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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜11〜



意識のはっきりしていないようなチャンミンの
その柔らかい髪に触れると

「ん……」とチャンミンが薄く目を開けて
そして微笑んだ

消えてしまいそうに美しく儚い

ユノは愛しげにその前髪をあげて、
可愛い額にキスをする

「なぁ、チャンミン」

「ん……」

「いつもの俺と今日の俺は違ってた?」

「ん…わからない」

「わからないだろ」

「変えたの?いつもと」

「変えてないよ」

「………」

「俺はいつも…本気だった」

「ユノ…」

チャンミンがベッドから半身を起こした

「でも、立場も違うし、住む世界がまず全然ちがって」

「僕が…立場の違いを決めつけて、ユノに押し付けてたね」

「仕方ないさ、本当にそうなんだから」

「そんなことない。僕はそんな偉い立場じゃない」

「もう最後だから、本当の気持ち言わせて貰えば。
俺、みっともない男なんだよ」

「ユノはみっともなくないよ」

「恋人なんていくらでも取っ替え引っ替えのお前は
俺にすぐ飽きるだろうと思ってさ」

「僕が?」

「ああ」

「…そんなフリ…してたかもね…」

「最初は…お前をいいコネだと…
たしかにそう思ったけど」

「けど?」

「いつのまにか、本気だった」

「ユノ…」

ユノは微笑んだ

優しいけれど、その視線は真剣で強く

たった今までチャンミンを抱いていた名残の
なんとも言えない色気を纏っている

「俺は本気でチャンミンが好きだった」

「過去形?」

「追いかけっこは疲れたよ」

「追いかけっこ…」

「お前はお前の居場所で、楽しく生きろ」

「……僕は…」


ユノといたい…
でも、僕の事情に引き込めない


「もっとユノにたくさん甘えればよかった」

「そうか?」

「甘えたら突っぱねられそうで、あんまり甘えられなかったな」

「………」

「今日は…結構甘えたね、僕」

チャンミンは髪をクシャクシャとかき回し
微笑んだ

「満足か?」

「うん…満足ってことにする」

「なんだよ、それ」

チャンミンは微笑みながら、うんうんと頷いた
そして、ブランケットに包まり、バルコニーに出た

「綺麗な夕陽!ユノ、ほら」

トランクス一枚のユノがバルコニーに出て
ブランケットに包まったチャンミンを後ろから抱きしめた

「ユノ」

「ん?」

ユノが後ろから、チャンミンの頬に自分の頬をくっつけた。

「僕、頑張る」

唐突にチャンミンが言った

「なにを?」

「うん、明日からがんばる」

「そう?」

「だから、ユノも頑張って。
それと」

「それと?」

「今から謝っとく。ほんとごめんなさい」

「?」


空はあっという間に明るいパープルから青みがかったグレーに変わっていく

ユノがため息をついた。

これ以上キリがない…

「俺、帰る」

「……」

「うん」

ユノはシャワーを浴びて
着替えた

「書類忘れないで」

「ああ」

ユノが車に乗り込むのをチャンミンはブランケットにくるまったまま見送ろうと出てきた。

「そんな格好で」

「大丈夫、誰もいないよ」

「俺さ、この車も返したい」

「うん、それは後で書類送るから」

「頼むよ」

ユノが車に乗り込もうとした。

「ねぇ、ユノ」

「?」

「今日言ってくれたことは、本気のフリじゃなくて
本気ってことでいい?」

「……」

ユノの顔が少し困惑している

「あ……ごめん」

「本気だよ」

「えっ?」

「本気」

「もし、僕もユノを本気で好きって言ったら?」

「そんなこと言われたら、それが頂点であとは落ちるだけだから言わなくていい」

「どういうこと?」

「特に意味ない。
自分でなに言ってるか、よくわからないよ」

ユノは自分で言ってケラケラと笑った

「元気でね、ユノ」

「チャンミンも」


ユノはチャンミンを心底信じる事ができないまま
別荘を離れた

ユノは後からそれをどれだけ後悔するか
その時はわからなかった。

ユノは疲れていたのだ。

チャンミンに追いかけさせることに疲れて
ここで、想いを打ち明けて、脱力感でいっぱいだった。

でももう、チャンミンに飽きて捨てられる恐怖を
感じなくて済む。

ユノは少しスッキリとして、車を走らせた

実は不安に押しつぶされそうなチャンミンを
1人別荘に残して



************


翌朝、出社したユノに…いや、ユノだけではなく
社員全員にまるで竜巻に飲まれるような出来事が起こった


ユノはもう辞表を出した身で、
片付けに来たつもりだった

ある程度引き継ぎもしなくてはならなかった。


とても、そんな状況ではなかった

会社が突然、他の企業の手に渡っていた


市場の株が広範囲に暴落したというニュースが
その日のマスコミを埋めた


世の中が少し変わるくらいの動きを見せているそうだ。

なぜか一番の打撃を受けたのは
シム家のような昔からの財閥系

しかし、チャンミンの家を含むいくつかは
事前にそれを防ごうと動いていた様子があり
インサイダー取引だと言われた。

ユノは辞表を出していたけれど
受理までにはかなり時間がかかると思っていた。

それがあっという間に、ユノは課長の座を失っていた。

社内にいたユノはいまひとつ事情が飲み込めず

株の暴落とチャンミンへの影響がわかったのは
会社を出て、カフェに入った頃だった。

スマホで自分の会社のことを調べているうちに
すぐシム家の話が出てきた

投資家達の騒ぎは増すばかり

原因がわかったわけではないのに
水際で最悪の事態を防いだシム家は非難を浴びた

チャンミン!

ユノはいてもたってもいられなかった

何度スマホにかけても、チャンミンは出ない


チャンミンの屋敷に行くと
マスコミの山でとても近づけない

どうにかして、屋敷の中には入れないだろうか

ユノは裏へ回ったけれど
塀が高すぎてとても入れそうにない

「ユンホ様!」

ふと呼ばれて振り返ると
ソクジンが走り寄ってきた

「ソクジンさん!チャンミンは!」

「ここにはおりません。」

「もしかして、まだ別荘?」

「一番安全かと思いますが
いつあそこが知れたらマスコミが」

「どうしたらいい?」

「連絡してあげてください。
ぼっちゃま、とても不安なはずです」

「連絡とれないんだよ」


どうして、俺は昨日帰ってきてしまったんだろう

" 今から謝っておく…ごめんなさい"

" 僕…怖いよ…"

" 僕はもう…なにもない…"


甘えて縋るような瞳

弱気な言葉

今から思えばいつものチャンミンと全然違っていた

なんで…俺はチャンミンのシグナルに気づかなかったんだろう

俺に縋ってくれたのかもしれないのに…

無理やり俺を切り離そうとしたのは
今日のこのことがあるからか。

「金があればいいのか?」

「旦那様はむやみにぼっちゃまに借金を作らせないよう配慮なさってたはずです」

「だけど、金はいるよな。
あいつ、金のない生活なんてできないだろ」

「ぼっちゃまはそんなことでは…」

「あ!あの時計!」

「は?」

「世界で5個の…あれを売ろう!」

「ユンホ様!」

ソクジンは呆れ顔だ

「あれなら相当になるはずだ」

「あの時計が売れるわけないじゃないですか」

「なんでだよ、世界に5個だぞ?」

「だって…あれは…
チャンミン様が苦労して…」

「苦労して?あの時のチャンミンなら
なんなく買えただろ」

「いや、そうではなくて…」


それから

あの時計をユノにプレゼントするために

チャンミンがどれだけのことをしたのか

ソクジンから聞かされたユノは自分のマンションに走った


息も絶え絶えにあの腕時計を引き出しから取り出した


真っ黒であの時はわからなかった…


黒いベゼルの裏を光にかざすと

そこに浮き上がった文字が見える



愛するユノへ
チャンミンより



" ぼっちゃまがどうしても、そのひとことを
時計に入れようとして "


チャンミン…

ユノの瞳からハラハラと涙が落ちた


" 頑な一流ブランドをあの手この手で口説き落として"


チャンミン…

俺も…

愛してるよ


" 最後は本当に強引に…"


お前らしいね…こんなこと…


金にモノ言わせただけの時計かと


だけど、そこに愛はあった





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