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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜6〜


オフィスは決算期の忙しさで社員も休憩もとらず働いていた。

そんな中、チャンミンだけがのんびりとパソコンを見ている

まわりが忙しくても気にならないところが
やはりチャンミンだ。

ユノが小さな声でチャンミンに声をかける

「少しは仕事をしている振りをしろよ」

「数字見てるの、全体の」

「その仕事は、自分の社長室でやれよ」

「だって…」

「今は普通の社員だろ?」

チャンミンは不貞腐れながら
パソコンの画面を変えた

「あ、それから。
今日はバスケチームのところに行くから
先に帰ってて」

「え?迎えに行くよ。チームの体育館でしょ?」

「いいよ、来なくて」

「僕が行っちゃマズいことでもあるの」

「………いや」

「え?まさかほんとに?なにかあるの?」

「ないよ…
迎えに来なくていいから残業してるフリでもしたらどうだ?」


バスケの仲間といる自分を、チャンミンに見られたくないと、ユノは思った

それがなぜかは、よくわからない

ユノの言った言葉は、かなり効果的で
チャンミンはガッツリと追っかけモードになった。

「ぜったい迎えに行くから!」


だけど

もうそんなこと、ユノはどうでもよかった。

この苦しい生活から逃れたいとユノは思っていた。

バスケのコーチは、自分の実力でなればいいじゃないか。

チャンミンのコネで、なんて最初の考えは
ユノはもう持っていない。


チャンミンはもちろん残業なんてせずにバスケチームの体育館に寄った。

「車の中でお待ちになれば」

「いや、爺。
ちょっと中を見てみる」

「でも…」

「僕がオーナーなんだから
いいでしょ」

「まぁ、そうですね。はい。
老朽化したところがないか確認するのもよろしいかと」

「うん」

チャンミンは体育館を覗いた

そこには、ユノを囲んでバスケの仲間達が楽しそうに話をしていた。

初めてみる、仲間といるユノの姿だ

バスケチームのユノは

サロンで色気を振りまくユノ
チャンミンを器用に抱くユノ
会社であれこれと指示を出す課長のユノ

そのどのユノとも違っていた

爽やかで、健康的で
仲間に向ける楽しそうな笑顔は、チャンミンには向けられたことがない


これが本当のユノなのかもしれない

ユノはこんな爽やかな人なのだ。

そう思うと、チャンミンは悲しくなった。

ユノは僕とは違う世界にいて
僕の知らない笑顔を持っている



やがて、チームの1人がユノの前に出てきた

「俺たち、ユノにまだ就職祝いをしてなくてさ」

「そんなのいいんだよ。
コーチになった時に祝ってもらうからさ」

「それはそれ。これさ、みんなから
すごく遅くなったけど」

「えっ…」

仲間達がニコニコしている。

ユノの手に渡されたのは
ベージュの包みにラッピングされた四角い箱

「就職祝いだよ、おめでとう!」

ユノは驚いて言葉が出ないといったところだ。


「………」

チームの仲間が口々におめでとう!と叫ぶ

「そんな…悪いよ、こんな…」

「高いものじゃないんだよ
俺たちが買えるんだから、大したことない」

「開けていいか?」

「もちろん!」

ユノが神妙な面持ちで、包みを開ける

チャンミンも遠くからその中身を見ようと身を乗り出した

時計だ

腕時計…


ユノは箱を開けて、その腕時計を取り出すと
いきなり顔を歪ませたかと思うと、手で顔を覆った


ユノ…

泣いてるの?

嬉しくて?


チャンミンはショックだった


世界で5個しかない時計をあげても
大して喜ばなかったあなたが

今、仲間から贈られた何でもない時計に涙する


みんなの思いが詰まったその時計は

僕が外商をこき使って手に入れた高級な時計より

あなたにとっては価値があるということか。

そこには愛があるから?

あなたには仲間がいて、夢があって、自由がある


そのどれも、僕は持っていないものばかり


チャンミンは打ちのめされた

ユノは実はとても遠い人だったのだ
チャンミンの窮屈な世界とは無縁の…


チャンミンは静かにその場を立ち去った。

急速に訪れた孤独感

体育館を囲む夜の木々が風でざわめく
その音がチャンミンの孤独を更に深めた


車に近づくと、ソクジンがそそくさと車から降りて
ドアを開けてくれる

「ありがとう」

後部座席のシートに座り込む

はーっと大きくため息をついて
チャンミンは俯いた



「どうかなさいましたか?」

「あのね…」

口調が少し子供っぽい

「はい」

「ユノね…みんなから、チームのみんなから
時計もらってた」

「時計?」

「うん、就職祝いだって」

「なるほど」

「すごく…嬉しそうでさ
ユノ、泣いてた…」

「ぼっちゃまも、腕時計を差し上げましたね」

「あれはね、そんなに喜んでないみたい」

「さようですか?」

「うん、みんながユノを思ってさ、お祝いする気持ちがこもった、そんな時計のほうがうれしいんだね、きっと」

「ぼっちゃまの時計も気持ちがこもっていたでしょう」

「こもってないよ」

「伝わっていないだけです。
爺はぼっちゃまが、あの時計を手に入れるのに奔走されていたのを知っています」

「高価だから、ユノが喜ぶかと思って
でも、そうじゃなかった。」

チャンミンは頬を掻いて苦笑した


「ぼっちゃまも、お好きな気持ちを込めて何かして差し上げたらどうですか?」

「別に好きじゃないし」

「ぼっちゃま」

たしなめるようにソクジンが言った。

「……」

爺に取り繕ったところで、チャンミンの気持ちなんてとっくにバレてる

「何か…ユノが喜ぶことを…してあげたいな」

「といいますと?」

「僕がしてあげられる…ユノが喜ぶことなんて
ひとつしかないよ」

へへっとチャンミンが悲しそうに笑う

「ぼっちゃま、まさか…」

「ユノを解放してあげること。
そして、あの仲間たちのところへ戻してあげること」

「………」

チャンミンはシートにもたれて、目を閉じた




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