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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 22



バタンと音がして
古い木のドアが閉まる

朝焼けの中、ユノが口笛を吹きながら
狭い路地を歩いて行く

屋根の上でウトウトとしていたチャンミンがハッとして目覚める

ユノだ

おはようユノ


チャンミンは屋根を伝って、ユノの後を追いかける


話しかけてもユノには聞こえず

ユノの目の前に立ちはだかっても
まったく気づいてもらえない


最初は泣いてばかりいたチャンミンもやがて諦め…
それでもユノを好きな気持ちは捨てられず

毎日こうやってユノの後をついて回った


ユノは偽造パスポートの仕事はしていたけれど
もう詐欺まがいのことはしていなかった

そのことがチャンミンは嬉しかった

きっと

自分と約束してくれたことを
心のどこかで覚えていているのだ

そう信じたかった


ユノはやはり、教会を建て直すことに尽力していた。

力仕事をしたり、寄付を募る活動をしたり
ボランティアに励んだり

この調子なら、ユノは地獄行きなんかにならない

チャンミンは安心した

これで…よかったんだ…


あなたの記憶からも、視界からも
僕は消えてしまったけれど


ユノが幸せなら…それでいい


たまに涙が溢れそうになる時は
チャンミンは空を仰いで耐えた

涙がこぼれないように
上を向くんだ

いつもユノの側にいて、ユノの家の屋根にいたけれど
夜になるとチャンミンはユノの家から離れた

今夜も屋根の上で膝を抱えて座っていると
だれかがユノの家にやってくる

綺麗な顔をした男の人
いつものテソンとかいう奴だ。

なにやらウキウキした様子で
ユノの家を訪ねてくる

「ボーイズエンジェルのテソンです」

「はーい、入ってー」


もう慣れ親しんだ様子で
そのテソンと名乗るその人は家に入る

楽しげな声や、笑い声が聞こえた後
やがて静かになる

ユノがその人を抱いている、と思われる時間
チャンミンはユノの家を離れる

たまらなく…悲しい

僕の…

僕だけのユノなのに…


チャンミンはそんな時
想い出の電波塔へと降り立ち、そのてっぺんから
ユノの住む町を見下ろす

あの夜

ユノと2人で見た夜景

ユノを後ろから抱き抱え、
僕はユノに甘えた

懐かしいな

あの時、僕は偉そうに
町の灯火ひとつひとつに物語があるなんて

カッコつけて語ったね
物知り顔でさ…

だけど僕は…
きっと何ひとつわかっていなかったんだと思う

こんなにもあなたが大事で大好きで
こんなにもあなたが恋しいなんて

僕は下界のことよりも
まずは自分の事がなんにもわかっていなかった

愚かな…僕…

泣いてはいけないと思いながら
チャンミンは鼻の奥がツーンとして

そして

涙がとめどなく溢れてくる


ユノ

愛してるよ

いつまでもずーっと

僕はあなたを愛し続けるだろうね


ふと、後ろから眩しい光が差し込んだ気がして
振り向くと

そこにはテミンがいた

テミンは相変わらず愛くるしい顔をして
真っ白な輝く羽根を羽ばたかせている


「テミン…」

「チャンミニヒョンは毎晩ここで泣いてたの」

「泣いてなんか…」

「泣いてるじゃないか、まったく」

「ほっといてよ」

「ほっとけないよ!」

「テミン…」

「ユノさんの後付け回してるんでしょ?」

「人聞きの悪いこと言うなよ
ユノさんのこと、見守ってるの!」

「楽しい?」

即答ができないチャンミンだった

「……た、楽しいよ
ユノさん、もう結婚詐欺もしてないし」

「ユノさんは今この時間なにしてるの?」

「………」

「?」

「知らないよ」

チャンミンが悲しそうに俯く


「誰かと…一緒なんだ?」

「ユノさんだって、聖人君主じゃないんだ
そ、その…」

「今頃、だれかを抱いてるってわけか」

「お金のやりとりがある相手だよ
そんなんじゃないよ」

「それでも、いつもその子を指名してるんだね」

「………」


「仕方ないよ、ヒョン
ヒョンと出会う前からの常連さんだしね」

「……」

「ヒョンが負けたわけじゃない」

「いいんだ、そんなの。
もう僕はそいつと同じ土俵に立てるわけじゃない。
勝ったとか負けたとか…ないよ」

寂しそうにチャンミンが微笑む

茶色の前髪を夜風が優しく撫でていく

それを見つめるテミンの金髪も夜風に揺れる


少しテミンの顔に影がさしたような気がした

気のせいかな?


「テミン、何かあった?」

「うん…僕ね、下界へ修行にでることになってさ」

「聞いたよ…研修でしょ?」

「そうなのかな。でもすごく過酷だって」

「そうなの?」

「うん、北極の片隅からスタート」

「え?」

「必要最低限のお金と着替えで。
そこで死を迎えることも多いって」

「死…があるの?」

「そうさ、修行として人間になるんだから
途中で死んじゃうこともあるよ」

「そんな過酷な修行を、なぜテミンがするの?」

「僕はね、ヒョン」

「うん」

テミンが大きくため息をついた

「ヒョンが思っているより堕天使なんだよ」

「知ってる」

チャンミンがニコニコと笑った

「否定してよ、そこ!」

テミンも笑った

「でも、よかったね、テミン下界行きたがってたでしょう?
僕にイジワル言っていたのも、下界でユノに恋していた僕が羨ましかったからでしょ」

「バレてた?」

「うん」

またテミンが笑った

どこか悲しい微笑み


「ん?でもやっぱり辛そうだから
イヤになった?」

「そういうわけじゃないんだ」

「テミン何かあった?
なにか悲しそう」

「………」

「話して楽になるなら、聞くよ?」

「チャンミニヒョン、僕の代わりに下界へ修行しにいかない?」

「えっ?」

「推薦しちゃだめかな」

「な、なんで?」

「こんなこと言うのもなんだけど
チャンミ二ヒョンなら、僕の代わりとして認めてもらえると思うんだ。」

「掟を…破ってるから?」

「そう」

「だけど…」

「たしかに、人間としてユノさんに会える確率は
ほとんどない」

「……」

「ほぼ無一文で、北極の片隅から空も飛べず、スタートだからね。こうやって、見守ってるほうが楽しいかもしれない」

「………」

「だけど」

「ん?」

「僕ね、やり残した仕事があって…」

「そう…なの?」


「大事なともだちを…きちんと天国に送りたいんだ」



「……ともだち?人間?」


「うん」


「天国へ…行くんだ?」


「優しくて温かくて大好きなともだち。
みんなからとても愛されてね」

「………」


「歌が上手くて、才能もあった。
誰よりも音楽を愛した、僕の最高のともだち」


テミンが優しい思い出を辿るように微笑む


「テミンはその友達が大好きなんだね」

チャンミンが優しくテミンの金髪を撫でた


「うん、大好きだよ」

テミンの白い羽根がキラキラと輝いている



「迷わないように、天国まで僕が道案内するんだ」

「……テミン」


チャンミンは考え込んでいた

「ヒョン?」

そして、顔を上げた時には
チャンミンのその表情は明るかった



「認められたら、やってみようかな」

「ヒョン…」

「ユノには会えないかもしれないけど
同じ人間として、広い下界で同じように時を刻んでるなんて…とても素晴らしい気がする」

「人間て死ぬ気でなんでもするよね
本気になったら。」

「空も飛べないのにね」

「うん、どうせなら
ヒョンも死ぬ気でユノさんを探しに行ったら?」

「死ぬ気で?」


「ボヤボヤしてるとあっという間に時間がたって、人生終わってしまうからね?」


「やって…みようかな」


遠くの空が白み始め

藍色からピンクへと絶妙なグラデーションを描いていた








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