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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜5〜





口付けながらユノは思う

決して手には入らないお前の心…

仮に手に入ったとしても、それはきっとシャボン玉のようにすぐに手のひらから消えてしまうだろう


俺は…それが怖い

もう来なくていいと…そばに来るなと言われるのが
一番怖い

こんなにも好きになってしまった気持ちをいつも抑えているせいか、
一旦そのカラダに触れると止まらなくなってしまう。


そっと唇を離すと、ユノは熱いため息をついた。

「チャンミン、シャワーを浴びておいで」

「う、うん…」


ユノが悲しそうだ…


ほどなくして

パタンとガラスドアが閉まる音がして
チャンミンがシャワーから出てきた

まだ濡れた髪

可愛い唇

不思議そうにユノを見るその瞳

チャンミン…


ユノは思わず側に近寄ってチャンミンを引き寄せた

「?」

チャンミンはわけのわからぬまま、
その広い胸に抱きすくめられた

あ…

ユノの熱い吐息

抱きすくめられて、強く抱きしめられて
チャンミンは切なくて涙が出そうになった

ユノ…

今日はどうしたんだろう

あ、

もしかして、腕時計?


そんなにあの時計を喜んでくれたなら…よかった…よね


抱きしめるユノの腕の強さ…その中に

僕を想う…あなたの愛はない


あるのはご褒美をもらった喜び

いや、そんな可愛いものではないか。

報酬を受け取った男の満足感?


チャンミンはユノの胸でギュッと目を閉じた
ユノにその表情を晒さないように

ユノはそっと身体を離して、チャンミンを見つめた

ユノ…?

たまに見るユノのその瞳に
僕は勘違いをすることがある

ユノはゆっくりと顔を近づけて
僕の頬に優しく手を添えて

フッと口付けたかと思ったら
襲うように食らいついて来る

その突然ほとばしるような熱に

僕は勘違いをする

もしかして…

もしかして…本当に僕を想ってくれたなら
この情熱が僕への想いなら

どんなに幸せだろう

激しく口付けられているチャンミンの目尻から
一筋涙が流れた…



いつものように

週末はセレブの集まるサロンへ2人は連れ立って行く

長身でスタイルが良く、頭の小さな2人が
バッチリと決めた様子はかなり目立つ

けれど

サロンの様子がいつもと違う

なにかざわついていて、落ち着かない

友人がチャンミンを見つけると
慌てて近づいてきた

「チャンミン!」

「ひさしぶりだね、珍しいじゃない?」

「イースト銀行の新しい頭取が来るってさ」

「えっ?」

チャンミンの表情が一瞬硬くなった

「チャンミンも挨拶するだろ?」

「もちろん」


ユノが初めて見る、チャンミンの大人の表情だった。

「ユノ、先にカクテルを飲んでいて」

「わかった」

ユノはカクテルは頼まず、部屋の隅のソファーに腰掛けた

チャンミンの慌てぶりがすごく気になったけれど
気にしていない風を装い、軽く返事をして腰掛けたのだ。

部屋を見渡せる位置にあるこのソファ
見えるのは、いつもと違う表情のチャンミンだ。

入り口から既に何人かの取り巻きを従えて
イースト銀行の若い頭取がサロンに入ってきた

そんな頭取をみんなで囲みはじめる。

チャンミンはみんなに負けないように
自分もなるべく頭取の前へ出ようとしている。

不器用だな。うまく回り込んで一番前に出たらいいのに

薄く微笑んでいるのはいつものことだけれど
その笑みには緊張がある

大手企業のお気楽な三代目と言われて
何も考えてないワガママ坊ちゃんと思われているけれど

ちゃんと跡取りとしての仕事をこなそうとしているのか

チャンミンがなんとか頭取の前に出ることができて
ユノはホッとした。

チャンミンはきちんと挨拶をして
自己紹介をスマートに行なっている


その姿を見ていたら、ユノはたまらなくなって
ソファから立ち上がった

長い脚で大股にフロアを横切り
まわりの視線を集めていることになんの興味も示さず

ユノはサロンを出て行った

外ではソクジンが車で待機していた。

ユノに気づくと、ソクジンはドアを開けてくれた。

「ユンホさま、おぼっちゃまは?」

「俺にユンホ様なんて、そんな風に言わなくていいよ」

「いや、おぼっちゃまの上司であられますので」

ユノはため息をついて、シートに深く座り込んだ

「上司って言ったって、チャンミンのコネだよ。
俺の実力じゃない」

ユノの彫刻のような横顔が夜の闇に陰影をハッキリと浮かび上がらせている

少し寂しそうな…横顔


「営業部第一課の課長として、ユンホ様はとても評判がよろしいですよ。異動されて1ヶ月とは思えません」

「……そうだと…いいけど」

「そうでございますよ」

ソクジンの優しい声に、ユノはとても切ない気持ちになった。

「俺は…チャンミンの役に立っているんだろうか…」

ぽつりとユノが言った

「ユンホ様…」

「チャンミンの金で生活している俺って
こんなのチャンミンは軽蔑してるだろうね」

「……」

「俺は…なにをやっているんだろうな…」

「チャンミン様は…」

「ん?」

「気楽に生きているように見えますが
とても必死なんです」

「………」

「恵まれているように見えても
生まれた時からまわりはみんな敵で」

「………」

「とても孤独です」

「……」

「どうか、そんな坊っちゃまを
これからも愛して差し上げてください」

「俺が?」

「はい」

「俺は…そんな存在じゃないよ」

「坊っちゃまを…愛しておられませんか?」

「………」


愛してるよ

愛してるけど

「きっと、坊っちゃまはユンホ様に愛されたいと思っています」

「そんな…」

ユノはフッと笑った

「いつも刺激的じゃないとならないなんて
思っていらっしゃるのでしょうけれど」

「……」

「坊っちゃまはユンホ様に安らぎを求めておられるはずです」

とても…そんな風には思えない

ユノはかぶりを振った。

「チャンミンは、そんなの俺に求めてないよ」

「ですが…」

ふいに車のドアが突然空いて、息を切らしたチャンミンの姿が現れた

その表情は怯えているのかと思うほどに真剣だった。

「ユノ!どこに行ったのかと!
出て行くなら誰かに声かけてからにして!」

「あ、悪い」

チャンミンは鼻息荒く車に乗り込んだ

「いや、頭取と話してたから」

「………」


チャンミンは、さっきの頭取とのやりとりを思い出して、シートに沈み込んで目を閉じた


…………


「はじめまして、シム・チャンミンです」

「シム?シムはたくさんいて、覚えきれないよ」

「それだけ、私どもがお世話になっているということですね。」

「君のことはそうだな、綺麗な豹を連れているシム、と覚えておくよ」

「綺麗な豹?」

「あの部屋の隅に座っている美しい豹は君のだろ?」

「あ……」

「ねぇ、シム・チャンミン」

若き頭取が意味ありげに顔を近づけてきた

「あの豹を今度僕にも貸してくれないかな」

「……何をおっしゃるかと思えば」

「僕に頼みごとをする時は、ぜひあの豹と一緒に」


チャンミンは頭取を睨みつけて、ソファに戻った

と、ユノがいない

早速誰かに連れ去られたのかと

チャンミンは焦ってユノを探した


そこへ、チャンミンの子会社を経営する従兄弟に呼び止められた


「チャンミン、連れなら、さっき自分から出て行ったよ」

「どこへ?」

「コートを受け取ってたから、帰ったんじゃないかな」

「ありがと」



あんな薄汚いヤツにユノを渡すもんか

怒りに震えてチャンミンはサロンを出て
車までなぜか走ってきたのだ。


………


シートで目を閉じているチャンミンの顔を
ユノがジッと見つめている


あんな風に仕事モードの姿を見たせいか
今夜のチャンミンは、遠くに感じる

もともと遠い存在だけれど


ソクジンが運転席から声をかけた

「おぼっちゃま、今夜はイースト銀行の…」

「うん」

目を閉じたまま、チャンミンはこたえた

「緊張されたでしょう。
よくお役目を全うされて、ご立派です」

「なんで企業が銀行のご機嫌とりをするんだ?
反対だろうに」

「ぼっちゃま、堪えてください。
イースト銀行は味方につけるべき銀行です」

「そうは聞いてたけど」


ユノに目をつけるなんて、とんでもない頭取だ。

チャンミンは目を開けた。

ユノとバチっと目があったけれど
ユノはサッと視線を逸らした


「今夜、ユノのところに泊まるから」

「チャンミン…」

「ん?」

「今夜は自分の家に帰れ」

「は?あなたが僕にそんなこと…」

「いいから、今日は帰って親に頭取のことを報告するんだ」

「なっ…」

「これは課長命令だ」

「……なんで、今それを発動するの」

「その方がいいからだ」

「………」


チャンミンはぷいと横を向いた

「爺、ユノのマンションより先に僕の家!」

あきらかに不機嫌な声だ。

「かしこまりました」


ユノは悲しかった

今夜は、チャンミンがユノにとって手の届かない存在だと思い知らされた夜だった。

わかってはいたけれど

あのセレブな連中に馴染んで溶け込んでいるチャンミンが、ユノを愛するわけがない。

おやすみ、チャンミン

俺の…チャンミン


チャンミンは黙って車を降りた

そのままスタスタと門へ向かって歩き出してしまい
ソクジンが慌てて追いかけた

門のところでソクジンとチャンミンが少し話をしている

豪華な門

ここから入って、玄関までどれくらいあるのか
そんな風にぼーっと思いを巡らせていたユノは

ふと、チャンミンが車へ戻ってきたことに気づいた

「?」

合図をされて、ユノはウィンドゥを下げた。

チャンミンがウィンドゥの縁に指をかけて
ユノを見つめた。

どこか寂しそうな瞳が潤んでとても綺麗だ

そんな目で、俺を見ないでくれ


何か言ってしまいそうになったユノに
チャンミンがそっと微笑んだ

「おやすみ、ユノ」

「え?」

「あなたの言ってることは、正しい」

「へ?」

思わぬチャンミンの言葉にユノはおかしな返事をしてしまった。

「ユノの言う通り、
僕は、今夜のことを父に報告するべきだね」

そう言ってにっこりと微笑んで、チャンミンは車から離れた

チャンミン…

ユノは喉の奥がツーンと痛くなり
目頭が急に熱くなって焦った


運転席にソクジンが戻ってきた


「おまたせしました、ユンホ様」

「だから、ユンホ様なんていいって」

「……今夜はぼっちゃまを帰してくれて
ありがとうございます」

「………」

「さ、帰りましょう。
おまたせいたしました」

「なぁ、ソクジン」

「はい?」

「俺さ…」

「……はい」


「もう疲れた」

「………」

「………」

「ユンホ様…」

「………」

「ぜひそれを、ぼっちゃまに伝えてあげてくださいませんか」

「いやだ」

「ユンホ様…」

「そんなこと言ったら
もう終わりじゃないか」

「………」

「ごめん、言ってることが支離滅裂だな」

「いえ」

「俺…やめようかな、会社」

「……」

「アハハ…なんだかもう」

「………」

「何がしたいんだろう、俺」

ユノの声は掠れて上ずっていた

ユノは泣いていた

ソクジンはユノが泣いているのを誤魔化せるように
エンジンをかけた




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