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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 18



それからのユノは何か吹っ切れたように爽やかだった

チャンミンにも優しくて
子供たちにも優しい笑顔を向けている


チャンミンは思った


ユノは強いのだ

ユノはチャンミンが想像しているよりずっと強い人間だった。

大抵の人は自分の死期が迫っていることを知れば
焦り、取り乱し、悲しむ…

とても他人の気持ちなど思いやる余裕などない

チャンミンはそんな人間をたくさん見てきた

ところがユノは最初多少の戸惑いは見せたものの
今や、その瞳には強い決意さえ宿る

残りの人生をチャンミンと過ごし
日々を輝かせようとしている

チャンミンに向けられたユノの微笑みは
とても綺麗だった


潔いユノはとても眩しく美しい



そして相変わらず、ユノは教会の建て直しに奔走していた

「資金…不足ですか?」


大金を稼げそうな獲物を逃してしまったユノ

結婚詐欺をやめさせた手前、チャンミンは少しだけ気まずい

「あーそうだな、たしかに資金不足」

「僕が…」

「お前は気にすることないよ。
悪いことした金で建てた教会なんて、確かによくない。
それはチャンミンの言う通りだよ」

「うん…」

「意外だろうけど俺さ、ちゃんと保険かけてるんだ」

「保険?」

「ああ、死亡保険ってやつ。
女だましてた時、成り行きでどうしてもかけなきゃならなくなってさ。
俺が死んでも困るやつなんていないんだけど」


「え?その保険金で…建て直そうと思ってるの?」

「そう。この間、俺に何かあったら教会に全部寄付できるようにはしてきた」

「ユノ…」

「それをカン牧師に話しておかないとな。
それまでに見積もとっておかなきゃなんない」


ユノは自分がこの世から去ったあとの事を
いろいろと考えていた

本当に強い人だ

チャンミンの胸が苦しくなる

思い立って、チャンミンは黒いバインダーを取り出し
ユノについて書きはじめる

ユノはその姿を見つめていた

そのバインダーは、先日テミンに内緒で見せてもらったあれだ。

「それ…」

「あ、これは…あの…なんていうか…
ユノの事を…書き留めておくものなんです。」

「企業秘密?」

「そう…ですね。
内緒にしてることが多くてごめんなさい…」

「いいよ、気にするな」

チャンミンがユノをより良い場所に導くための
大切な仕事だ

「俺のことがいろいろ書いてあるんだろ?」

「まぁ、そうです」

「イケメンに描いてくれよ」

「絵じゃないですよ?」

「似顔絵とか写真がないとわからないだろ」

「どう…かな…」


地獄へ導く死者の似顔絵なんて描いたことない

でも、いいかもしれない

チャンミンはササッと簡単にユノの似顔絵を描いてみた

うん

似てる

我ながらユノのいいところを描いてると思う

スッとした顎のラインが耳まで綺麗な鋭角を作る


「ねぇ、チャンミン、見せてよそれ」

「ダメでーす」

「ふん」


これは…あなたが地獄の審判を受ける時
僕が闘える唯一の武器なんです…


え?

武器?

僕は…

何と闘おうとしているのだろう


地獄の門番と?


まさか…全能の神と?


チャンミンはそのバインダーをふところに仕舞うと
そっと立ち上がった

「出かけてきます」

「どこへ?」

「言えないんです。ごめんなさい」

「……天使の秘密?」

「…はい」

「………」

「……すぐ戻ります…」

「わかった。早く帰ってこいよ」


ユノは少し難しい顔をしていたけれど
吹っ切ったようにそう言ってくれた

「早く戻ります。ヤボ用だからすぐ終わります」


「俺、公園の木の下でずっと待ってるから」


なんだか子供のようなユノが可愛い

「公園?教会の近くの?」

「そう」

「わかりました。帰って来るまでずっと待っててくださいね」


チャンミンはそろそろ最終段階に入っていることを
なんとなく感じていた

報告書をきちんと仕上げなければならない

天国は無理だとしても
ユノがあまり苦しまないように

僕がユノにしてあげられる
唯一のことなのだから


チャンミンはユノと別れると仕事に没頭した

テミンがそんなチャンミンの様子を見にきた


「チャンミ二ヒョン、久しぶり。
がんばってるね」

「うん、そろそろかな、と
そんな気がしてならなくて…」

「だったら、こんなところで仕事なんかしてないで
ユノさんの側にいなきゃ」

「でも…」

「死後のことより、生きている時間の方が大切でしょう」

「テミン…だってこれは僕の仕事で、
ユノにしてあげられるただひとつの事なんだよ」


「………」


「テミンらしくないね、そんなこと言うなんて」


「ごめん…なんか天国とか地獄とかより、生きている時間の方が大切に思えてきて」

「たしかにそうだけど…」

「短い時間でも離れずに一緒にいなきゃ
死んでしまったら、たしかに導くことはできるけど
結局それでお別れじゃないか」


テミンの言葉にチャンミンが動揺を見せた

「そんな!そんなこと言うなよ!」


チャンミンは取り乱した

それはチャンミンが考えないようにしていたことだった

たとえ、天国に行けるとしたって
ここで僕とユノはお別れ

ユノをよりよく導くことに没頭して
そのことは頭から排除するようにしていた

それをテミンから改めてつきつけられて

抑えていた悲しみがチャンミンの胸に溢れ出てきた

「お別れなんて…頼むから言わないで」


「このままだとチャンミ二ヒョンは、地獄の門番と一悶着ありそうだし、それは余計ユノさんにとってよくないことになるんだよ?」

「わかってるよ!」

「ヒョン…」

「僕だって…わかってるよ!」

「……」

「……」

「テミン…ごめん」

「……」

「でも…大好きなんだ
ユノのことが大好き」

「……」

「できればこの先も生きて
やりたい事をやらせてあげたい
せめて教会の建て直しを全うさせてあげたい」

「わかるよ…ヒョン…」

「……今、僕は出来ることを一生懸命やるしかない」

「そうだね、僕もごめん。
ヒョンの気持ちわかっているのに」

チャンミンは結構な時間が過ぎている事に気付いた

「あ、僕、帰るよ。ユノが待ってる」

「うん、ユノさんを、ユノさんと過ごす時間を大事にね」

「ありがとうテミン」


ふと、チャンミンが下界を見下ろすと
激しく雨が降っていた


ユノは家に帰ってしまっただろうな。

温かいスープでも作ってあげようか。


そう思い、チャンミンはユノの家に降り立とうとしたその時

公園の木の下で、びしょ濡れのユノが立っているのが
目に入った


まさか


雨の中ずっと待っていたっていうのか?


チャンミンはびっくりして、ユノの元へ降り立った


木の下で、俯いてびしょ濡れになっているユノは
いつもの頼もしい男らしさは感じられず

捨てられた子犬のように見えた

「ユノ!なんで?!」

チャンミンの呼びかけに
ユノはゆっくりとこちらを向いた

「チャンミン…」

濡れた長い前髪が、ユノの整った顔にかかって
雫をたらしている

濡れたまつげ、寂しそうな瞳

チャンミンは思わずユノに駆け寄り、
その冷えた身体を抱きしめた

「ユノ!なにやってるんですか?!
こんなに濡れて」


「だってさ…」

ユノの声はとても小さかった
そして心なしか震えていた

「だって…チャンミンが必ず帰ってくるって
そう思ってさ…」

「だからって!」

「俺、ここで待ってるって…約束したから」

「ユノ!」

チャンミンはユノの身体をさすった

「良かった…チャンミンが帰ってきてくれて」

そう言って、ユノは力なく微笑んだ

「ユノ…」


「なぁ…俺…いつ死ぬの?」

「え?」

「俺、いつまでチャンミンと一緒にいれるの?」

「………」

「俺が死んでも…チャンミンは俺の側にいてくれるよな」

「……」


チャンミンはユノの顔を見つめた

そこにはいつもの強く頼もしいユノはいなかった

冷静に保険の話なんかして
自分がいなくなった後の話を淡々としていたけれど


怖かったのだ

ユノは実は怖がっていたのだ

そんなユノの心の底を
どうして自分は見失っていたのだろうと
チャンミンは後悔した


気持ちが強い反面
人一倍寂しがりやでもある

この愛しいひと


「僕はあなたの側にずっといます
離れませんから!」


チャンミンはそう言って、またユノを力強く
抱きしめた…







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