FC2ブログ
プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 3



黒いコートの裾が風にはためく
地獄への道案内をするチャンミンは黒ずくめの服だ。

教会の上には何人かの天使がいて
こちらを見ている

どの天使もテミンと同じ白い服を着ている
この下界から天国へ何人かを見送ってひとやすみといったところだろうか。

なぜ、ここに死神が?と噂しているのかもしれない

チャンミンはそんな天使たちを見上げてため息をつく


正直なところ、羨ましい…

この世で命を全うした善人を
光の世界へと導く白い天使たち


僕といえば…

悪事を働いた人生を自分本位に終えて
右往左往している亡霊に声をかける

まず、そこで煙たがられる

「死神だ」と。

そんなことは無視をして、とにかく罪状を読み上げ、
行き先を告げると

「なんで自分は地獄行きなのか?!」と狼狽える

そこでもう一度罪状を読み上げてやったりする

ほぼ亡霊のすべてはその事に納得をしない

それでも、拘束着をなんとか着せて
暴れる亡霊を地獄の門番のところまで連れて行く

泣き叫ぶ亡霊…

ああ…本当にイヤな仕事だ…

チャンミンは項垂れた



その時、教会のドアが開いて
1人の牧師が出てきた

チャンミンは構わずその場にじっとして
ユノが出て来るのを待っていた。

どうせ、自分のことは見えないだろう


けれど、牧師がチャンミンをじっと見ていることに気づいた

僕が見えてる?


「だれを迎えに来たと言うんだ」

牧師はしかめっ面でチャンミンに問う


「え?見えてる?」

「だれを迎えに来たというんだ。
ここの子供たちはあなたの道案内がいるような子は1人もいない」

「あ…」

「私か?私は地獄行きか?」

「………」

「まさか…」

「……」


「ユノか?」


「…言えません」

「ユノなんだな?」

「………」


だから言えないって言ってんのに


「なるほどね。君たちの考えそうなことだ」

「僕はなにも…」

「………」


フッと牧師はため息をついた


「すまない」

「はい?」

チャンミンが牧師の顔を覗き込むと
その表情は暗く悲しそうだった。

「すまないね、大事な仕事なのに…」

「あ、いえ…色々言われるのは慣れてます」

チャンミンは笑って頭を掻いた


「君の仕事は仕事だとわかってる…
ただ…あのユノが…」

「………」


牧師の目にはうっすらと涙の膜が張っている

「わかってる…ユノはたしかに…たくさん悪さをしてきた…だから仕方ない…」

「あ……」

「導くのは君かもしれない…だけど」

「………」

「すまない…ちょっとびっくりしてな。
牧師ともあろう者が情けないね」

「いえ…」

「いや、ただね…なんていうか…」

「………」


「早死になんだな…なんて人生だ…」


チャンミンは顔を上げて、牧師の顔を見た
牧師のため息が震えているようだ

「あいつの人生はいいことが何もなくてね…」

「………」

「穏やかに死ねる…予定なのか?」

「……言えません。すみません」

牧師はうっすらと笑った

「いや…聞いた私が悪い
君の仕事なんだから気にしないで」

「すみません…」

「こんなこと言ってはいけないんだろうけれど
どうかユノが少しでも死後穏やかに過ごせるように頼むよ」

「彼次第です」

チャンミンはそこまでしか言えない

「わかってるよ、うん」

「……」

「ユノは今、施設の子供たちと遊んでる
みんなユノが大好きで…遊びに来てくれるのを心待ちにしてる。どうかそんな姿を見てやってくれ」

「はい…」

「私はここで牧師をしているカンと言います。
君とはここでこれから何度も顔を合わせることになりそうだね」

「そう…ですかね」

「それじゃ、どうかユノをよろしく」


牧師は教会を出て通りまで静かに歩いて行った

チャンミンは初老のカン牧師がとぼとぼと歩いて行く
その後ろ姿を見送った

昔からユノを知っている人なのだろうか

少なくとも、ユノが亡くなったら
悲しむ人間なのだろう

チャンミンは黒いバインダーを取り出して
サラサラと何かを書き綴った


施設の中から、まだ笑い声が聞こえている

チャンミンはすーっと教会の屋根に上がると
そのレンガに手を置いて目を閉じた

聞こえる

見える

小さな木の椅子に、その大きな長身を折りたたむようにして座り、子供たちに囲まれているユノ。

ユノの手元には小さな絵本があって
その絵を指差してみんなで笑いあっている

ユノはその切れ長の瞳を弓なりに細めて
優しそうに笑っている

これが、僕と出会った時のあのユノと同じ人物か?

あの時は射るような視線で、僕の全身を舐めるように
値踏みするように…

でも今のユノは、目を見開いておどけてみせたり
寄ってくる子供をひとりひとり抱きしめて
その頬に優しくキスをしたり

あの時とは別人だ

ユノ…もしかしたら…少しは楽にしてあげられるかもしれない

僕はたしかに…
死期の迫った悪人を地獄に導く役目だけれど

善良なところを見つけて
少しでも楽な死後にしてあげられるのも仕事なんだ


さて…どうやって再び近づくか

もうあんな出会い方をしてしまった以上
今更友達とか…偶然の出会いなんてないだろう

なんでユノは僕が見えてしまう体質なんだ

チャンミンは舌打ちをしながら
教会から離れて屋根づたいに飛び去っていった


********


教会からの帰り
ユノに1本の電話が入った

「こんばんは」

えーっと

この声は

ユノの頭の中で女性のリストがフル回転する

「ナヨン」

「ウフ…もう声だけで私がわかるのね」

「当たり前だろ。俺の生涯のパートナーなんだから」

「口座に入金したの」

「ありがとう」

「事業資金の少しは足しになったかしら」

「十分だよ。ナヨンの名前を共同経営者にするためのことなんだから、金額は構わないんだ」

「それでも…オフィスはステキにしたいから」

「それは全部ナヨンが決めていいさ」

「ありがと、グァンス」

えっと

俺はナヨンに対してグァンスだったっけ?

「グァンスって誰?」

「あーバレた?
返事しちゃうかと思ったわ、テヨン」


そうだよ、ナヨンに対して俺はテヨンだ
あー危ない

「なんで他の男の名前なんて出す?」

「テヨン…」

「たしかに俺は女に金出させて…
あーなんか気分悪い…信用されてないっつうか
グァンスって誰だよ」

「ごめん…この間2人でいるところを友達に見られて
テヨンのことグァンスって人だって友達が言うから」

「は?」

やべぇ

「見間違いだよね、なんか、他の女に別の名前使ってたりしてって思って。ごめんね」

「なんでもいいけど、他の男の名前を
ナヨンから聞きたくない」

「テヨン…」

「愛してるよ…ナヨン」

「あたしも!」


そろそろこの女とはおしまいにしないとだな
入金も済んだことだし。

ユノはスマホを尻のポケットにしまった


「こんばんは」

「うわっ!びっくりした!」

ユノはいきなり暗闇から人が現れたように見えて驚いた

「驚かせちゃいましたか?」

眉が段違いになって笑う綺麗な男


「…チャンミン!」

「こんばんは」

「こんな夜にそんな黒づくめの格好してるからさ
びっくりしたよ…」

「そう…ですよね」

チャンミンは自分の格好をまじまじと見渡した


「そんなことはいいんだ
それより、探したんだぜ?」

「そうなんですか?喜んでいいのかな」

「お前、金忘れてっただろ
店で怒られなかったか?」

心配そうにチャンミンの顔を覗き込むユノ

あ…

優しいんだ…この人

あの後の僕のことを気にしてくれてたのか

「大丈夫ですよ」

チャンミンはふんわりと笑った

「どこの店?俺、酔っ払って電話かけたっぽい」

「えっと…」

「ボーイズエンジェルにかけたはずなんだけど」

「ボーイズエンジェル?」

「うん」

「えっと、ダークエンジェルです」

「そうなのか、エンジェル違いだったか」

「フフ…」

カラスみたいに真っ黒な格好なのに
笑顔は可愛くて優しい


ユノは眩しげにチャンミンを見つめた

「僕の何かがおかしいですか?」

「いや」

「?」

「今夜、お前を買いたい。いいか?」

「あ、はい…」

「店に連絡は…」

「あ、僕がしておきます」


ユノの瞳に色気が宿る
切れ長の瞳がチャンミンを舐めとるように光る

「じゃ、行こうぜ」

ユノがチャンミンの手を引いた


あ…

また…


ユノの手からチャンミンの心に深い悲しみが伝わってくる

幼いユノの心の痛み?

ユノ…

あなたはどんな悲しみを抱えているの






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
検索フォーム
ブロとも申請フォーム