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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 11



今日は珍しくユノと連絡がとれなかった

チャンミンは不思議に思ったけれど
また詐欺を働いている可能性もあり、
パスポートを偽造している可能性もある


なにしろ定職がないのだから
それらをするしかない

でも、それはさせてはいけない


チャンミンは瞳を閉じて神経を集中した


ユノがどこいいるのか…探った…


いた!


ユノは綺麗な女性と食事をしている

そこそこいいレストランで珍しくユノはスーツを着ている。
いつもの親しみのあるお兄ちゃん、といった雰囲気が一変して、エリートビジネスマンのようだ


それはそれで、とてもカッコいい。
スタイルがいいこともあるけれど、
ユノはどこか品があった。


耳を済ますと、会話が聞こえてくる


女性に事業の話を持ちかけて
お金を出させようとしているようだった

やっぱり…

これ以上悪事をさせてはいけないという気持ちはもちろんだけれど

綺麗な女性と食事、ということもチャンミンは面白くなかった

チャンミンはユノと女性が食事をするレストランの屋根に、ふうわりと舞い降りた

チャンミンがここを嗅ぎつけたことなど
まったくわからないユノは目の前の獲物から大金をせしめることに集中していた。

と、その時


ユノが食事をしている個室のドアが静かに開く

給仕が来るのかと思っていたユノの視界に
黒づくめのチャンミンが現れてびっくりした


「あ…」



チャンミンは落ち着いた表情でゆっくりと歩いてくる

できたら…チャンミンにこの場を見せたくない

ユノはそう思った
なんだかいろいろとバツが悪い


女性を騙してお金を取ろうとする場面なんて
好きなヤツに絶対見せたくない


幸か不幸か
女性にはチャンミンの姿が見えないようだ

取引はまさに佳境

チャンミンがゆっくりと近づいてきて
女性の横に立つ


そして穏やかにユノを見つめている

その優しい眼差しがユノには逆に辛かった


「私はあなたにいくらでも賭けるつもりなの」


女性がきれいに彩られた指先で、ユノの手にそっと触れる

「………いくら…でも?」


「籍を入れたらどうせ2人のものなのだし」

「そう…だな」


「ヨンファ?」

「ん?」


ヨンファと呼ばれたユノが顔を上げた

チャンミンも聞きなれない名前に
不思議そうにユノを見た


「どうしたの?さっきまであんなに乗り気だったのに
大きなお金を動かすことに怖気付いた?」

「ああ、えっと、そんなことはないさ」


今までにない大金が入るチャンスだった
ユノはここで引き下がりたくなかったけれど

チャンミンの視線がユノをこれ以上前に進めさせてくれない

どうにもならないユノ


「あー俺さ」

「なに?」

「ごめん、やっぱり自信ない」

「は?なにが?」

「うーん、大金動かすことも、その…お前とやっていくことも…」


ユノは苦笑しながら、どうにか言葉を繋げていた

「あたしと…やっていくことも?」

「うーん、そう、ごめん」

「もう一度考え直して」


女性は少し強い態度に出た


「えっと」

「あなた、怖気付いてるだけ。
一時的なものよ、手にしたことのない大金だから」

「そうかもしれないけど…」

「気になる言い方ね、もしかして、あたしが問題?」

「うん…」

「え?あたしと籍入れることが問題?!」

「強いて言えば、そうかな」

「は?」


ユノは女性の顔をまともに見ることができない


なんていう展開なんだよ



いきなり、パチーンと音がして
ユノの頬に強烈な衝撃が走った

頬はジンジンと痛み、しばらく頬を押さえた

殴られた…だよな?


気がつくと目の前の椅子には
チャンミンがニコニコと笑って座っていた


「あ……」


「さっきの女性は帰りました。
ここの支払いはしていかなかったみたい」

「えーマジかよ」

ユノは頬を押さえながら舌打ちをした


「チャンミン、邪魔しやがって」

「………怒ってる?」

「怒ってるさ、大金が手に入るチャンスだったのに。
聞いてただろ?」

「でも、あの人と結婚するつもりなんてないんでしょ?」

「言ったよね?俺、詐欺やってるって」

「詐欺なんていけないことです、ユノ」

「お前には理解できないだろうよ」


ユノはイラついた態度で、チャンミンとは視線を合わさなかった

「僕にもわかります。詐欺はいけないことです」

「なぜ、それを俺がやってるか、お前にはわからないってことだよ」

「お金がいるからでしょ?それなら他の方法で…」

ユノがチャンミンの言葉を遮っていきなり立ち上がった


「だから!お前になにがわかる!」

「ユノ…」

「俺みたいなのが、金稼ぐ方法なんて
真っ当な仕事じゃ無理なんだよ!」

「どうしてそんなにお金がほしいんですか?」

ユノが怒鳴っても、チャンミンは負けなかった

「ふつうに生きていくお金があればいいじゃないですか。大金より悪いことをしないで生きるほうが大事です」

「ふわふわ天使のお前にはこの下界の厳しさはわからないだろうな!」


「ユノ…」


「あの施設を建て替えるんだよ。もうボロボロなんだ
必要最低限の補助でやっていけねぇ」

ユノはイラついたように身振り手振りを大げさにして
説明した


「あ…あの施設…」

「そうだよ!」

「………」

「あの女から巻き上げられたら、そこそこ目標額達成だったのに…」



「でもね、ユノ」

「なんだよっ!」

「誰かを騙して得たお金で施設を直しても
みんな喜ばないでしょう」

「……金の出所なんて、言わなきゃわかんねぇだろ」

「そういうのはわかります。
牧師さんにこのお金はどうしたと聞かれたら
ユノはなんて答えるんです?」

「うるせぇな、お前、俺のやることに口だすなよ!」

「………」

「せっかくのチャンスだったのに…」

「………」


ユノは席を立って、個室の入り口へ向かってドカドカと歩いて行った

ドアノブに手をかけて、少し気になり振り返ってみると

椅子にチャンミンが悲しそうに座っているのが見える

丸めた背中、きれいな頸


泣いているのだろうか


少し言い過ぎたかな…


目の前の大金をみすみす逃してしまってイラついたのはたしかだ。

だけど…

チャンミンの言うことは正しい

誰かを騙して得た金で施設を直したところで
胸を張って子供たちに笑ってみせられるだろうか


カン牧師にはきっとわかる

自分が何をして稼いだ金か

だけど…

ユノは自分が情けなくもあり
でも強い意志もあった

そして…

もう一度チャンミンを見ると
その肩が震えているように見える


自分が何者なのかもわからず
それでもユノの側にいようとするチャンミン


いつも優しく笑いかけてくれる
俺の天使


その哀しげな撫で肩をみていると

ユノの胸に愛しさが溢れて
たまらない気持ちになった


ユノはゆっくりと、チャンミンのところに歩いて戻って行った

そしてひとつため息をついた


「ごめん…言いすぎた…」


静かで低いユノの声に
チャンミンがそっと顔をあげた

やっぱり

その大きな瞳は濡れている


「泣くなよ…言いすぎたよ」

「僕…」

「……」

「ユノが綺麗な人に笑いかけてて」

「あ?」

「なんか…それもイヤでした…」

「……」


「あの人が悪い人なら…お金を取ってもいいのかもしれないね…」

「チャンミン…もしかして」

「ん?」

ユノを見上げるチャンミンは
透き通るような、まさに天使の美しさで

ユノは思わず頬が緩んだ

「チャンミン…ヤキモチ?」

「え?」

「俺が綺麗な人といたから
ヤキモチ妬いたの?」


チャンミンはモジモジと指先をいじりだした

「………」

「天使のヤキモチ…いいタイトルだね」

ユノは、黙って俯くチャンミンの髪をくしゃくしゃと撫でた

「結婚詐欺なんて…やっぱりよくないですよ」

「他に仕事があればね、やめるけど」

「ユノ」

チャンミンが顔をあげた

「ん?」

「僕と一緒にいてくれるつもりなら」

「ん…」

「結婚詐欺はやめて」

「……」

「あなたがこのまま、詐欺を続けるなら
僕は一緒にはいられない」

「っていうか、いたくないんだろ?」

「そう、ヤキモチを毎日なんてイヤですよ」

プッとユノは吹き出した

「そうかーいやかー」

ユノはチャンミンの頬を両手で挟んで
その唇に軽くキスをした


「わーかったよ!やめるよ!」

「ほんと?」

「うん、仕方ない
お前がイライラするのもあんまり見たくないしね」


チャンミンは安心して、ふんわりと微笑んだ

「よかった…」

「そのかわり、ずっとそういう笑顔をみせてくれること」

ユノがチャンミンのおでこをそっとこづく

「わかりました。いつも笑顔でいます
ユノ次第だけどね」

「なんだよ、それー」


結局、ユノは高い食事代を払って店を出た


チャンミンは考えていた…

どうしたら、あの施設を建て替えることができるのだろう

下界はお金というものが力を持ちすぎて
ほんとうに面倒くさい


それでも、口笛を吹きながら夕陽の中を歩くユノの背中は広くて頼もしい


子供たちのために施設を直そうとしているユノ


たまらない気持ちになって
チャンミンは思わずその背中に抱きついた

「おっと!なんだよ」

そんなユノもとても嬉しそうだ


ユノは思った

チャンミンに言われなければ
詐欺をやめることがいつまでもできなかっただろう

こんなこといけないと

いつか捕まったりするだろうと

心のどこかで黒い影がくすぶっていた

それが吹っ切れて
ユノの笑顔が夕陽にまぶしく輝いていた






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