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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋15




パク牧師は怯えているようだった


ユノが訝しげにパク牧師を見る


「死神だなんて…チャンミンのことを言ってるんですか?」

「………そうだ」

パク牧師はハッキリと言った


「黒い服は着てるけれど…決して死神なんかじゃない」

ユノはそう言い捨てるとチャンミンを追った


「ユノ!待ちなさい」

パク牧師もユノを追った


居間を出たチャンミンは、教会から出ようと
施設の建物の中を走り抜けドアを開けた


一刻も早くここから立ち去りたい!

ユノに僕の事を知られたくない!


チャンミンが飛び込んだのは子供たちの寝室だった

そこには、カン牧師が子供達に昼寝の準備をさせていた

みんながびっくりして、チャンミンを振り返る


「君は…チャンミン」

カン牧師が驚いてチャンミンを見つめた


チャンミンはいつもの穏やかなチャンミンではなく
どこか刺々しく、不穏な空気さえ漂わせている

そこには、いわゆる死神らしい暗さもあった


「あ……」


チャンミンも声が出ない

自分の身体からどんなオーラが出ているのか
自分が一番よくわかっていた

今の自分は、亡き人を地獄へと連れて行く
恐ろしい存在


今まで隠していた
もう1人の自分



手を繋いでくれた子供たち
膝に乗ってくれた子供たち


その子供たちが怯えたようにチャンミンを見る


とたんに


みんなが一斉に火がついたように泣き出した

「あ…ごめん…」

突然の泣き声の大合唱に
チャンミンは後ずさりした


ワンワンと泣き叫ぶ子供たちは
しっかりとチャンミンを視界に捉えている


それは

よくある…光景だった

無垢な魂の子供たちにはチャンミンの姿がみえる
その黒装束にどこか地獄と死の匂いがして

それを敏感に察知した幼児が泣き叫ぶ

悲しいことに
チャンミンにとってはよくある光景だった

慣れていた

けれど

それがこんなに悲しいことだとは
今まで感じたことがなかった


僕が…そんなに怖い?


この間は僕の膝に乗って、ユノが読む絵本に
一緒に耳を傾けていた子供たち


そんなに…僕は恐ろしい?


やがて、ユノがチャンミンに追いついた


尋常ではない子供たちの鳴き声にユノも驚いた


「なにが…あったんだ?」

「ユノ…」


チャンミンの表情は今までにない悲しみに満ちたそれだった。

「チャンミン?」

なぜ…そんなに悲しそうな顔をする?


「僕…」

子供たちを保育士に渡したカン牧師が
チャンミンのところへやってきた

「君は早くここから出て行きなさい」

「………」

「ちょっ…チャンミンをなんで追い出すんだ」

そこへパク牧師が駆け込んで来て凄む

「死神が…ここに用があるはずない
地獄へ落ちるような人間はここにはいない」


チャンミンがその言葉を遮った

「違う!僕は…死神なんかじゃない!
それは人間が作った幻だ…僕は…ただ」

「チャンミン?」

ユノは意味が飲み込めない


「僕は…ただ…」

カン牧師がチャンミンに優しく告げる

「後は…私に任せて…君は外に出なさい」


チャンミンは涙の溜まった瞳でユノを見つめた


ユノは驚いたように、そして事情が飲み込めない様子で
チャンミンを見つめ返す


チャンミンの瞳に涙が溢れて来て
そんなユノの顔も歪んで見えなくなってしまった


さよなら、僕のユノ


僕はここに来てはいけなかったんだ

ユノをいつも屋根の上から見つめ
日々の報告書を書いていればよかったんだ

僕は誰からも歓迎されないのに
少し調子に乗ってしまった…


チャンミンはそっと立ち上がり
みんなにお辞儀をした

「騒がせてしまってすみません
僕が立ち去れば、子供たちは泣き止みますから」

最後は涙声だった

「チャンミン、待てよ」

ユノがチャンミンを追うとするのを
カン牧師が止めた


チャンミンは隙をついて
姿を消してしまった

「あ!チャンミン!」

それでも尚、チャンミンを追おうとするユノの腕を
カン牧師が掴む


「ユノ、彼には大事な使命があって
それをお前には知られたくないはずだ」

「だから?」

「そっとしておいてやれ。
行かせてやれ」

「どれだけ大事な使命か知らないけど
チャンミンだって俺にとって大事な存在なんだよ」

「ユノ…」

ユノはチャンミンを追いかけ、教会の外に出た

カン牧師もそれを追って外に出た


チャンミンは教会の一番高い塔の上に立ち
ユノとカン牧師を見下ろしていた

見たことのない悲しい顔…


「チャンミン!降りてこい!」

「………」


「ユノ、わかってやりなさい。
彼はユノにすべてを話すことはできない」

「牧師さまは知ってるのか?
なら、どうして俺が知ったらダメなんだよ!」

「………」


チャンミンは寂しそうに2人のやりとりを見ている

それをカン牧師も哀れんで見上げる


「あんな綺麗な存在が死神だとか、
本人だって否定…」

そこまで言いかけて
ユノはハッとして口をつぐんだ

「え?」

「………」

「俺?」

カン牧師が悲しそうにため息をつく。

「俺を迎えに来たってこと?」

チャンミンがギュッと目を閉じる

そうだよ

ユノ…


「ユノ…これは誰にもどうにも出来ないことなんだ」

カン牧師が宥めるように穏やかに告げる


「え?なに?俺、死ぬの?」

「ユノ…」

「ウソだろ?俺、ピンピンしてるぜ?」

「……」


チャンミンが静かに降りて来た


黒いコートがマントのようにひるがえり
綺麗に降り立つ


「ユノ…ごめんね…黙ってて」

「チャンミン、君は悪くない。仕方のないことなんだ」

「俺、死なないよな?」

「………」

「おかしいだろ?え?いつ?」

「……言えません。でも、近々です」

「え?」

「……」

「事故かなんか?」

「言えません…」

「言えよ」

「ごめんなさい…言えません」

「言えよ、チャンミン!」

「ユノ、やめなさい。
彼を責めてもどうしようもないんだ」

カン牧師がユノの肩を押さえた


「俺を迎えにきてくれたってわけか?」

ユノがイラついたように笑う


「そうです、ユノ…」

それでもチャンミンの表情はどこか諦めたように落ち着いている


「で?なんでお前は黒装束なんだ」

「………」

「まさか」

「………」

「死神が俺を地獄に連れて行く、の図か?」

「………」

「あ、そういうこと?」

「………」


「俺が…あー詐欺を働いたからか?
小さい頃から盗みをしてきたからか?」

「………」


「じゃあ、聞くけどさ」

「………」

「俺はどうすりゃよかったんだ?
ひもじい思いをしながら、死ねばよかったのかよ?」

「………」

「お前、知ってて…なんで俺に近づいた?
査定でもしてたか?俺がどの程度の悪人か」

「ユノ、落ち着きなさい
教会へ戻って、私と話をしよう」

「話してどうなる?
話をしたら、俺は天国へ行けるのか?」

ユノは自分を見失っていた

普通に続く毎日がいきなり遮断されるという信じられない話。
しかも死神が迎えに来て、地獄行きと。


突然の事実に驚愕し、自分の死を受け入れられず
ましてや、天国に行かれそうにもないことに理不尽さを覚え…

ユノは取り乱した


落ち着きなく髪をかきあげ、ウロウロと歩き回る

そんなユノをチャンミンは悲しそうに見つめていた


チャンミンは何もできない

自分の死期が近いことを知り
それを受け入れられず、混乱しているユノを

愛するこの人を…

自分は助ける事も癒すこともできない


それどころか、愛するその人の死を待ち
使命を全うしなければならない


生きていてほしい
生きて幸せになってほしい

願わくば、自分が幸せにしてあげたかった

いつまでも一緒に…いたかった
それが本音

チャンミンの胸は鉛のように重くなった

「ユノ…」

戸惑いを隠せず、イラついた表情で
ユノがチャンミンを見た

「なんだよ」

「ごめんね、ユノ」

「なにがだ?何を謝ってる?」

「黙って…いたこと」

「お前が死神で…俺が死ぬのを待っていることか?」

「違う…僕は死神じゃない…」

「じゃあ、なんだ?」

「僕がなにかは…僕もわからない」

「いいかげんな事を言うな」

「……ユノ…」

悲しそうにユノの名を呼ぶチャンミン
ユノは思わず視線を逸らした


「………」

「さようなら…」


小さくつぶやいて、チャンミンが静かに去って行く

黒いコートの裾がひるがえり
黒いブーツがカツと音を立てて向きを変えた


「………」

ユノはその声を背中で聞いた






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