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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 5



ユノがシャワーを浴びている

古い作りのせいか、お湯の出方にムラがあるようで
その音は大きくなったり小さくなったりする。

チャンミンはユノのベッドで微睡みながら
その音を聞いていた

自分に心というものがあるのなら
確実に…自分の心が何かおかしなことになっている

それが決してイヤなものではないことを自覚すると、
チャンミンは自然と頬が緩むのを感じた


頭のどこかで警鐘は鳴ってはいたけれど
それはそれで、後でゆっくりと考えればいい

慎重で冷静なチャンミンにしては
刹那的な考えだった


ふと


ベッドの上に放り投げられたユノのスマホが鳴った
いけないとは思ったけれど、画面をのぞいて見ると

そこには ミンス と表示されている


結婚詐欺…そんなことがユノの罪状リストには出てた
それを思い起こさせる女性の名前

シャワーを終えて、腰にタオルを巻いただけのユノが
着信音に気づいてスマホを手にとってはみたけれど
その画面を見てイラついた顔をした

なり続けるスマホを、諦めたような顔をして
ユノがタップした。


チャンミンは目を閉じて
ベッドの上で寝たふりをしてじっとしていた


「はい」

誰かと思うほどの低い声
これが…ユノの声?

相手は誰なのだろう

騙している女だろうか


「ああ、まったく必要なくなったから」

クールだ、怖いと感じてしまうくらいクールだ

甘さのない無情とも言えるユノの声


「だから、これでお終い
もうウザいから、今後連絡してくるな、わかったか」


ひどいな…


ユノは一方的にスマホをタップすると
ベッドにほうりなげた


チャンミンがムックリと起き上がった


「あ、起こしたか?」


「ユノ、きつい」


ユノは一瞬バツの悪そうな表情になった。


「お前に関係ねぇ」

「関係ないけど、あんな風に言われるのいやだな」

「いいんだよ」

「どうして?」

「どうしてって、関係を断つのに未練残させる方が
よっぽどヒドイだろ」

「今まで仲が良かったなら、いい時期を一緒に過ごしてくれたお礼とか…」


「たとえばさ」

ユノが引き出しから白いTシャツを取り出して
頭から被りながら話す。

引き締まった背中の筋肉が見えた


「仕事しててさ、チャンミンの客がマジでお前を好きになったらどうする?」

「え…どうって…」

さっきは心奪われそうだとか言ってたのに
言うことが矛盾してないか?

「じゃあさ、お前が仕事上優しくしてやった奴が
お前に本気になってることがわかったらどうする?
しかも、お前の仕事を知らない奴だったりした時」

「ん……」

「罪だろ、そんな純粋な気持ちを弄んだら」

罪って…

どの口が言うか


「ユノは、今の電話の相手を好きじゃないの?」

「好きじゃないよ
俺にとっての客みたいなもん」

「その子は…ユノに本気なの?」

「本気っていうか…純粋」

「純粋…」

「捨ててもタダじゃ起きないようなオンナしか
相手にしないんだ、俺」

「ふぅん」

「こっちも計算なら、向こうも計算づくくらいのほうが」

「なんの仕事か知らないけど」

「結婚詐欺だよ」

「え…」


やっぱり…

自分で…言っちゃうんだ


「他にもいろいろ詐欺」

「悪い奴だね」

「そうだよ」

「そんな悪いことばかりしていると
地獄に落ちるから」


「地獄?」

「そうだよ、死んだら地獄行き」


チャンミンは真剣だ。

不思議そうにチャンミンを見ていたユノの顔が
ふんわりと緩む


「チャンミン…」

「なに?」

「お前、本当に可愛いな」

「なっ…」

そしてまた何度目かの熱いキスをされる


その度に…チャンミンの何かが奪われていく

それはチャンミンの使命と矛盾した気持ち
陥ってはいけない事態

決して許してはいけない何か

犯してはいけない罪

だって

僕には使命があるんだ


ああ…もう…

チャンミンは思わず天井を仰いだ



全能の神よ

我に抗う力を与えよ


「怖い」

ユノの声にチャンミンはハッとした

「なに?」

「お前、すんごい怖い顔してたから」

「そ、そうですか?」

「うん死神みたいな顔」

「………」

「死神みたいな表情でも可愛いんだから
イケメンは得だね」


ユノのその笑顔こそイケメン以外のなんだろうか


それにしたって…

死神か…


「ねぇユノ」

「ん?」

「あ…ユノとか呼んじゃった」

チャンミンは思わず口元に手をやった。

「アハハ…全然いいよ、ほんと可愛いな」

「………」

「で?なに?」

「僕が…死神だったらどうしますか?」

「うーん」


チャンミンの鼓動が早くなる
ないはずの心臓が音をたてる

ユノならなんて答える?



「もしお前が死神なら
地獄に連れてってもらう」

「ユノ……」


「俺なんか地獄行きだから」

一瞬…ユノの顔に影が走った


ユノの闇


何か辛いことがあったのなら
それを僕がどうにかしてあげることは…できないの?


その闇を僕が忘れさせてあげることは…できない?



「じゃあユノ!地獄を見せてあげる!」


「えっ?」

「お腹空いたからいっぱいご飯食べたい!
奢ってよ!僕は鬼のように食べるから、地獄を見るよ」

「なんだよ、それ」

ユノが笑った

笑顔になってくれた


「街に出ようよ」

「俺の財布が地獄を見るってわけか」

「そうだよ!」


ユノがその綺麗な瞳を弓なりに細めて
本当に可笑しそうに笑った


よかった…ユノの顔が明るくなった


そして、2人は街へ出た


時間的に飲み屋ばかりが営業している

ブラブラと2人で歩くのが
チャンミンはとても楽しかった


そんな中でチャンミンが24時間営業のカフェの前で
足を止めた


「お酒はいらないからカフェがいいな」

「飯は?」

「食べるけど、何か甘いものがいい」

「そうか?じゃあこっちにおいで」

ユノがチャンミンの手を引いた

温かいユノの手に引かれて
ユノが連れてきてくれたのは白い壁の可愛いカフェ


「こんな遅い時間に営業してるの?」

「してるよ、飲んだ連中が甘いもの食べに来る店だから」

「ふぅん」


「ここさ、マンゴースムージーが美味しいんだぜ」

「えっ?!」

「きらいか?」

「ううん、食べたことなくて
一度食べて見たかったんだ!」

「そうか?じゃ…」

突然チャンミンがユノに飛びついた

「うわっ!なんだよ急に…びっくりするじゃねぇか」

「ユノ!なんか…ユノが大好き!」

チャンミンはユノにおぶさるように
後ろから抱きついた

「ちょっ!」

ユノはよろけながら笑っている

2人はもつれあうようにして
店に入った


月夜の光が綺麗な夜


至る所で天使が2人をみて笑っている

幸せそうだね

楽しそうだね

でも…

地獄行きだって

ちょっと可哀想だね

……





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