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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜8〜

それからチャンミンは会社に来なかった


もうすぐ始まる株主総会に備えて
さすがのチャンミンもユノの側でテキトーに仕事をしているわけにはいかなかった。

とは言っても、そこはおっとりした三代目
まわりの人間に言われるがまま、淡々と仕事をこなす、という感じではある。

様々な準備の中、

ユノをプロチームのコーチ陣に加える手配も済んで
マンションの解約の書類も揃え、あとはユノのサインをもらうだけだ。

郵送でもよかったけれど

やはり、会って話がしたい

きちんとユノを解放してあげたことを
しっかりと自分で確認して見届けたかった。


今度会うのが最後だろうか…

あなたはそれさえ面倒くさくて
さっさと済ませたいみたいだったけど

ふと、ユノの笑顔が浮かぶ
その人懐こい爽やかな笑顔にぎゅっと胸が苦しくなる。

最後なら
いい1日にしよう


そう思っていた矢先だった


シム家に衝撃が走る


いくつも枝分かれしているシム一族の一部
その中にはチャンミンの家も入っていた


所有する株が暴落しそうだと
何人もの経済アナリストから指摘を受けた


チャンミンの父とその関係者は水面下で奔走した。
間に合わないとはわかっていたけれど、
水際で最悪の事態は避けようとしていた。


チャンミンといえば、まったく役に立たず
また頼りにもされず、自分の無力さを痛感した。

野菜の腐った部分を切り落とすように
一族から切り離された親戚を何人か知っている

なにかに嵌められたとか…
ズサンな経営が崩れたとか…

金や地位があればあるほど
危険もたくさんある、ふいに突き落とされる恐怖は常にあった。

破綻して自ら命を断つ知り合いも何人か見てきていて
自分の足元はいつも危うい、ぼんやりとだけれどそんな風に感じてはいた。


チャンミンの家は防げるものは防いで
思ったほどの危機にはなりそうにはないけれど

チャンミンと両親は、屋敷を出ることになった。
父は母を実家に戻した。

父親はやがて来るであろう持株の暴落と
マスコミの攻撃に備えた

ほんの2日やそこらで
天から引きずり降ろされる形となったチャンミンだった。

元々明るく前向きな性格の父のおかげで
チャンミンも悲壮感なく現実をとらえることができた。


「自由に外へ出られるのも、せいぜいあと2.3日だ。
太陽たくさん浴びて、いい空気を吸っておけ」

「お父様」

「なんだ?」

「僕の会社はもう…」

「手放したけれど、きちんとしたところに任せたから大丈夫だ。」

「あの…バスケチームは?」

「バスケ?」

「あったでしょう?僕がオーナーになっている…」

「ああ、調べてみる。」

父はパソコンで財産管理のページから確認してくれた

「引き取り手がなかったな。
あんまり美味しくない分野だから仕方ない。
どうする?もう少し買い手を探すか?」

「ううん、僕がこのまま所有する」

「借金こそないものの、
ほとんど利益も望めないぞ?」

「うん、わかってる」

「いいのか?」

「うん…」

父はチャンミンの肩に手を置いた

「いろいろ見てきたから、今の自分がどういう状況かわかるね?」

「うん」

「これでも、なんとか最低限のリスクで済んだんだ」

「うん」

「けれど、今までのような贅沢はできない。
お前はそこがたぶん一番こたえるはずだ」

「大丈夫。僕は大丈夫だよ」

「チャンミン…」

「お父様の力になれなくて
情けない息子でごめんなさい」

「チャンミン…私はね
お前の中に時に私の祖父を見ることがある」

「曾祖父様?」

「そうだ。混乱の世の中から、一代でシム家を築いた方だ。」

「僕が…そんなわけないでしょ?」

「こんなことになっても、お前はほとんど狼狽えず
そんな肝の据わったところなんかソックリだ」

「バカなんだよ、僕」

「そんなことない」

「いや、ほんと
なにも考えてなかったから」

下を向いて微笑むチャンミンの頭を
父が優しく撫でた

屋敷を出て、父が残しておいてくれたマンションに移動したチャンミンと父。
その部屋のインターフォンが鳴った

もうマスコミか

恐る恐るインターフォンを覗くと
そこにはソクジンがいた。

「爺!」

チャンミンはロックを解除して
ソクジンを部屋に入れた

「爺!会いたかった!」

「ぼっちゃま!」

2人は抱き合った

「よくご無事で、マスコミはまだ?」

「うん、たぶん、来週の月曜日
株が下がったのがわかってからだと思うよ」

「そうですか…」

「爺は、生活は大丈夫なの?」

「はい、ぼっちゃまの側にいれるように
このマンションのコンシェルジュをさせていただきます。ご主人様のご配慮です」

「そう!よかった!これからも一緒だね!」

「さすが、ご主人様です」

ソクジンは崇めるようにチャンミンの父を見た。

「こんなことになって、本当に済まない。
私はほとぼりが冷めるまで隠れるけれど」

「えっ?お父様、どこへ?」

「お母様がやっぱり私と一緒にいたいらしくてな」

「そう、フフフ…お母様は可愛いね」

「では奥様のご実家へ?」

「それはさすがにできないから、妻の実家の別荘へ。
チャンミンとはしばらくバラバラでいたほうがいいんだ。ソクジン申しわけかないが」

「大丈夫でございます
お任せくださいませ」

「ありがとう」


チャンミンは大きなため息をついた


ユノ…これで本当にあなたとは別れなくてはならないね

僕はもうなんの力も財産もない

あなたに高価なモノも買ってあげられないし
ご馳走もできなければ、生活の面倒も見れなくなってしまった。

バスケチームの手配を済ませておいて本当によかった

マンションのベランダに出て
チャンミンは夜風に吹かれた

明日は…日曜日

ユノ…あなたと最後のデートだね



翌朝、チャンミンの状況とは裏腹な快晴

チャンミンはユノのマンションへ車を走らせた


インターフォンを押すと、ユノが寝ぼけた声で出た

「はい」

「迎えに来たよ、下に降りて来て」

「わざわざ遠出しないとダメ?」

「いいから早く降りて来て」

「書類渡すだけなら、ここでいいのに」

「待ってるんだから、早く」

「ちっ」


今日は笑顔でいよう

そう決めたチャンミン

ユノはきっとずっと不貞腐れたままなのかな

あの笑顔を少しは見せてくれるといいな


しばらくして、ユノがエントランスから出て来た。

ジーンズをふくらはぎの途中で切ったようなパンツと
黒のボクサータンクシャツ

あらわになった太い二の腕が健康的な色気を漂わす

めんどくさそうな、眉間にシワを寄せた表情を見ていたら、チャンミンはたまらなくなった

「ユノ」

「あ?」

チャンミンは車から離れて
ユノに飛びついた

身構える暇もなく、
突然抱きついて来たチャンミンに
ユノは面食らった

「なっ!なんだよ!」

ユノの首に抱きつくチャンミンをなんとか受け止める

「ユノユノユノ!」

「なんだよ!びっくりするじゃないか!」

「おはよう!ユノ!」

「は?」

チャンミンは少しユノから離れて
ユノの顔を両手で挟んで真正面からユノを見た

「おはようございます、ユノ」

「わざわざ朝の挨拶するために
飛びつくやつがいるかよ」

チャンミンの笑顔が朝陽にまぶしい

綺麗な笑顔

長い睫毛がキラキラとしている

ユノはそんなチャンミンを眩しそうに見つめて
悲しくため息をついた。

今日で終わりにしよう

もう飽きられてるんだ
最後にこんなもてなしはいらなかったけど

チャンミンの礼儀なんだろうな。
捨てる俺への思いやり

今日だけは…今まで通りのチャンミンでいてくれるつもりなのか?

「俺が迎えにいくっていったのに…」

「僕、今屋敷にいないから」

「なんで?」

「父が…独り立ちしろって」

「新しい男と住むのか?女か?」

「えっ?」

「ま、どっちでもいいけどさ」

どっちでも…いいよね…
わかってるよ

「今日は海まで行こう!
叔母さまの別荘があるから。」

「海?」

「ここからはユノが運転してよ」

「はいはい」

ダルそうにユノはキーを受け取った

チャンミンは眩しい空を見上げた

いい一日になりますように





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