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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋36




チャンミンは走った

肺が痛くなるほど走った


こんなに一生懸命走ったのは
あのリレー以来ではないだろうか。


それはテホからの連絡だった

部屋で寝ていたチャンミンの元に

テホから電話がかかってきた


「先生!ヒョンが、目を覚ました!」


集中治療室まで走ってきたチャンミンは
テホの出迎えにも話すことができないほど、息を切らしていた

「ヒョンが…目覚めました…」

「そう…よかった…」

担当医がチャンミンの元に来た

「知り合いだって?」

「はい、そうなんですよ…偶然に」

「奇跡だね、あんなに長いこと心肺停止だったのに
今のところ、皮膚の感覚と記憶は特に問題ないみたいだ」

記憶と聞いて、チャンミンは少し緊張した

自分のことを覚えているということか


「骨折箇所が多くて運動機能は確認できないけれど
痛みも感じるみたいで、ほぼ問題ないかもしれない。
もうすぐ一般病棟でよさそうだ」

「そうですか…本当に奇跡ですね…」

ガラスの向こうでユノは、今は眠っていた

起きている時に会いたかったのにな…

それでも静かに眠る顔に
チャンミンは安心した

治療室にテホが来た

「連絡をありがとう」

「いえ、あー残念だな、今寝てますね」

「うん、そうなんだよ」

「先生、走って来たの?」

「うん…いや、目覚めない可能性の方が
高かったからさ、びっくりして。」

「先生」

「ん?」

「お願いしたいことあるんです」

「?」

「ヒョン、今、僕と住んでいるんですけどね」

「そうだったの」

「僕、彼女と住みたくて」

「テホが彼女??」

「あの、もう28なんですけど」

「そうか、それは彼女がいないと寂しいね」

「でしょ?それにヒョン、退院してもいろいろ大変だから、また、先生にヒョンのお世話をお願いできないかなって」

「それは…」

「大変だろうけど、よかったら引き取ってください!
ヒョンのこと」

「テホくん…無茶だよ」

「いいでしょう?先生にしか、ヒョンの世話なんて頼めないんですよ。僕の彼女がヒョンの世話をする羽目になりそうで。」

「じゃあ、それはユノの了承を得てから、ね?」

「それでいいので、お願いします」

「たぶん、難しいと思うから期待しないで」


「面倒みてくれなんて言ったけど
2人がこれからどうするかは、2人で決めるでしょう?」

「うん…まだ何も話をしてない。
このまま、黙って退院されちゃうかもしれないし」

「でも先生、やり直すでしょ?ヒョンと」

「……」

「もう、ヒョンを1人にしないで…ください…」

「…テホくん…」

「先生も…どうか、もう1人で苦しまないで…」

「……」

「2人とも、十分苦しんだでしょう?」


そう…だね

どれだけ涙を流して
どれだけ苦しんだだろう

それでも、やっぱり忘れられなかった



やがて、ユノは一般病棟に移った

食事もできるようになって
心肺停止による影響はほぼないとされていた

あとは事故による骨折箇所を治療するだけ


その日、ユノは病室のベッドで背を起こし、窓の外を見て考え事をしていた…

ずっと働き続けてきた

こうやってもう特に心配のいらない入院となれば
それは長い休暇のようで、ユノはゆっくり休むのもいいかもれないと思っていた

コンコンとドアがノックをされた

「はい」

ドアが静かに開くと、そこにはチャンミンの姿があった


「あ……」

「こんにちは、ユノ」

チャンミンは少し緊張した面持ちで
静かに病室に入ってきた

「調子はどう?」

「あ、えっと…」


ユノはチャンミンの座る椅子を探した

チャンミンはそばにあった丸椅子をベッドサイドまで引き寄せて座った。

「食事はできてる?」

「ああ、出来てる」

「そう…よかった」

「今日は休みか?」

「そう」

「………」


2人の間に沈黙があった

いきなり、昔のようには話せない

もう12年もたったのだ


「あ、チャンミンが、俺の心臓を動かしてくれたって
テホが…」

「そう、僕が生き返らせた」

「そうか…」

ユノが苦笑した


チャンミンはその笑顔をみて
泣きそうになった

この人が生きてて、こうやって笑うのが見れて
ほんとうによかった


「ありがとう、チャンミン」

ユノが顔をあげて、チャンミンをまっすぐ見つめた

「実は僕、動揺して何も出来てなくて
ドンへに背中押されたんだ」

「ドンへに?」

「ユノを迎えに行けって」

「そうか…」

「亡くなってたんだ、ドンへ」

「ああ、去年」

「残念…だな」


「あいつ、俺にこっち来るなって言ってた」

「え?心肺停止の間?」

「たぶん、そう。チャンミンが迎えに来るからって」

「…そう…なんだ」

「あいつ…俺がちゃんとしないから
心配で天国にも行かれないな」

「僕たちを…心配してくれてるんだね」

「昔から…だ」

窓から優しい陽が差し込んでいる

ユノは窓の方にまぶしそうに顔を向ける


「ユノ」

「ん?」

「あなたが生きててよかった」

ユノがチャンミンに向き直った

チャンミンが自分の襟元から
シルバーのネックレスを引き出して、指にかけ
ユノに見せた

「チャンミン…」

「ずっとしてたわけじゃないんだ」

「……」

「ユノを忘れなきゃと思っては外し
やっぱり忘れられないって悟ってはつけるっていう」

「……」

「そんな繰り返しの12年間だった」

「………」

「わかってるだろうけど、僕はいろんな人とつきあって
幸せになろうって頑張ってみた」

「……」

「だけど、全然無理で、最近は開き直ってこれずっとつけてた。」

「それは、お前、自分を責めすぎ」

「……」

「あの時のお前が全てを捨てて、俺についてくるのは
どう考えても無理だった。
来てくれても、上手くいかなかったと思う。」

「……何もわかってなかった…
幼すぎて、ユノを傷つけた」

「もう、自分を責めるな。
俺も幼かったんだよ」

「あの時、先生もみんなわかっていたんだろうね
僕たちが幼すぎて危険だと」

「……チャンミン」

「……」

「今となっては、僕は、あなたと過ごせてよかったと思ってる。いい想い出をほんとに感謝してる」

「俺は…」

「……」


「俺は…申し訳ないけど、そんな風には思ってない」


「え?」

ユノの言葉に打ちのめされそうになるのを
なんとかチャンミンは持ちこたえた


「俺は、まだ、ソウル駅でお前を待っている」


チャンミンが不思議そうな顔でユノを見た


「待ちくたびれたけど、お前、来てくれたんだな」


チャンミンの目にみるみる涙があふれた


「お前、相変わらず泣き虫だなぁ」

チャンミンは自分の胸をおさえ
シルバーのネックレスに触れた

「………」


「ユノ、あなたを裏切ってしまったことで
僕はたしかに自分を責めたけど」

「……」


「ほんとうは、僕はあなたの元へ行きたくてしかたなかった。」

「チャンミン…」

「あの時、僕は」

「……」

「どれほど、あなたの待つソウル駅に行きたかったか」

「……」


「チャンミン、俺…」

「……」


チャンミンが顔をあげた

「……」

「あの時、お前が来ることは…すぐに諦めた」

「……」

「でも、最後に一目、会いたくてたまらなかった。
会えなかったことが悲しかったよ」


チャンミンの唇がわなわなと震えている

「僕を…」

そのうち、チャンミンの瞳からボロボロと涙が落ちた

「僕を…憎んでなかった?」

「憎めたら、こんなに辛い思いをせずに済んだ」

「ユノ…」

「年月が経つにつれて
お前に全てを捨てさせてテジョンへ連れて行くことが、どんなに無茶かもわかるようになって」

「……」

「いろいろ折り合いをつけて
俺も…お前を忘れて幸せになろうとした。
だから、ネックレスも外したり、つけたり」

チャンミンが真剣にユノを見つめる

「事故の時はネックレスをつけてくれてたよね」

ユノがフッと笑った

「最近は肌身離さず、身につけてた。
もうチャンミンほど誰かを愛せないってやっと気づいて、開き直ってた」

「ユノ…」


「もう一度俺についてきてほしい」

もう

ユノの綺麗な顔が…涙で見えない

「悪いけど、お前の意思は問わないよ」


あの日

一緒に行かれないと

やっとの思いで告げた

身を切られるような思いで、すべてを諦めた


だけど

ユノは迎えに来てくれた

12年目にして僕を迎えに来てくれた






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明日は最終回となります
ありがとうございました!

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