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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜10〜





ユノは優しくチャンミンを抱き寄せた

チャンミンはユノの耳にくちづけてそっと囁く

「ありがとう。
変なことばっかりお願いしてごめんね」

ユノは小さくため息をついてチャンミンの髪を撫でた。

「お腹空いただろ、食べよう」

「うん!」

途端に明るい笑顔になって
チャンミンはまた眩しいバルコニーに出た

ユノがクーラーボックスから飲み物とサンドウィッチを出した。

チャンミンがそれを綺麗に並べて
バルコニーに咲く花を切り取ってテーブルに飾る

「美味そうだな、このサンドウィッチ、
どこのパティスリー?」

「これね、僕が作ったんだよ」

「えっ?」

「作れないと思ったでしょう
朝早く起きてさ、本見て1人で頑張った。」

「屋敷のキッチンで?
みんながほっとかなかっただろ」

「あ…うん、そんなことなかったよ?」

「ソクジンさんがよくやらせたな」

「…うん」

屋敷を出たことは、言わなくていいよね


夜明けとともに起きて
マンションの誰もいない狭いキッチンで
ひとり本と格闘して作ったんだ…

「チャンミン」

「なに?」

「これ、俺のために作ってくれたの」

「……うん、今日はね、ユノに夢中な僕だから
喜んでもらおうと思って頑張ったよ。」

「………」

「だけど、いつものパティスリーとは、きっと全然違うから、そういう意味では喜べないと思うけどね」

ユノがそっとチャンミンの手をとった

「?」

ユノがチャンミンの指にある小さな赤い傷に触れた

「痛っ!」

「指を切り落とさなくてよかった」

「そこまで不器用じゃないよ!」

「アハハハ」

ユノがサーモンの一口サンドウィッチを口にいれた

チャンミンが心配そうにユノを見る

「うん、美味い」

「ほんと?!」

「うん、初めて作ったにしては上手じゃないか」

「こっちの卵のも食べてみて」

ユノはもうひとつの卵も口にした、とその途端に眉間にシワを寄せた。
そしてその長い指を自分の口元に添える

「美味しくなかった?」

チャンミンの眉が八の字に下がっている
とても不安そうな瞳…

「殼が…」

モゴモゴとしながら、ユノが話しにくそうだ

「あ、殼が残ってたかな…」

「残ってるなんてもんじゃないよ、チャンミン」

ユノは口に残った殼をひとつずつ出した

「あーごめんなさい!」

「……ん」

「も、もう卵は食べなくていいよ、
サーモンとポテトだけにして、ね?」

チャンミンは慌てて皿から卵のサンドウィッチを別のトレイに移そうとした。

その手をユノが押さえる

「大丈夫、噛み砕ける範囲だから」

そう言ってユノが微笑んだ

「そんな無理しないでユノ」

「大丈夫だから、片付けることない」

そう言ってユノは2個目の卵サンドを口に入れた

「………」

「チャンミン、料理の素質あるね
味はすごくいいよ」

ユノがその切れ長の瞳を細めて微笑む

「ユノ…」

「ん?」

「ユノは愛する人にすごく優しいんだね」

「………」

ユノの咀嚼がゆっくりと止まる

「ユノに愛される人は幸せだね」

「………」

「………」

切なくなってしまったチャンミンは思わず下を向いた

「俺に愛される人が羨ましいみたいな言い方だぞ」

「羨ましいよ、ユノ優しいもん」

「俺はチャンミンにずっと優しくしてきたつもりだよ」

「うん、たしかにそうかも」

「チャンミンが気づかなかっただけだ」

「そっか。」

へへっと笑ってチャンミンは舌を出した。

ユノが眩しそうにチャンミンを見つめる
何か言いたげにユノの唇が震えている

ユノはぎゅっと目を閉じて一度深呼吸をして目を開けた

「チャンミン」

「なに」

「そろそろ、本題に入ろう」

「…………」

「な?」

「……うん」

2人でバルコニーを片付けて
室内のソファへ移動した

チャンミンが書類の山をガラスのテーブルの上に並べた

「これは何かと言うとね
ユノがバスケチームのコーチとしての辞令なんだけど」

「………」

「事情があって、今日しか効力がないんだ。
だから、今ここにサインしてほしい」

「断る」

「ユノ…」

「この話が出ると思った。
この話が出たら、断ろうとずっと思ってた」

「どうして?」

「もう、俺たち、なんでもなくなるんだから
お前のコネは使いたくない。自分の力でコーチになれるように頑張りたい」

「そんな…」

「だから今の会社の辞表も持ってきた」

「あ……」

ユノが白い封筒をチャンミンに差し出した。

「もらった車も返す」

「…………」

「マンションも出て行く。
実は荷物ももうまとめてある」

「………」

「気持ちよく切れようぜ、俺たち」

「切れたら気持ちいい?」

「え?」

「そんなに…僕の側には…いたくない?」

「あのね、チャンミン」

ユノは前のめりになった

「自分で気づいてるかどうか知らないけど
今、お前がそんなこと言うのは、俺がお前から離れようとしてるからだよ」

「どういうこと?」

「俺がお前の事を大好きで、ずっと側に居たいなんて言ってみろ。お前ウザくてイヤになるぜ」

「そんなこと…ない」

「いや、そうだって。」

「ユノがこんなに優しいって気づいてたら
もっと甘えてよかったのかなって思うよ」

「甘える?」

「ユノの言う通り、もう僕たちは終わり。
僕はね、もうユノになにもしてあげられないんだ」

「してくれなくて、いいよ」

「何かできるのは今日までだから
だから、コーチの件は頼むからサインしてほしい。」

ユノはぷいと横を向いた

「僕を…助けると思って…」

「助けるってなんだよ」

「ユノにコーチのポストさえ用意できたら
後はなんでも頑張れる」

「なにを頑張るんだ?」

「………」

開け放したバルコニーから優しい風が吹いて
俯くチャンミンの頬を撫でる

「怖くて…本当は…」

「え?」

ユノがチャンミンの顔を覗き込む

「なにかあったのか?」

チャンミンはかぶりを振った

「なにも…」

「チャンミン、こっち向いて」

その声にますます下を向いてしまうチャンミン

「僕、もうあなたになにもしてあげられない」

「チャンミン?」

「あなたはもう、僕といても何も得られないよ
本当にごめんね」

突然、チャンミンの顎が持ち上げられた

目の前にはユノの切れ長の瞳がまっすぐに
チャンミンを捉える
ユノの指がチャンミンの顎に添えられていた

「何があった?」

「………」

ユノを見つめるチャンミンの瞳にみるみる涙が溢れ
可愛い唇が震えている

「ユノ…僕、怖くて」

チャンミンがユノに抱きついた

ソファの上でユノはチャンミンを受け止め、抱きしめた

チャンミンはユノの胸でぎゅっと目を閉じた

「何が怖いのか言ってごらん」

「言えないよ、ごめん」

「じゃあ、そうやって抱き着くのも無しだな」

「5分だけ、お願い」

「……」

ユノは仕方なく、ポンポンとチャンミンの背中を優しく指でたたく

しばらくして、チャンミンがユノの肩から顔を離した。

「コーチの件は、先に僕がサインをするよ。
本当はダメなんだけど。帰ったら…そうだな…
明日になればきっとユノはここにサインをしようと思うよ」

「明日になったって考えは変わらないさ」

「じゃあ、少なくともこの書類は今日は捨てないで
それだけ約束して」

「……わかった。今日は捨てないよ」

チャンミンはほっと溜息をついた

あとは二人で書類を確認しながら、いろんな手続きを進めた

ユノは徹底的にチャンミンと縁を切りたいようで
チャンミンは最後、悲しくなってとうとう泣いてしまった

「ちょっ!なんだよ!泣くことないだろ」

泣きたいのは俺のほうだよ、チャンミン……

なかなか泣き止まないチャンミンをユノはまた抱きしめた

「チャンミン、もう終わったんだ。満足した?」

「最後に…」

「ん?…」

「最後に抱いて」


残酷だよ…チャンミン…

そんな泣きはらした瞳で…俺を見つめて

抱いてとか…なんなんだよ

あーもう…


「いいよ…じゃあお前が大好きな背中にワイン垂らすやつ?」

「そんなのしない」

「お前、大好きだろ…」

「好きじゃないよ…本当はそんなの好きじゃない」

「じゃあ…」

チャンミンはユノに抱き着いた

「ユノは…心から愛している人を、どうやって抱くの」

「……」

「僕を、本気で愛してると思って抱いてみて」

ユノはチャンミンの頬にそっと触れた

両手でチャンミンの顔を優しくホールドすると
顔中に何度も小さなキスをした

チャンミンはゆっくり目を閉じてそのキスを堪能した

そしてそっと目を開けると、ユノがチャンミンを見つめていた

その瞳は優しく温かく…
チャンミンを慈しむように細められる

まるで、そこに…愛があるかのように

ユノ、僕は錯覚をしてしまう…

まるでここに愛があるのかと錯覚してしまう

ユノは始終その調子でひたすら優しくチャンミンを抱いた

大事なものを慈しみ、大切にするように…

チャンミンは何度も訪れた絶頂の中で泣いた


僕も…ユノに愛されたかったな…

最初から何も持っていない僕で出会いたかったな…


窓の外はすでに夕暮れだった






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