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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 17




ユノはチャンミンを待ち続けた
スマホに連絡をしても、なんの返答も呼び出し音すらない。

時間がないというのに…

ユノとしては、死期が近づいているという事が
実感のない事実として焦りを生む。

やるべきことをやらないと、そんな気持ちは
実はあまり死について考えたくない、ということの裏返しだった。


ユノは毎日教会へ通った。

今日も教会で打ち合わせをしていた


どうにか、寄付の範囲内で教会を立て直せないものか
そんな話が堂々巡りとなって、一向に前に進まずにいた


ユノは神経を張り巡らしていたけれど

チャンミンは側に現れない


しかし


それは教会を出た時だった

人の気配がして、ふと上を見上げると
教会の塔に付けられた十字架の横に

チャンミンが立っていた


「あ……」

チャンミンが泣いているような表情でユノを見下ろしている


「チャンミン!降りてこいよ」


チャンミンはイヤイヤと首を横にふる


「いいから!ほら!降りてこいよ」

ユノは片手をチャンミンへ差し出した


「………」

「いいから、おいで、ほら」

「………」


「俺が心配で来たんだろ?あの金髪の天使から聞いただろ?
お前が降りて来ないと、俺、マジだぜ?」


それを聞いてチャンミンがソワソワとしはじめた。

チャンミンを困らせたくはなかった…でも


「わかった…もういいよ」

ユノが諦めた風に踵を返して歩き出した


「あ…」

チャンミンが屋根伝いにユノを追いかける

ふと、ユノが立ち止まって、またチャンミンを見上げる


「ずるいぞ、お前ばっかりそんな上から」

「だって…」

「心配してくれてんだろ?俺のこと」

「脅しですよ!あんなの!」

「俺、マジでそうするから
お前が消えたら、会うために悪いことして死んでやる」

「そんな…」

「だから、降りておいで。教会へ行こう」


「…僕はもう教会へは行かれないよ」


「………」

「みんなが…怖がるし…」

「………」

「………」

ユノはひとつため息をついた


「俺の最期を…」

「……」

「看取ってくれるんだろ?」

「……」

「俺、だから死ぬの全然怖くない」

「そんな…」

「いいよ、別に」

「良くないでしょう」

「仕方ないじゃん、そういう運命なんだから」

「………」

「そういうのって、普通お前が言うんだろ?」

「………」

「あなたはもうすぐ死ぬんですって、
仕方のないことだから、諦めてくださいって
お前が言えよ」

「……僕は…まだ半人前なんです」

「俺だって半人前だよっ」

ユノはスタスタと歩き出した

「あ、ユノ待って…」


結局、屋根伝いにユノの家まで来たチャンミン

そんな姿にユノは次第に可笑しくなってきた


しびれを切らして、ユノが屋根の上のチャンミンを見上げた

「なぁ」

「……」

「降りておいで…美味しいもんあるから、一緒に食べよ」

「美味しいものって?」


ユノはチャンミンの反応に苦笑した
美味しいものに興味を示すところがなんとも可愛くてたまらない

早く降りてくればいいのに


「教会でハチミツとレモンのドーナツもらったんだ
保育士さんの手作りですげぇ美味い」

「はちみつ…」


「コーヒー淹れるから、いい加減降りてこい」

ユノはそう言い捨てると、さっさと家の中に入ってしまった


「………」


チャンミンはしばらく考え込んでいた

そのうち、コーヒーのいい香りがしてきて
もし、ユノが自分の分も淹れてくれたなら
飲まないともったいないよね…


そして、そっと地面に降り立ち
ユノの家の中の様子を伺がおうと、ドアに手を当てた

と、同時に

「うわっ!」

いきなりドアが開き、チャンミンは中に引っ張り込まれた

バタンと崩れそうにドアが閉まると
目の前にユノの可笑しそうな笑顔があった

「ドーナツにつられたな」

「ちがっ!…そういうわけじゃないよ」

「いいからいいから」

ユノはチャンミンの手を引いて
家の中へ連れ込む

いつものボロ屋の中の質素なテーブルと椅子

そのテーブルの上に美味しそうなドーナツが
皿に盛られていた

「座ってチャンミン。コーヒー入ったからさ」

「はい…」


チャンミンは静かに椅子に腰かけた

ユノがチャンミンの前に白いマグカップを置き
コーヒーを淹れてくれた。

「食べて、ほんと美味しいから」

「はい…」


なかなか手を出さないチャンミン

ドーナツにつられて降りてきたのかと思いきや
そういう訳ではなさそうだ

「これさ、教会の子供たちが
お前に持って行ってあげてほしいってさ」

「それは…ないでしょう」

「チャンミン…」

「そんなわけはないです
僕のためにユノはそんなウソ…つかなくていい…」

ユノは大きくため息をついた

「俺がそんな気遣いをする奴だと思うか?」

「………」

「チャンミニヒョンは怖くないのに
みんなで泣いちゃったって…申し訳なさそうだったぞ」

「…それは…仕方ないです」

「後悔してるんだ、子供なりに」

「僕が教会に出入りしたのが間違いだったんです」

「チャンミン…」

「僕が行くべきところじゃなかった。
ちょっとみんなが仲良くしてくれるから、僕、調子に乗ってしまって」

「そんなことない。みんなお前が大好きだよ」

「いいえ、僕が勘違いしてたんです」


「いい加減にしろ」


少し声が大きくなったユノに
チャンミンは一瞬肩を竦めた

ユノの瞳は真剣だ。

「いつまでも拗ねてんなよ」

怒られて凹む子供のようなチャンミンの姿に
ユノは大きくため息をついた


「あのね、チャンミン」

「………」


「俺も…ほんと、ごめん」


「ユノが…どうして謝るの。
隠し事していたのは僕でしょう」


「チャンミンは俺にとって、死神なんかじゃない」

チャンミンの瞳が泳ぐ…

「チャンミンは俺の天使なんだ。
そんな真っ黒な服を着ていてもね」

「ユノ…」

「俺、自分が死ぬこと受け止めたから」

「え?」

「いや、それはウソだな。
受け止めてはいないけど、なんていうか、ピンとこなくて。具合が悪いわけでもないからさ」


「わかります。」

「でも、俺には時間がないんだ。そうだろ?」

「………」

「だったら、そんなチャンミンのつまらなそうな顔は見ていたくない」

チャンミンはそっと顔をあげた


「俺さ、小さい頃からいつ死んでもおかしくない生活だった。」

「………」

「今日一日無事に生きられたら御の字だと思ってる」

「………」

「今でも、毎日精一杯生きてる
それこそいつ死んでも悔いが残らないように」

「ユノ…」

「俺は、悪いことをしてきたのは事実だよ。
生活のためとはいえ、何人も女を泣かせたし
俺が手配したパスポートで何か犯罪の手伝いをしてるかもしれない」

チャンミンの目の前のコーヒーから
湯気が消えている

「地獄だってなんだって
俺をそこへ送り込むことがチャンミンの仕事なら
俺は喜んで受けるから」

「そんな…ユノは地獄を知らないからそんなこと」

「いいよ、お前がそばにいてくれるなら」

「ユノ…」

「だからチャンミン、それまでは笑ってくれ
俺にそのとびきりの笑顔を見せてくれ」


ユノはそんな風に言ってくれてるのに

チャンミンは口をへの字に曲げて泣いた

笑顔でいなければと

ユノのために笑顔でいなければと思うほどに

涙が次から次へと溢れ出てくる


こんなんで…ごめん


ユノはレモンの香りのドーナツを一口ちぎると
泣いているチャンミンの口元に持ってきた


「あーんして、チャンミン」

チャンミンはためらいがちに
少しだけ口元を開けた

「もっと、あーんて」

ユノが大きく口を開けてみせる

チャンミンはもう少し口元を大きく開けて見た

ユノはそこに優しくドーナツを入れた


「美味いか?」

チャンミンがモグモグと口を動かしながら
うんと頷くと

ユノが優しく微笑んだ





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