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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

死神の恋 2



「えーーー!ダメでしょ」


テミンの蒼い瞳がチャンミンを戒めるように光る

「そんな簡単に人間と交わったりして」

「いきなりだったし、
まさか僕が見えてるなんて思わなくて。
どんなお咎めを受けるんだろうか」

チャンミンは頭を抱えた


「いや、お咎めがあるかどうかより
その男、僕たちが見えるんでしょ?」

「そう」

「その男に情が湧いちゃったりしたら、どうするの?」

「湧かないよ、それはない」

「そんなこと言い切れる?」

「絶対ありえないから。これから査定して地獄へ誘導しなきゃいけないのに」

「せいぜい情けで査定が狂わないようにね」

テミンはニヤリと笑みを浮かべた

「わかってるよ」

「そして…その男の運命を変えたりしないように」

「そんなこと…するわけないよ」

「その時は本当にお咎めだよ?」

「大丈夫!」

「この間も、人間の運命を変えてしまった天使が罰を受けたって」

「どんな?」

「知らないけど、もう姿を見てないから
塵にされて消されてしまったのかもね」

「あーそんなのやだやだ!」

テミンがそんなチャンミンを見て
優しく微笑んだ

「人間て面白いもんね。興味湧くのは仕方ないよ」

「発展途上だからね、魂としては」

「僕たちだって、天使としては半人前なんだから」

「どうせなら、もっと凶悪な悪いやつを地獄に送り込む仕事がしたい」

チャンミンは握りこぶしを叩きつけるような仕草をした。

「それはもっと精進してから」

「まあね」

「あ、下界といえば!」


テミンが何かを思い出したように
パッと明るい表情になった

「チャンミンは下界でマンゴーのスムージーって食べた?」

「え?なにそれ、食べてないよ」

「今、流行ってるんだよ、すごく美味しい」

「あー僕は、あんまりそういう食べ物には
ありつけないだろうな。あの男がスムージー食べるとは思えない」

「わかんないよ?意外に好きだったりして」


………



ユノは、スマホをタップした

「はーい!ボーイズエンジェルです!」

「今夜1人頼む」

「かしこまりました。ご指名は?」

「チャンミンって子」

「は?チャンミン?」

「うん、新入りの。
この間ウチに来たよ。お金持って行かなかったけど」

「えーっと、ユノさんですよね?」

「ああ」

「確かに料金はいただいてませんね
っていうか、その日はテソンが行ったんですけど
ユノさんの家に誰かいたってことで帰って来てます」

「え?」

「はい…今、調べましたけれど
チャンミンって子はウチにいないですね」

「………」

違う店だったかな?

「そう…サンキュ」

「またお待ちしてます!」

ユノはとりあえずスマホを切った


誰だったんだろう


あのチャンミンに再会する術がないと気づくと、
なんだか急に会いたくなった


可愛い男の子を派遣してくれる他の店にも問い合わせてみたけれど、やはりチャンミンは探し出せなかった

心にひっかかる、あのチャンミンという子


金で買われたりする男にしては
とても清潔感があった

綺麗な顔とからだ

優しそうな可愛い表情

抱き心地もとても良かった

思い出すだけで今でも身体が反応しそうなほどだ


いやいや、今は仕事にいかないと
そんな事考えてるヒマはない

ユノはスマホをジーンズのポケットにしまうと
そのボロい家を出た


同じような古い家屋が並ぶ小径を口笛を吹きながらユノが歩く。


ちょうどその頭上あたりを
チャンミンが屋根づたいに歩き、ユノについて行った

ユノが頭上を見上げないかぎり
自分には気づかないだろう


これからしばらく
ユノの生活を観察しなければならないのに
姿を見られるのはとても困る

こうやって、高いところから側にいることはできても
観察するには限界がある。

顔を知られてなければまだしも…

何かきっかけを作って
ちょっとした知り合いになるとか、そんなことが必要になってくる。

って、きっかけはあんなことだったじゃないか…
既にこんな知り合い方をしてしまって…

あーー

チャンミンは頭を抱えた


とにかく


偽造パスポートのブローカーに結婚詐欺
どれも高額なお金を巻き上げて、人を悲しませる

地獄に落ちるには十分なのだか
悪事の程度を査定して、そのレベルを決めなければならない。

調べたところ、この男の最期は「落下」とあった。
穏やかな最期だとは言い難く、もしかしたらそれで十分なのかもしれない。

たとえばそれが、誰かを助けての落下だとしたら
この男は天国行きになる場合もある

それを見届けるのがチャンミンの仕事だった。



ふと、ユノがスマホをタップしている

「あのーお宅にチャンミンってコいます?」


え?

僕を探してる?


「あ、そう。わかりました。じゃいいです」


ユノは、僕が風俗店から派遣された男だと思っているのだろう

また僕を指名しようと店を探しているのか

そうだとすれば

僕はその路線でユノにもういちど近づかなくては
ならないのか…

チャンミンは大きくため息をついた


いくら人間と交わったからといって
チャンミンの身体に特にダメージはないけれど
あまり親しくなるのはいかがなものか。


ふと、ユノが立ち止まった

それは古い教会の前だった


ユノは落ち着かなそうに教会の前をウロウロとして
その隣の古い建物のチャイムを鳴らした

その様子をチャンミンは教会の塔の上に立ち観察した

なぜこの男は教会なんか…

しばらくすると、そのドアから何人もの子供たちが出てきた

「ヒョン!!」

「ユノヒョーーーン!!」

「みんな元気か?風邪引いてる奴はいないか?」

「いないよー!
ヒョン入ってー!今日は僕が一番最初に遊んでもらう約束!」

「ヒョン、抱っこ!」


すごい人気だ

子供たちから絶大な人気である


ユノが子供たちに急かされるように中に入ったのを見届けて、チャンミンは地上に降りて、その玄関に立った。
黒いコートの裾が綺麗に舞い上がる


「児童養護施設」

施設…

あの子たちは…

いろいろな事情で親と暮らすことのできない子供たち

そんな子供たちとなぜあの男が関わるのだろう


「チャンミンじゃないか」

ふと声をかけられて振り向くと
白い装束を纏ったジョンウという天使が立っていた

「ひさしぶりだね、ジョンウ
教会だから、誰かいるかなとは思っていたけど」

「チャンミンがなぜ教会?」

「うん、観察中の男がなぜかここに入っていって」

「だれ?」

「ユノって男」

「えっ?彼、チャンミンの観察下なの?
なんで地獄行き?」

ジョンウは意外な表情だ

「うん…細々といろいろやってて…」

「彼は…ユノはいい人だよ
施設の子供たちの面倒をよく見てくれて」

「そうみたいだね…人気者って感じ」

「この子たちは、ユノが来るのを心待ちにしてるよ」

チャンミンは懐からメモと羽のついたペンを取り出すと
サラサラと書き始めた

「できたらチャンミン
ユノの査定を良くしてやってほしい。
彼が教会のためにどれだけ尽力してるか、俺は証言できるから」

「ふむ…いろいろと調べる必要がありそうだね」

「チャンミン…」

「ん?」

「彼はいつ?」

ジョンウの表情が切ない

「あー」

「彼は穏やかに逝けるの?」

「…1ヶ月以内だそうだ。死因はごめん、言えなくて」

チャンミンは努めて事務的に話した

「そうか、可哀想に…」

「仕方ないさ、人間は誰でもいつか死ぬ」

「うん…僕が天国へ連れて行ければ良かったのに」

ジョンウの優しい表情が、チャンミンの心をザワザワとさせる

悪者を地獄に落とす仕事に疑問を感じはじめていたチャンミンは心が揺れないように目を固く閉じた

そして、パッと表情を変えるとにっこりと笑った。

「僕の仕事ではなくなることを祈るよ
ジョンウにバトンタッチできたらいいね」

「…そうだね…」


施設の中から、ユノのおどけた声と子供たちの笑い声が聞こえてくる





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