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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 16




ユノは一睡もせず、朝を迎えた

朝と言っても、まだやっと空が白みはじめた状態で
ユノはベッドの上で座ったまま、一晩中ほぼ動かずに過ごした


一時、心の中に嵐が吹き荒れたようで
そして今、嵐が去ったあとの静けさが訪れている

そんな気持ちの状態だった


カン牧師が心配をして、何度も電話をかけてきている
連絡をしなくてはいけないと思っているけれど

今は考えることがたくさんありすぎて
返事をすることはできない


自分が近々死ぬのだという

しかも、どうやら天国には行けそうにないと。


それらは、まるで他人事のようで
へぇーそうなんだ、なんて思うだけで、
自分のことだとは受け入れ難い

でも、いつかは人間は死ぬ

それは誰にも平等に訪れる
権利であり義務だ

自分の場合は、死後、愛するチャンミンが迎えに来てくれることになっているらしい

それってどうなんだ?

そんな幸せはないはずなのに
納得なんて行くわけない


大きく深呼吸をして、ユノはベッドから起き上がった

気持ちは落ち着いている

まずは

死ぬとかなんとか、それを考えるのはやめる

何をどう考えたところで
気持ちにピンと来ないのだ。
身体のどこかが具合悪いわけでもないし、
この状態で死ぬと言われても…

だから死を迎える恐怖というのは
感じられない


そしてなにより自分はチャンミンを愛してる

今はその気持ちだけがはっきりとしていて
昨夜、チャンミンをひどく傷つけたことが悔やまれてならない


死神だろうと大魔王だろうと。
俺は…深く愛している


チャンミンは…どうしているのだろうか


教会の子供たちに泣かれてしまって
悲しかったはずだ

孤独と闘っているのではないだろうか
ひとりどこかで声を殺して泣いているに違いない



玄関でカタッと音がして
ユノは思わず叫んでしまった

「チャンミン?!」



ユノは玄関を覗いてギョッとした


「こんにちは」

「ちょっ…え?…なに?」

明るい笑顔で挨拶をしたその存在は

天使…だ…

金色の髪、白い肌、大きな白い羽根、
可愛い笑顔

これが天使でなくてなんだろう

「テミンと言います。人間ではないんですけど
ユノさんからは僕、見えますよね?」

「ああ、えっと…天使?」

「あ!わかりますか?」

「わかる…よ。わかりやすすぎる」

「あっ!」

テミンは何かを思い出したように頭を押さえた

「え?」

「輪っか忘れちゃった。天使の輪っか」

「あ…」


大きな羽根をバタつかせながら
家の中に絵に描いたような天使がいる

この状況…

「輪っかがあったほうがそれっぽいかなって」

「あ…いや…なくても十分それっぽいよ」

「そお?」

「コスプレ?…じゃないよね?」

「ユノさん、僕たちが見えるんでしょ?」

「俺の名前…知ってる?…僕たちって…」

「チャンミ二ヒョンが、ユノさん担当だから」

「チャンミンを…知ってるのか?!」

「仲間だからね」

「今…どこにいる?!なにしてるのか知ってるか?」

「うん、落ち込んじゃってもう見てられない感じ」

「はぁ…そうなのか…」

ユノは大きくため息をついた

「仕方ないよ…」

「側に行ってやりたい、どうしたらいい?」

「それはできないんだ、ごめんね、ユノさん」

「じゃあ、チャンミンにここに戻ってくるように言ってくれないか?
俺が話したがってると伝えてほしい」

「それが出来そうにないから、僕が来ました。
もちろんチャンミニヒョンには内緒でね」

「内緒?」

「チャンミ二ヒョンは僕がユノさんと会うのはイヤみたいで…」

そう言って、テミンはクスクスと笑った

「え?なんでだ?」

「僕が可愛いから、ユノさんが僕を好きになったらイヤだって」

「………」

一瞬、ユノが真顔になった

「?…ユノ…さん?」

そして突然大きな声をあげた

「今すぐ!どうしてもチャンミンに会いたい!」

「あーそれは申し訳ないですけれど
さっきも話したように」

「じゃあ、俺から会いに行く!
死ねばいいんだろ?俺。もっと悪さして死ねば
チャンミンに会えて、地獄へ連れて行ってくれるんだよな?」

「ほとんど脅迫ですね。」

「方法がほかにあるか?」

「それ以上悪さしたら、担当はチャンミンじゃなくなりますよ」

「それは大いに困る」

「これ」

「?」

テミンはユノに黒いバインダーを渡した

「読んでみてください。
チャンミニヒョンがあなたの事を書いた報告書です」

「?」

黒いバインダーを開くと
几帳面な字がびっしりと書いてある


本当はとても優しい人…

すべての悪事は教会の修復のため

幼い頃、唯一の友人を亡くしている
その事で自分を責めている

悪事については、彼なりのルールがあり
それは相手を思いやる気持ちに溢れた理念に基づいている

偽造パスポートについては、破格の金額で作成してやり、感謝されている
ある意味、人助けの域に達する

問題は国の制度によるものではないかと推測される

律するべきはチョン・ユンホではなく
子供が悪事を働かざるを得なかった世の中にあるかと…



ユノはパタリとバインダーを閉じた

「これ…これで、俺…」

「おっしゃりたいことはわかります」

テミンがユノからバインダーを奪い取った

「こんな稚拙な報告書…」

テミンがイラついているようだ

「あのさ…買い被ってるよ、これ。
俺、こんないいヤツじゃないし…
報告書としては…」

「パンチがまったくありません。
これで、地獄の門番が、あなたを天国へ追い返すとは思えませんね」

「………」

「だけど…チャンミ二ヒョンが…どれだけあなたを愛してるのかは…十分に伝わります」

「俺…」

「……はい」

「小さい頃から盗みをしたりしてたけど
仕方のないことだと思ってた」

「まぁ、生きるためだったでしょうから、多少は」

「だけど…
やっぱりそれは甘えってやつだな…」

「僕…それをチャンミ二ヒョンに話したんです」

「え?」

「あまりにヒョンがあなたをかばうから…」

「………」

「どれだけ悲惨な子供時代を送っても
悪い事をしない大人になる人間はいくらでもいるんだからって」

「………」

ユノは目を閉じて静かに言った


「その…通りだ…」

「でもね…ヒョンはもう理屈が通らなくて」

「理屈?」

「ユノさんのことが好きで好きでたまらないんだと」

「……チャンミンが…」

「どうにかして助けたい一心で…」

「……」

「だけどどうにもならず…
結局、みんなから忌み嫌われて…」

「………」

「………」


「俺…いいよ、地獄行きで」


「ユノさん…」

「チャンミンが連れて行ってくれるなら
それでいい…」

「………ま、このままだと、そうなるんですけれど」

「チャンミンは仕事を全うすればいいんだ。
もう、この報告書だけで…俺は十分」

「これで?」

「最高のラブレターってやつだ」

「………」

「だから、脅迫でいいよ。
俺はチャンミンに会いたがって、最後に悪さして死ぬって言ってるって…そう、伝えてほしいんだ」

「……」


「俺が待ってるって…伝えてほしい」


「わかりました」

テミンはその白い羽根を静かに閉じた


「ユノさん…」

「ん?」

「僕からひとつだけ」

「……」


「ルカくんが…あなたをとても心配しています」


「え……」


「安心して…ルカくんは、僕が天国に連れて行きました」


ユノの瞳に涙が溢れ出した


「ルカは…天国へ?」

その声は震えて…最後は涙を含みさらに震えた


「あなたが自分を責めているのではないかと
ルカくんが心配しています」

「う……ううっ…ルカ…」

ユノは思わずひざまづいた


「ルカくんはあなたに感謝しているんです
あなたと過ごせて、あんな短い人生でも楽しかったと…」

「………そんな…」


ユノは膝に手をつき、その綺麗な瞳からいくつも涙が溢れて床に落ちた


「天国へ行くことを…諦めないでください
そして、最後の1日までチャンミ二ヒョンと人生を楽しんで」







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