FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 8




「ユノはこれからどこかへ行くの?」

「あー俺さ、ちょっと仕事あって」


詐欺だろうか…
また偽造パスポート?

これ以上、悪事は重ねないでほしい

チャンミンは怪訝な顔になった


「ちょっと手伝ってくれるか?」

「僕になにか手伝えることが?」

「大したことじゃないよ」


悪事は…手伝えないよ?


少し不安な気持ちで後をついていくと
ユノはゴミ置場から、いくつかの板や、壊れた家具を拾っている


「これを何に使うんですか?」

「うん、教会の隣に施設があってね
雨漏りするんだってさ、だから直してやろうと思って」

あ、あの子供の施設か…
そういうことなら

「僕もやります!手伝いますよ」


チャンミンも張り切って板を集めて
ユノの後をついていった

施設に着くと、ユノのまわりに子供たちが寄ってきた

甲高い声がユノを取り囲む


「ヒョン!来てくれたの?!」

「ユノヒョン、あそぼ!」


そんな光景を前にして
チャンミンは少し後ずさりをした

警戒した


子供は純粋なせいか、
チャンミンの姿が見える子が多い
そして、この黒装束を本能的に怖がる子も多い

子供に怖がられて泣かれてしまうことは
しょっちゅうだった

仕方ないとはわかっていても
チャンミンはその度に…軽く傷ついていた


7、8人集まった子供はみんな4歳〜5歳くらい
その内の1人の男の子がチャンミンに気づいたような素振りを見せた

そして、テコテコとチャンミンに近寄ってきた

チャンミンは更に後ずさりをしてしまう

そんなことはお構いなしに
男のコはチャンミンの真ん前に立ち、背の高いチャンミンを見上げた


「ヒョンはだれ?」

「あ…」


この子には見えるんだ

その内、全員がチャンミンに気づき
わーっと集まってきた

チャンミンはたじろいだ

この子たちみんな、僕のことが見えている

しかも…怖がってはいないようだ

それはいいのか、悪いのか
とりあえずユノの前としてはこれでいい

僕のことが見えない子がいたらそれはそれで変だし…


ユノが優しい笑顔で子供たちの後から近づいてきた

「あーみんな、このお兄さんはチャンミンだよ」

ユノがまるで幼稚園の先生のようだ

「ユノヒョンの友達?」


「友達よりもっと大事」


ユノが笑顔でそう言ってチャンミンを見て目を細めた

嬉しい…僕はユノにとって大事な存在ってことでいい?


ユノ…

僕もあなたがとても大事です


「さぁ、雨が降るとベッドが濡れるんだろ?
どの辺だ?直してやる」

「えっとね!こっちこっち!」

ユノは子供たちに導かれて寝室に行く。

その時

「!」

なんと、チャンミンの両手にも、子供たちがぶら下がってきた。
何気ない子供たちのそんな行動にチャンミンはひどく驚いて…

こんなこと…

今まで経験がなかった

「死神」と呼ばれて、忌み嫌われてきた自分に手を繋いでくれるなんて…

うれしくて

チャンミンも子供たちの小さな手をギュッと握り返した

心に温かい感情がじんわりと溢れてくる



たくさんの2段ベッドが並ぶ寝室の天井に
シミがついている

「ここだな、わかった」

ユノは脚立と板を持って外へ出た。


「チャンミン、釘とトンカチ持ってて」

「あ、はい」


と、その時

あ…

チャンミンの脳裏に

リストの文字が浮かぶ


死因 : 落下事故


ユノ…

ダメだ…屋根の上なんて


チャンミンは急に焦り出した


見るとユノはもう脚立に乗って屋根に上がろうとしている


ユノ!!

ダメだ!!

屋根なんかに上がっちゃダメ!


チャンミンは釘とトンカチを持ったまま
黒いコートを翻して走り寄った



そこで、チャンミンは思いとどまった



僕が運命を変えては…いけない…



「釘とトンカチ貸して」

ユノは脚立から降りてきた。

このまま、ここにいて
屋根には戻らないで

ユノは不思議な顔をしながらも、動かないチャンミンの手のひらから工具を奪うように取って再び脚立に戻った


チャンミンは強い眼差しで、脚立を登って行くユノを見あげた

まるで念じるように強い視線で見つめ続ける

ユノはチャンミンの心配など気づかず、
ひょいと屋根に上がる


ユノ…ダメなのに…

ああ…どうか…お願い…


どれくらいの時間がたったのだろう

チャンミンはただじっと
ユノを強い視線で見つめ続けていた


祈りながら
どうか不幸な事故がユノの身に起こらないように


ユノが作業を終わる頃になると
チャンミンはもう耐えられなくて目を閉じてしまった

見ていられない!


そしてチャンミンは確信した


自分はユノを助けることもできず、何もできず
その最期を見届けるなんて…やっぱりできない


そんなチャンミンの動揺を打ち消すような
ユノの明るい声が響いた


「さぁ、これでもうベッドは濡れないぞ」

その声に、チャンミンはそっと目を開けた

目の前に、ユノの笑顔があって
子供たちが喜んでユノに抱きつく


よかった…

チャンミンは盛大にため息をついた



ユノは一番小さな子を抱っこして教会に戻った。
チャンミンも子供たちの手を引いて教会へ入った


ふと見上げると

教会の天井には何人もの天使がいて
チャンミンを見つめひそひそと話をしている

チャンミンはジロリとステンドグラスの天井を睨みつけた


天使たちは、死神が教会に何の用だと
そんな風に言っているのかもしれない

だけど

僕だって天使なんだ

「死神」なんて人間が作った言葉なのに

僕は悪人を導く天使ってだけなんだ

たしかに教会に来る機会は少ないし
悲惨な場面も見て来ている

だけど

僕が悪人なわけじゃない

チャンミンは下唇を噛んだ


ユノは子供たちに挨拶をして
教会を離れようとしていた

「ユノ」

思わずチャンミンは声をかけた

「なに?」

「この教会、すごくきちんとしていて
ちゃんと懺悔の部屋もある」

「懺悔?」

「少しでもその…罪が軽くなるように
懺悔もたまにはいいと思いますよ」

「はぁ?」

ユノは驚いた顔をした

「お前…俺が懺悔って…」

「いや、その…なんていうか…」

「何時間かかるんだよ、俺の懺悔なんて」

「え?」

声高らかにユノが笑う

「アハハハ…どんだけ俺が悪さしてるかって話」

ユノ…

そこへあのカン牧師が入って来た

カン牧師は優しい顔で寄って来る子供たちを抱きしめたりしていたけれど、
チャンミンの姿を見るとその表情が曇った

「……」

「おっさん、屋根直しといたぞ」

お、おっさん…て…

「悪いねいつも、これでみんなの寝室が濡れずに済む
みんなユノヒョンにお礼を言ったのかな?」

子供たちはハッとした顔をして慌ててユノに向き直った

「ヒョンありがとう!」

「はいはい」

ユノがみんなの頭を撫でている
子供たちはユノの足の長さにも足りない背で
一生懸命伸びをして、ユノに近づこうとする

「そこの君」

微笑ましくその様子を見ていたチャンミンに
いきなりカン牧師が話しかけた

「は、はい」

「悔い改めることがあれば
お伺いしますよ」

牧師はそう言って、懺悔室の小さなドアを指差した


カン牧師は2人で話そうって…言いたいのかもしれない


「いいよ、チャンミン懺悔なんて」

ふとユノがチャンミンの腕を掴んだ

「ユノ…」

「どんな商売だって、生きていくためのことなんだから
気にすることない」

「え?あ…」

僕が風俗業ってことを言っているのか

えーっと

優しいね、ユノはほんとに

カン牧師はユノを想って、僕になにか話そうとしているはずだ。
ここは話を聞かないといけない気がする


「僕…少し懺悔させていただこうかな」

チャンミンはいたずらっぽくユノに笑いかけて
カン牧師に続いて懺悔室へ向かった

「チャンミン…いいんだって」

心配そうなユノを安心させるように
チャンミンはヘヘッと笑う

「ここで少し待ってくださいね」


懺悔室の小さなドアを開けると
カン牧師はもう準備をして小さな窓の向こうに横向きに座っていた

チャンミンは黙って小さな木の椅子に座った


「この間は悪かったね」

「いえ…なにも…」

「君は…」

「はい」

「自分の使命を疎ましく思うことなんかないんだ」

「……」

「君は立派な天使なんだから」

「……」

俯くチャンミンにカン牧師は優しい眼差しを向ける

「君に頼みたいことがあってね
ここに来てくれてよかった…」

「僕に…ですか?」

チャンミンは少し顔を上げた

「君がそばにいるということは、ユノはもう長く生きられないということだ。
この間君を見たときはさすがにショックだったけれど」

「……」

「仕方ない…それがユノの運命なんだから」

「……」

「だけど…ユノはかわいそうな子供だったんだ
物心ついた時から自分1人で生きていかなければならなかった…」

「……」

「いや、だからと言って何してもいいわけではないけれど」

「……」

「短くて不幸な人生の最期を君が幸せにしてやってほしいんだ」

「僕に…そんな大役が務まるわけないです…」

「君なら、と思ったんだが?」

「なんていうか…」

「………」

「ちょうど…自信をなくしていたっていうか」

「君は…ユノが嫌いか?嫌な奴だと思うか?」

「いいえ!」

チャンミンははっきりと言った

「僕は…ユノが…大好きです。
とっても大切に想っています。
そういう立場じゃないのは…わかってますけれど」

「だったら、最期にユノの人生を輝かせてほしい。
ユノの…ために」

「……」

「どうか…頼む」

「僕に…できるかどうかわからないけれど
ユノを幸せにしてあげられたら…」

「きっと君ならできると…思うんだ」

「もし…」

「………」

「もし、僕がユノを幸せにできるなら…」

「………」

「僕は…全力を尽くします」





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム