プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋〜完〜



「熱いから気をつけて」


あーんとチャンミンに向かって口を開けるユノ

腕を骨折している為に上手く食事ができなかった。
それでもリハビリだと言って、他人の力を借りようとしていなかったユノなのに。

なんて有様だろう

テホは苦笑していた。

ひと口ずつ、ユノに食事を食べさせるチャンミン

「ゆっくり」

「うん」

チャンミンは、毎日ユノの病室へ通っては
なにかと世話を焼いていた

「あのさ、ユノ」

「なに?」

「…毎日、来ちゃってるけど、迷惑じゃないかな」

「なんで?」

「いや、ほかにユノの世話を焼きたい人がいるとか」

「そんなわけない」

「あ、うん、それならいいんだけど」

「毎日、チャンミンが来てくれ」

ユノが爽やかに笑った

チャンミンの顔がパーっと輝く

勘違いを…してしまうよ、ユノ

「うん」

恥ずかしそうに俯く姿は
年月を感じさせない清純さがあった

そんなチャンミンを眩しそうに
見つめながら、ユノは不思議な気持ちになっていた

このまま、また2人で一緒にいよう

もう、自分たちは立派な大人で
まわりを説得しながら、自分の生き方を貫いてもいいだろう。

遠回りをしたけれど
会うことができなかった20代はきっとお互いに必要な時間だったのだ。

ユノに迷いはなかった

17歳の自分に叱咤激励されたことが
ユノの勇気になっていた


それはまた本来の自分でもあった。


「ユノ…」

「ん?」

「ひとつ、提案が…あるんだ」

「提案?」

「あ、えっと、今後のこと」

「あ……」

「なんていうか、あの、これは、
もしユノが楽になるならってことでさ」

「……」

「ユノにもいろいろと今までの生活とか
考えとか、あると思うんだけど」

「……」

「あ、えっと、テホくんからも言われてて」

「チャンミン」

「え?」

「俺と一緒に暮らそう」

「……」

「あ…えっと」

チャンミンはごくりと唾をのんだ

「あの」

「……」

「……一緒に住まないかなって、僕も言おうと思ってて」

「それはよかった」

「あ!なんていうか、退院してもまだ大変だし
それにテホくん、彼女ができたとかで、あの…」

「テホなんかいいんだよ」

「あ…うん」

「俺が、チャンミンと住みたいんだから」

チャンミンが赤くなって俯く


「なんだよ、あいつ彼女と住むのか
じゃあ俺、チャンミンのところに住むか」

「それは!ほんと、なんの問題もないんだ
母さんは再婚して、僕はひとりだし。
ユノと住むことは、母さんには僕がきちんと説明する。
説明するっていうか、説得する」

「ありがとうな、チャンミン
一緒に住まわせてくれ、一緒にいたい」

チャンミンは震えるようなため息をついた

「よかった…」

「説得は、俺も一緒にするよ、大丈夫」

大丈夫

ユノがかつて、よく言ってくれた言葉

「なんだか、僕、緊張して
出会った頃みたいだね」

「そうだな、また初恋のやり直しだな」

「初恋?」

「知らなかったか?チャンミンは俺にとって初恋なんだよ」

「ユノは絶対違うでしょ、僕にとっては初恋だけど」

「こんなに好きになったやつはチャンミンがはじめて」

「……そういう…こと?」

「そして、最後」

「………」

ユノは優しく微笑む

「ユノ」

「ん?」

「もう、死なないでよ?」

「え?」

「僕を1人にしないでよ」

「わかった、大丈夫」



柔らかな風は少しだけ湿り気を帯びて

2人が出会った季節がまたやってくる


木々の青さがその色を濃くする頃
ユノは退院の日を迎えた


テホとチャンミンがユノの身支度を整え、
医師や、看護師に挨拶をすませた


「ユノの蘇生について、学会で発表したいって
医局ではちょっとした話題だよ」

「ドンへも登場させていいなら、いくらでも」

「フフ、そうだよね」


テホがいたずらっぽく2人を見た

「先生、ヒョン、2人に渡したいものがある」

「?」

「なんだ?」

「いいから、そこに2人並んで」

ユノが松葉杖を操って、チャンミンの横に並んだ

「なんだよ」

「これ」

テホは、荷物の中から紙の筒を出した

「あ!」

チャンミンが小さく叫んだ

「そう、これはシム先生から高校の卒業式の後
ヒョンに渡してくれって僕が預かったもの」

「卒業証書を?」

ユノが不思議そうな顔をする

「そうだよ」

そう言いながら、
テホは筒から丸くなった卒業証書をとり出した。

「これみて?」

2人の前にバッと広げられた証書には

シム・チャンミンの名前のところに
「チョン・ユンホ」とマジックで書かれていた。


「これ…」


「シム先生はヒョンと2人で卒業式を迎えたかったんだよね」

「……」

「あの時の先生から、そんな想いを感じたんだ」


チャンミンは唇を噛み締め

ユノは真顔になった

「ヒョンたちを引き離そうとした大人たちへの
反抗だったんだよね、これは」

「テホ」

ユノの低い声

「なに?」

「ちょっと目を瞑ってろ」

「え?」

言うなり、ユノは松葉杖を一つ床に落とすと
いきなりチャンミンの顎をすくって顔を近づけ、キスをした

「あー」

テホは広げた卒業証書で、自分の顔を隠した


ユノはその日、夢を見た


ソウル駅の雑踏の中
17歳のユノは、改札でチャンミンを待っている


一緒に行こう

そう約束はしたけれど

チャンミンはすべてを置いてこれるのか

ユノはずっと考えていた

改札の時計を見上げると、約束の時間はとうに過ぎている…

チャンミンが悪いんじゃない…

ユノはため息をついて、荷物を持って歩き出そうとした

その時

「ユノ!!!」

その声に振り向くと、チャンミンが満面の笑みで
こちらに手を振っていた

「チャンミン…」

「遅くなってごめん!」

「お前…」

「こんなに遅くなっちゃって!ごめんね!
何年待った?」

「遅いよ!12年も待ったんだぞ!」

チャンミンは驚いたような顔をして
そして笑った

「さあ!行こう!」

ユノはチャンミンの肩を抱いて
改札を抜けた


ユノが待ち続けていた改札の柱の陰から

ドンへが2人を見送っていた

やれやれといった笑顔で

ドンへもスーツケースを持って、別の電車に乗っていった。


もう一度チャンスをもらったのだ

ユノの命も

2人の愛も

少し遠回りしたけれど

まだまだこれから






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百海です。

「初恋」最後まで読んでいただきありがとうございます

温かいコメントの数々に励まされ
今回も最後まで描き終えることができました。

ありがとうございます。

このお話に対しての皆様のコメントが
高校生の2人を見守るヌナ的発言が多く

しかもとても親身になっている様子が伺えて
とても嬉しかったです。

また、次のお話でお会いしましょう!








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