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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

そこに愛はあるか〜4〜



街の中心部から少しはずれたところに
昔それなりの著名人が暮らしていたと言われる瀟洒
な建物がある。

それがまるごと会員制サロンとなっていて

夜になれば、その建物に入ることが許されたセレブたちがやってくる。

サロンでは、それぞれが思い思いに集い、酒を飲み、
ビリヤードやたわいないお喋りを楽しむ。

そこに潜む大きなビジネスの種や
玉の輿の相手探しには事欠かないけれど

そこに欲望を見せるような
下品な人間はこのサロンに似合わない

すべての欲はその品の良い仮面の下にひた隠す

生まれた時から全てを所有し、何の不自由もない人間。そんな生粋のセレブがたまに連れてくる美しい部外者たち

ユノはその中でも秀逸だった。


ユノがカクテルを取りに行っている隙に
悪友たちがチャンミンを取り囲む

「今度はずいぶん長いね、ユノさんと。
もしかして真剣な付き合い?」

「は?」

「彼も、チャンミンにぴったりくっついて
他の人間なんて目に入らないみたいに見えるけど」

「ユノが?」

「ああ」

チャンミンは呆れた表情でみんなを一瞥する

「どうしたら、そんな風に見えるんだろうね。
ユノの下心がわからないかな?」

「目的はチャンミンだろ?」


チャンミンは驚いて目を見開いた

みんな、何を言ってるんだ
ユノが純粋に僕を求めていると思ってるのか

チャンミンは呆れた

「何言ってるんだよ、目的は僕の金と地位に決まってるじゃないか」


「そうなの?それだけ?」

意外そうに答える友人にチャンミンは前のめりになった。

「彼は僕が口をきいてウチの子会社にいるし。
実力なんかないけど課長のポストも与えてやった」

「へぇ」

「元々バスケのコーチがしたいからって、オーナーの僕にコネを求めて来たんだよ」

「意外だな、もっとこう…」

「もっと?」

「自分でなんでも切り開いて行くような…
誰かの力なんて借りないようなタイプにみえる」

「そんなの!」

友人の言葉に、チャンミンは思わず声を荒げてしまった

「だ、か、ら!
ユノが僕の側にいるのはね、自分の欲望の為なんだよ。
そのためなら僕の言うことならなんでも聞くし
自分で何かを切り開いていこうなんて、
そんな志はまったく持ち合わせていない人間だよ」

「あ…チャンミン」

友人の視線がチャンミンの肩を越えた方を見つめていることに、チャンミンは気づかなかった

「ちょっとビジュアルがいいからって
それを武器にする、そんな輩だよ?」

「あ…」

「僕もね、そこはちゃんとわかってるわけ。
連れて歩くのにいい感じだし、パーティ映えするし。
ま、寝たりもするけどさ、そこも報酬ありきで…」

「おい!チャンミン!やめろって」

青ざめた友人たちの視線を辿って振り返ると

そこにはカクテルを2つ持ったユノが立っていた

「ユノ…」

友人たちはその場の雰囲気に身動きがとれず
固まっていた

ユノはその空気を読んで、ゆっくりと近づき
カクテルをひとつチャンミンに渡した

「いつものスペシャルをお持ちしました」

口角を片方上げて、下から見上げるようにチャンミンを見つめるユノは顔色ひとつ変わらない

「ありがとう。ライムは絞った?」

チャンミンは上から見下ろすように
ユノを見た

「もちろん」

ユノは居心地の悪そうな友人たちを見回すと
にっこりと優しく微笑んだ

「もしかして、僕がこの王子様に純粋に想いを寄せているとか思われてたのですか?」

「あ…いや…」
「そういうわけじゃ」

みんなが苦笑いで狼狽える

「今、僕が着ているこの服も、住まいも
すべて王子様に用意してもらったものです。
それだけの働きを、僕はきっちりとこなしてますから」

意味深に微笑むユノに、壮絶な色気が漂う

「バスケはできなくなりましたけど
スポンサーへの就職も無事にできて、バスケのコーチもさせてもらえそうで、感謝してます」

そう言ってユノはチャンミンの顎をその長い指ですくうとみんなの前でそっと唇にキスをした。

チャンミンは一瞬目を見開いたけれど
ムッとした顔でユノを見つめた

「なので、もしもっと上を目指せるのなら
他のどなたかを紹介してくださるのも嬉しいです」

気まずさに狼狽えていたチャンミンの友人たちの表情に
ユノへの軽蔑の色が浮かび始める


「もう帰る」

チャンミンがユノを見ずに言った。

「それじゃ」

ユノはニッコリ微笑み、その場を離れたチャンミンについて行った。


残った友人たちは、怪訝な顔をする。

「金目当てって、初めから知ってるけどさ
あんな風にあからさまなのもどうなの?」

「あそこまで言わなくっても…」

「あんな言われ方してもチャンミンが側に置くってことは、あのユノって男、よっぽどソッチが上手なんだろうね」

「自分でもキッチリ仕事こなすって言ってたし。
報酬って言ったぜ?」

「割り切った関係か。」

「ま、いつまで続くかな」

「チャンミン、飽きっぽいしね」



幾分ムッとした表情のチャンミンと
平然として、笑みまで浮かべるユノ

「おぼっちゃまはご機嫌斜めですか?」

ソクジンの運転する車でユノのマンションに向かう車内
ユノはチャンミンの柔らかいクセ毛をいじりながら尋ねる

「別に…機嫌が悪くなるようなことはなにも」

「ならいいけど」


チャンミンはひとつため息をついた。

気分を変えなくては。
今日はとっておきのものを用意したのだ
ユノのために。


マンションに着くと、当然のようにチャンミンも降りて
上質な革で作られた洒落たリュックを背負う

「爺、頼むね」

「…はい。どうか明日の朝には
お戻りになられるようお願いします」

ソクジンは説得などとうに諦めて頭をさげ車に乗った


「チャンミン、リュックなんて背負ってどうしたの?
お前の着替えならウチにあるよ」

「うん、なんでもないよ」

なぜか嬉しそうに笑うチャンミンは
たまらなく可愛い

急に機嫌が良くなったようで
ほんとに気まぐれなやつだ、とユノは思った


心が、この可愛い王子に囚われて正直動けない

俺たちは

こんなに危うい関係で
純粋さなんかまったく持ち合わせていない

わかってる

さっきのサロンでのチャンミンの言葉には
傷ついたけれど

わかっていることじゃないか


ユノは忘れない

バスケチームのオーナーと引退した選手ということで
出会い

たしかに最初はいいコネをつかんだと思っていたユノだった。

それは2人でテレビを見ていた時だった

バラエティで恋愛相談の番組をやっていて
チャンミンがいちいちそれにひとりごとのように答えていた。

「つきあってるからって油断するから」

「謎の部分がなくなったら終わりだよ」

「あー追いかけさせないと。なんで自分から行っちゃうんだろ」


ユノはそんなチャンミンに優しい笑顔を向けた

「ずいぶん手厳しいね
チャンミンはどんな恋愛をしてきたの」

「ぼく?」

「うん」

「恋愛なんかで悩んだことないし」

「え?」

「いいじゃん、その時楽しければ。
それなのに付きあうとか、彼女や彼氏ヅラして束縛したりさ。そういうのが余計嫌われるっていうのに」

「チャンミン…」


「恋愛なんてね、追っかけてる時が一番いいんだよ。
相手が振り向いたらもうそこで興醒めしちゃうんだ」


ヤバイ…


いつも綱渡りをさせて、焦らせて
ドキドキさせていないと

本当はメチャメチャ本気で
愛おしくてたまらないのに

抱きしめたくなる衝動を
ユノは必死の思いで抑えた…



部屋に入ると、チャンミンがおもむろにリュックから
四角い箱を取り出した。

「はい、これ」

「?」

「ちょっと手に入ったんで、あなたにいいかと」

そんな軽いセリフで渡された箱は
思いのほか重く

そのビロードのような黒い箱は
もしやこの間雑誌で見た、あれだ

世界に数個しかない
高級腕時計

たぶん、これ一個で
かなりいい車が一台買えるはず。

こんな高価なものを…

それでもユノは平然とした表情でそれを受け取った


「これ、この間、俺が雑誌で見てたやつ?」

チャンミンはユノの反応を期待しているのか
少し上気した様子でユノに近づいてきた

「そう!いいなって言ってたでしょ」

「これ絶滅機種だよね
世界に何個だっけ?」

「限定って言ってよ。世界に5個」


ユノが無造作に箱を開けると、中から黒く光るクロノタイプの時計が出てきた。

ユノはその時計を指でつまむと
高く持ち上げてじっくりと眺めた

「ふぅん」

半分どうでもいい、そんな顔だ。


さすがのシム家のチャンミンでもこの時計を手に入れるには少し苦労した。

デパートの外商の上得意なはずのに
世界で5個となると、そう簡単にはいかなかった。


それなのに…


先月だったか、
2人でソファーでゆっくりしている時

ユノが雑誌をパラパラとめくっていて
ふとその綺麗な指を止めた

「?」

チャンミンがそのページを覗くと
高級時計ブランドの新作が載っていた。

「世界に5個だって!」

ユノが感嘆の声をあげた

「あんまりこういうの興味ないけど
金具まで黒くてカッコいいな」

ユノが何かモノを褒めるなんて珍しい

「欲しいの?」

「え?俺が?世界に5個だぜ?」

「いいと思ったんでしょう?」

「この100分の1の値段ならね」

「……」


チャンミンは決意した。


手に入れよう

この黒光りした腕時計


チャンミンがこの時計を手に入れるために
どこかの外商が2人くらいクビになっているほどの騒ぎで

それが今、ここにある


そこまでして手に入れた時計を
ユノは不思議そうな顔をして、大して嬉しくもなさそうに見ている

「すげぇな、チャンミン」

「なにが?」

「世界に5個しかないのに、簡単に手に入るなんてさ」

簡単では…なかったけどね…

ユノはまるで他人事だ。
あなたへのプレゼントだというのに


ユノはなにか考え事をしていた

「これだけの金があるなら…」

「あるなら?」

「うーん、いや、なんでもない」

「なに?言いかけたことは、きちんと言ってよ!」

「わかったわかった、俺ならこれを買うだけの金があったら、他に使うって話。」

「ユノだったら、何に使うの?車?」

「人に使うよ」

「人?」

「だれかを助けるために寄付をするとか、
普段お世話になってる人に何かをしてあげるとか。
世界に5個だからって理由でこんなに高価なもの買ったりしない」

「なっ…」


チャンミンは顔が真っ赤になった。


怒りで体が震える

「ま、チャンミンにはなんてことない金額だろうけど」



僕だって、人にお金を使ったんだ
ユノ、あなたにね?

それを…



「………」

「とりあえずもらっとく。」

「今度サロン行くときはしてきてよ」

「その時までに売ってなかったらね」

チャンミンは唇を噛んだ

そして…

チャンミンから高価なモノをもらうたび
ユノの心はどんどん荒んでいった。

これは俺を繋ぎ止めようとしている証

本当はなんにもいらないのに
そう言えない自分の弱さがイヤになる

チャンミン、お前さえいてくれたら
なんにもいらないんだと

そう俺が打ち明けたら
きっとお前は言うだろう

「僕たちは割り切った関係のはずでしょ?」


俺たちに…愛なんかいらないんだ

わかってる

わかっているけれど


ユノはそっとチャンミンの頬に手を添えた

チャンミンが少しビクッとする


「実は時計はそんなに欲しくないんだ」

「え?」

「……」

「あ、この前、サロンでみた新車?
あれが欲しいの?
ユノ、振り返って見てたよね。
僕、知ってたん…」


欲しいのは…

チャンミン、お前だ

そうして、優しくチャンミンの唇を塞いだ




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