プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋34



< 現在 チャンミン30歳 >


この仕事についてから

人の生き死にというものに感覚が疎くなったと感じていた

病院では、毎日のように子供が生まれ
毎日のように誰かが亡くなる

生物として当たり前だ、くらいに思っていたのに

こんなにも

動揺している…

あなたが…この世からいなくなるなんて

これまで側にはいられなかったけれど

遠くで頑張っているであろうあなたに
いかに自分が支えられていたのか

そして、まだ想いがこれほどまでに強く残っていたのか

今、震えるこの身体が物語っている



慌ただしく、人が出入りしている

チャンミンは壁にもたれたまま、天井を見上げていた

全身の震えがとまらない


ユノが…

亡くなってしまったなんて


僕たちはなんて

なんて残酷な運命なんだろう


器械を外されるユノなんて

とてもじゃないけど、見れない…

どうしてユノの最期を僕に看取らせるような
そんな残酷なことをするの

神さま…

ひどいよ…

背中を壁につけたまま、泣き崩れるチャンミンに
警備員の制服を着たままのドンへがやってきた。

「チャンミン」

「あ、ドンへ…ユノが…もう」

チャンミンの目に涙が溢れる


「ユノを迎えに行ってくれ、チャンミン」

「え?」

「チャンミンしか、迎えに行かれないんだ」

「僕いやだ…ユノの最期なんて見れないよ」

「早く、間に合わなくなるから」

ドンへは座り込むチャンミンをひっぱり上げた

「いやだ!」

「そんなこと言わずに」

子供のように泣きじゃくるチャンミンを処置室まで引っ張っていくドンへ

そこには

管をひとつずつはずされようとしているユノと

まわりにはテホや、ユノと車に同乗していた男が
泣きながら、その様子を見ていた


「大声で名前を呼んで、ユノを起こすんだ」

「そんな」


「会えなくなるんだぞ?
いいのか?」


「………」


「ユノはまだ、ソウル駅で待っているんだよ」


え?


「ユノはチャンミンを、ソウル駅でずっと待っているんだ」


ドンへが後ろからチャンミンの背中をそっと押した


ユノ…


そこには

眠っているような綺麗なユノがいた


僕の…

愛しいユノ…

ずっとあなたを想って生きてきたんだよ


「ユノ?」

チャンミンは点滴だらけのユノの腕に触れた

懐かしい、その肌の感触に
ユノへの想いが溢れてくる

パク医師が気をきかせてくれた

「知り合いなんだよな?
チャンミンが綺麗にしてやって」

ふと

側にいたテホが、ユノが着ていたジャケットを腕に抱えている。

ふと、その中に鈍く光るチェーンを見つけた

「それ…」

泣きじゃくるテホがその声にチャンミンを見た

「これ?…うっ…いつも……ヒョンが…
外さなかった…ネックレス…」


外さなかった?


まさか


チャンミンは思わず、自分の首にある
同じネックレスに触れた


「ユノ?!」

チャンミンが突然大声をあげた

「ユノっ!!!」

そして、ユノの体を激しく揺さぶった

「シム、どうした?!」

パク先生がチャンミンを止めようとした


「ユノ!!!!」

グラグラとユノの体を揺さぶった


「先生…先生!ちょっと!」

機械を見ていた看護師がパク医師を呼んだ

「なんだ」

「あれ!」

心臓のリズムを示す細い線が、ほんの少しかすかに動いた

「そんなことあるわけない。
たぶんシムが揺らし過ぎて、誤作動起こしてるんじゃないのか?!」

「そんなことないですよっ!」

「だ、だよな、でもありえない」

「でも…」

また、その線が動いた

数字も表示されている

「時間が経ち過ぎているのに!」

「でも、先生!」

看護師たちが騒然とした


「ユノ!!!」

チャンミンも狂ったようにユノを揺り起こした


間に合うなら、もう一度

あなたが待っていてくれるのなら



「もう一度これを打って」

突然医師としての冷静さを取り戻したチャンミン

「はい!」

看護師たちが慌ただしく動き出す

パク医師とチャンミンは無駄のない動きで
もう一度ユノの蘇生に挑戦した

テホたちは看護師に外に出された

「あの!ヒョンは!」

「再び心臓が動き始めました。
一旦ここでお待ちください」


同乗者の男が泣き崩れた

「どうか!ユノさんを助けて!
俺が発注ミスなんかしなきゃ、ユノさんはあんなにスピードを出さなくてすんだのに…」


「ヒョン…」

テホはチャンミンの表情を変えたそのネックレスを
思わず握りしめた


ヒョン

起きないといけないよ?

あなたがずっと恋い焦がれて
想い続けてきた、その人が

今、あなたを救おうと懸命になっている

会いたかったでしょう?

僕はずっとヒョンの気持ちをわかってたよ

どんな綺麗な女性に言い寄られても
長続きしなかったヒョン

あなたが選ぶ人はその誰もが
どこか先生に似ていた

ため息をついて、空を見上げるヒョンは
見ているこっちもつらかったよ

真面目に働くようになったヒョン

でも時に爆発したように自堕落になる姿をみて
先生がいてくれたら、って思ってた

僕を大学にやるために
きっとヒョンは先生と別れる道を選んだはず

僕はヒョンにしてあげられるのは
たったひとつ

先生とヒョンを祝福してあげることなんだ


ヒョン

ヒョン、みた?

先生の首に、このネックレスと同じものが光ってた

2人ともお互いを思い続けての長い年月

そんな風に、寝ている場合じゃない



看護師がテホの元へやってきた

「お兄さんの心臓は少し動いては、また止まってしまうんです。今はなんとも言えません。ここでお待ちになりますか?」

「はい、待ってます。
兄が起きたら、渡すものがあるので」


同乗者と看護師が驚くようにテホを見た

でも、看護師は微笑んだ

「そうですか、じゃあ、渡せるよう
最善は尽くします」

「お願いします」


処置室では懸命な蘇生措置が行われていた

チャンミンが合図をしながら
ユノの心臓にショックを与える


「開胸します」

「シム!落ち着け、無茶するなよ」

「準備お願いします」

「もし、万が一蘇生したとしても
脳がどれだけ損傷しているかわからないんだぞ」


「そうしたら、僕が一生面倒みます」

チャンミンがキッパリと言った


「シム…」

「お願いします、力を貸してください」

「……」

「僕の…大事な人なんです」

「……」

「……」

「準備ができた、急ごう」

「ありがとうございます!」



チャンミンは思い出していた

はじめて会った教室
ニヤリと笑うユノ


体育祭の砂ほこりの中、ユノにバトンを渡すあの瞬間

図書館の帰り道に見た夕陽

夏の夜の花火

打ち寄せる夜の海

そして

あなたの唇の感触

空を舞う粉雪

あなたのいない教室

ひとりで迎えた卒業式


ユノ…あなたと過ごしたあの日々だけが
僕の人生だった


それからの僕は、ほんとうにダメだった


でも、もういちど2人で見たあの美しい景色を
あなたに見てほしい

傍に僕がいられないなら、それでもいい


「来た!」

チャンミンが叫んだ

「もう少しだ、安定してくれ…頼む」


ユノが戻ってきた…

ユノの心臓はまたリズムを取り戻した

意識はなかったけれど


ユノが…

チャンミンは大きくため息をついた


早く…安定してくれ…


戻ってきて…許してもらえるなら
どうか僕の元へ…






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