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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 14



チャンミンは羽根のついたペンで
黒いバインダーにサラサラと何かを書き綴っていた

真剣な面持ちで、一心不乱ともいえる様子

そんなチャンミンをテミンが心配そうに見つめている

「チャンミ二ヒョン…」

「………」

「ひとつだけ忠告があるんだ」

ふと、チャンミンがペンを走らせる手を止めた

「忠告?」

「聞いてほしいんだ…僕を親しい弟だと思うのなら」

「………」

その難しい表情を見ると、チャンミンはあまりテミンの話を聞きたくはなさそうだった。

でも…

と、テミンは思った。


「たとえ、どんなに辛い子供時代があったとしても
悪事を働いていい理由にはならないよ」

「……ユノのこと?」

「うん…」

「じゃあ、親もお金も持たない子供が生きていくにはどうすればよかったの」

「小さい時は仕方ないかもしれないけれど
大人になったら、悪事は悪事だ。」

「ユノは…教会の施設を建て直そうとしたんだよ
もうボロボロだからね」

「だから?」

「たくさんのお金が必要だったんだ」

「だからって、女性たちの…」

「改心したよ!ユノはもう女性を騙したりしないんだ」

「チャンミニヒョン…」

「わかってるよ?
テミンの言いたいことはわかってる
だけど…ユノだって仕方ない事情があったし、
それはユノのせいじゃない」

「ひどい子供時代を送っても、悪いことせずに生きている人間はたくさんいるよ」

「ジャッジをするのはテミンじゃない」

「それはチャンミニヒョンでもないよ」

「………」

「厳しいこと言って…ごめん」

「……」

「いいんだ…」

「……」

「テミンの言ってることが正しいんだから」

「……僕はチャンミニヒョンが心配なんだ」

「わかってるよ、ありがとう」

「………」

チャンミンは大きくため息をついた

「実はね…自分でも何をしてるかわからないんだ」

「チャンミニヒョン…」

「ユノが…ユノが好きで好きで…たまらないんだ」

「……」

「……」

「出来る限りのことは…させてね
チャンミニヒョンのために」

「ありがとう、テミン」

チャンミンは力なく微笑んだ


チャンミンは今日もユノのところへ行く

寝ぼけているユノを起こして
朝ごはんを食べさせたりしている

そんななんでもないことが
チャンミンはとても楽しく

ユノにとってもかけがえのない時間だった

甘く優しい時間ではあったけど

チャンミンはユノを律した

どうにか真っ当な定職につかせようと
あれこれ試みたけれど

ユノにそれはとても難しく
一度に大きなお金をかせぐ仕事をやめようとはしない

結婚詐欺については、少しずつ整理をして
やめる方向ではいたけれど

パスポートを偽造することは
人助けだと言ってやめなかった

それはたしかに

人助けではあった


いろんな理由で故郷に帰れないひとたちに
その相場では安いと言われている金額でパスポートを作ってやっている

詐欺ほど稼げないこの商売で
故郷への土産代まで持たせているユノのしていることは

死後、天国に行かれないほどのことなのか
チャンミンは疑問に思えてきた



「ユノ、教会の建て替えですけど
なんとか寄付を募るってことで頑張りませんか?」

「寄付なんてたかが知れてるよ、普通の家を建てるのとは違うんだ。それなりにかかる」

「みんなの想いで建てた教会の方が素晴らしいと思うんです」

「そりゃそうだけど」


天使の考えそうなことだと、ユノは思った

みんなの想いで建てられた教会は
たしかに素晴らしいだろう

教会の理念というものがあるのかどうかわからないけれど、それにもかなっているような気がする

でも

自分は現実を知っている

そう考えるとため息がでる

ボロボロだったユノを拾ってくれた
幼い命を救ってくれたカン牧師と教会に
どうにか恩返しをしたい


ルカと2人、教会を夢見て毎日耐えた日々

連れて行くことができなかったルカ

あの頃毎日警察に行っては
門に立つ警官にルカのことを尋ねていた

たいていの警官は何も答えてくれず

けれど、みすぼらしいユノにお菓子をくれる警官もいて、ルカの様子を教えてくれたりもした


「残念だけど…あの子は死んだよ」

「ご飯を食べるように伝えてくれたんじゃなかったの?!」

「伝えたさ。でも、もう遅かった」

「……」



ユノは自分ひとりが助かって
こうやってのうのうと生きていることが情けなくもあった

「ユノ?」

ユノはハッとして顔をあげると
心配そうに覗き込むチャンミンの顔があった

目の前には、美味しそうなスクランブルエッグと
サラダにトースト

そして、可愛いチャンミン


ユノは今ある幸せに泣きそうになる


「また、ルカくんのことを思い出してた?」

「わかるのか」

「うん、悲しみはわかる」

「じゃあ、幸せはわからないの?」

「へへっ、あんまりわからない」

「変なの、天使のくせに」

「うん…変だね」


「じゃあ幸せってやつを感じさせてやるから
こっちに来い」


ユノは笑いながらチャンミンの手を自分の方へ引っ張った

「うわー」

そう笑いながら
チャンミンはユノの胸に落ちた



結局家を出たのは午後になってしまった


「もう、ユノほんとになんていうか…」

「自分だって、相当だろ?」

「僕は!性欲とかと無関係なんです!」

「うそつけ、堕天使め」

「ひどい」


小突きあいながら、教会について
建て替えるための見積もりなどをして、2人は忙しかった

その日は他の教会からも牧師が来ることになっていて
建て替えの相談をすることにもなっていた


「ユノ…僕はいてもいいのかな」

「なんで?いたらいいじゃないか」

「その牧師さんから…僕は見えるかな」

「見えなかったらそれはそれで
俺の側で話を聞いてたらいいよ」

「うん…そうだね」


やがて隣町から牧師がやってきた

ユノの面倒をみてくれたカン牧師の旧友で
温和な雰囲気の優しい牧師だった

パク牧師と名乗って、子供達にも挨拶をした


慎ましくも清潔な居間に通されて
牧師同士、久しぶりの再会にしばし近況話に花が咲いた

「ところで、建て替えるんだって?」

「ああ、今日は相談にのってもらいたくてね
あのユノが、頑張ってくれてる」

「あのユノが…そうか、立派になったもんだ」

「そうなんだがね…」

「ん?なにか?」

「いや、なんでもない。
とにかくユノに教会を建て直してもらったら
私も子供達も幸せなことだ」

「そうだね、ユノに会わせてほしい」

「ちょうど私は小さな子供達を寝かしつけて来る時間だから、ユノとゆっくり話をしてくれ」

呼ばれてユノとチャンミンが居間に入った

部屋にはパク牧師ひとり。

パク牧師はユノを見るなり頬を綻ばせた

「なんてことだ、立派な青年になって…」

「お久しぶりです!パク牧師もお元気そうで」


と、突然、パク牧師の表情が曇った

「ちょっと待て、その後ろにいるのは…」


チャンミンが少し不安そうに顔を出した

ユノがチャンミンの手を握って安心させようとする

パク牧師はチャンミンが見えるのか…


「その後ろの者、前へ出なさい」

チャンミンはビクッとして顔を上げると
ばっちりとパク牧師と目が合ってしまった


「お前は…」

パク牧師は後ずさりした

チャンミンは下を向いてしまった


このパク牧師は…僕の使命を知っている…
姿が見えるだけではない…

そんな気がして、チャンミンはこの場を急いで立ち去ろうと、黒いコートを翻して居間から出ようとした

「待って!」

パク牧師の問いかけに、一瞬立ち止まったチャンミンは
また、そのまま出て行こうとした

「チャンミン?」

でも、ユノに呼ばれてもう一度、その足が止まった

そしてそっと振り向くと

睨みつけるようなパク牧師の視線と
心配そうなユノの表情の落差にチャンミンは戸惑った


ユノに…すべてを知られてはいけない

それだけは絶対に困る


チャンミンは焦った

思い直したように居間から出て行くチャンミンを
ユノが追いかけようとする


「待ちなさい、ユノ、死神を追いかけてはいけない」


え?


ユノはパク牧師を振り返った


死神って?





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