子供たちが…まだ僕を怖がって泣くんじゃないかって」

「大丈夫。俺が確認済みだ」

「確認済み?」

「そうだよ、この間さ、子供たちに言われた」

「なんて?」

「ユノヒョン、寂しそうだって」

「あ…」

「ボクたちもユノヒョンと同じ、寂しいって言ってた」

「………」

「チャンミニヒョンが来なくなっちゃって
寂しいんだって」

「そう…」

「なんかさ、みんなお前に母を感じてるように思える」

「母?」

「わかるんだ、お前、そんな感じのところがあるから」

「死神…ですよ」

「天使だよ」

「………」

「な?」

「それなら…嬉しいです…」


アハハとユノが爽やかに笑う

「ユノ…」

「ん?」

「僕ね、ユノと出会えて本当に幸せです」

「そうか?」

「恋ってとてもいいです」

「いいよな、恋って
毎日、すっげぇいい気分になれるよな」

「僕も、下界がこんなに幸せなところなんて
今まで全然気づかなかった」

「下界って言うなよなぁ」

「フフフ…僕にはね、下界ですから」

「まぁね」


「ユノ」

「ん?」


「僕を幸せにしてくれて、本当にありがとう」


チャンミンが、輝くような笑顔で微笑む


そんなチャンミンをまぶしそうにユノが見つめる


「どういたしまして」


2人の笑い声が青空に吸い込まれる



教会に入ると、カン牧師が2人に気づき
優しい笑みを浮かべながら近づいてきた

「チャンミン!」

「あ……」

「この間はほんとうに可哀想だったね…すまなかった」

カン牧師は半分泣いているような顔で微笑んだ

「いえ、僕も…なんだかすみませんでした…」

「君が謝ることないんだよ、ね?」

カン牧師はチャンミンの肩を優しく撫でる

「ありがとうございます…」


「チャンミ二ヒョン!!」

そこへ子供たちがやってきた

「あ…みんな…」


「この間はごめんなさい…
ボクね、ヒョンのこと怖くないよ?泣いてごめんね」

「ボクね、ミナが泣くから釣られて泣いちゃっただけだよ?」

「あたし泣いてないもん!」


チャンミンはみんなの頭を撫でた

「みんな、この間は僕がちょっと驚かせてしまって
ほんとうにごめんね」

「また遊びにきてくれたんだよね?
ずっと遊びにきてくれるよね?」

「いいかな?遊びにきても」

「あたりまえだよぉ!」

「よかった!今日はね、みんなに風船持ってきたんです」

わぁっ!!と歓声があがった

「遊んでいい?」

「はい、たくさん遊んでくださいね」

「ヒョン、ドーナツ食べた?」

「食べたよ、美味しかった。ありがとうね」


カン牧師が微笑む

「みんながチャンミンに食べさせてあげてと。」

「ありがとうございます」



ユノはチャンミンが子供たちとこうやって会話している
姿を見るのが好きだった


それはまるで天使が子供を見守っているようで

この教会の質素だけれど温かい煉瓦やステンドグラスと相まって

まるでルーベンスの描く絵画を見ているようだった


こんな

透き通るように美しい存在が

死神なんてウソだ…


ユノはなぜか泣きそうな気持ちになった


少しモジモジしながら、チャンミンがカン牧師の顔を覗き込む

「良かったら、あのドーナツの作り方を教えてもらえませんか?」

「もちろん!これから今日のおやつを作るところだから
よかったら手伝ってくれるとうれしいんだが。」

「よかった!どこまでお手伝いできるかわかりませんけれど、やらせてください!」


ユノは苦笑した

なんだか、嫁が実家に気に入られたみたいな
そんな男の気持ちだな…


ユノもまた「幸せ」を噛み締めていた

あの頃、毎日生きることに必死で
とにかくルカを守らなければと、そればかり気にしていたような気がする

あんな毎日をルカは楽しかったと思ってくれていたなんて

そして、今、俺はチャンミンに人生を輝かせてもらっている

いつ…なんどき…自分がこの生を終えてもいい
チャンミンと出会えたことは、俺にとって幸せだ

まったく…後悔はない…


カン牧師とチャンミンが、楽しそうにキッチンへ入ろうとする


「チャンミン!」


ユノが大きな声で呼ぶと


驚いたようにチャンミンが振り向いた


「ありがとうな、チャンミン!
俺も、すっげぇ幸せ!」


キョトンとしていたチャンミンがやがて破顔して
ニコニコと微笑み、頷いた


そして、ヒラヒラと手を振って
キッチンのある部屋へと入っていった


愛してるよ

俺の天使









にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム