プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋29



ユノは住み込みで働いているスナックで

ママと対峙していた

怒りで震えるその年老いた手

このママには、ユノはどう恩返しをしていいかわからないほど世話になっている。

若くしてこの世を去った息子を
ユノに投影していたママは

まるで我が子のようにユノの世話を焼いてくれ

預けられた親戚よりも愛情を注いでくれた


そんな存在のこの人を
身の置き所がないほどに怒らせているのは
他でもないユノ自身だった。

知らん振りをした親戚に代わって
電話でPTAと話をしてくれた

「仕方ないわね、この子は」と

ヤンチャなユノを可愛くてたまらない、といった風にユノの頭を小突いたその人は
庇ってくれようと、意気込んで電話に出てくれた

けれど

その事実は、

酸いも甘いも噛み分けたほどのママでさえ
衝撃的なことで

そして、許すことのできない話だった。


「アタシの可愛いドンホの部屋で
あんたたち、そんなことしてたってワケね」

「だけど、俺、いいかげんな気持ちじゃない」

「バカ言ってんじゃないわよ
あたしに隠れてこそこそと。
世間様に言えない関係は、楽しかった?」

「そんな…」

「汚らわしい…今すぐ出て行って」

「……」

「あんたなんて、その辺の路地で暮らせばいいのよ
ネズミと一緒にね!」

「……」

「もう、あたしのドンホの部屋からは出て!」

「わかりました。荷物をまとめます」




味方はだれもいなかった

ここまで忌み嫌われるようなことを
自分たちはしているのだろうか

ただ、チャンミンが好きなだけだ

誰かを傷つけようとしたわけじゃない

それなのに…

なぜこうもみんなが敵になるんだ


「アンタの荷物は全部放り出しておくから」


ふと、家のチャイムを鳴らす音がする


その内、その音が立て続けに鳴る


ママは大きくため息をついて玄関へ出た


ドアを開けると、顔を涙で濡らしたチャンミンが
真剣な顔で立っていた

「あ、もしかして、あんた…」

チャンミンは頭を下げた
溜まっていた涙がボロボロっと地面に落ちる

「はじめまして!シム・チャンミンです
すみません、ユノは…」

「チャンミン!」

ママの後ろからユノが顔を出した

チャンミンはユノを見て泣き崩れた

「うう…ユノ…ごめんね、ほんとにごめんね」

「ちょっと、あんた近所に恥ずかしいから
とりあえず、入んなさい」

ママはその酒とタバコでガラガラになった声で
チャンミンを家に入るように促した。

「うう…すみません…」

「座りなさい、そのソファに」

チャンミンは頭を下げてソファに座った

開店前のこの店のソファは
楽しい思い出しかないソファだった。

こんな思いでまた座ることになるなんて
チャンミンの悲しみはさらに増した

ユノが立ったまま、チャンミンを見つめていた
その瞳は涙を湛えて震えている。


「チャンミン…先生に会ったか?」

「うん…」

「誰が何を言ったか知らないけど…」

「もう、みんなが敵だよ、ユノ」

「チャンミン…」


「僕たち、何も悪いことしてない…
僕はたまたまユノを好きになっただけだ」


「あんた…」

ママが難しい顔をして、チャンミンを見つめている

「あんたね、きれい事言うんじゃないわよ。
自分が何したかわかってるの?」

チャンミンはママの顔を真剣に見つめた


「僕はユノを好きになっただけだ」

「……」

そのチャンミンのあまりの真剣さに
ママは一瞬言葉が出てこなかった。


「もし、これがそんなに罪深いなら
その罰をなんでユノだけが受けなきゃなんない?!」

「チャンミン。
俺がそうしてくれって、先生に頼んだんだ」

「ユノが退学になるなら、僕も学校辞める」

「ユノだけが退学なの?どういうこと?」

ママがユノに詰め寄った

「こいつは、医者にならなきゃなんねぇ。
でも、母子家庭だから、招待生ってやつで大学入んないと。でも、これでバツがついたらそれを受けられないんだよ」

「医者って…」

「医者になって…
こいつの親父みたいに早死にする人を無くしたいってさ」

「………」

「そんな夢を俺が壊すわけにはいかねぇだろ」

「だから、あんたが退学だっていうの?」

「俺は…パクさんが来いっていってくれてる。」

「それは知ってるけどさ」

「それが半年早くなるかどうかって話だろ
いつも今すぐでもいいって、言ってくれてたし。
別の何かだっていいんだ」

「ユノ、そこまでユノが犠牲になることない。
医者なんて、ほかの誰がなったっていいんだ
だけど…僕にはユノしかいない」

「チャンミン…」

ユノが震えている

ユノがママに向き直った

「ひとつ…教えてくれよ」

「ユノ…」

「俺たちってさ、そんなに汚いのかな…」

そう言うユノの瞳は澄んでとてもキレイだった。

「俺、誰かを傷つけようと思ったわけじゃない
そりゃ、まわりに言えば驚かれるから言わなかったよ?
だけど…」

ユノは言葉に詰まった

ママは黙っていたけれど、
やっと口を開いた

「悪いわね、あたし古い人間でさ」

「……」

「そういうことなら、パクさんにはアタシからも良く言っておく。それにね、チャンミンくん?あなた大学行きなさい。」

「そんな…」

「ユノがそこまで考えて、こういう風にしたのよ
大人もみんなそれが一番いいって、思ってんのよ」

「いやです」

「チャンミン…」

「チャンミンくん?あなたね、これからずっと苦しむの
ユノだけが不幸なんじゃないわよ。
こうなって、ユノだけが退学になったこと
あなたは苦しみ続けるわ、あなたそういう子よ」

「ううっ…」

「だから、おあいこよ、ね?
大学がんばんなさい、今回のことは忘れて」


忘れる?

ユノを?

チャンミンを?

ママは深くため息をついた

「あんちたち、ここで少し話しなさい
それで出て行ってよ、ね?
アタシは2階で横になってくるから」

そう言って、やつれた顔でママは2階に上がった



「ユノ!」

チャンミンがユノに抱きついた

「チャンミン…ドンへが心配して、俺が寝泊まりできるところを準備してくれてる」

「ここを…出るの?」

「もう、いられないよ、ママを傷つけちゃったしさ」

「うん…」

「チャンミンのオンマはどう?」

「受け入れられないみたい、自分の言いように話作ってて」

「そうか…可哀想にな」

「僕はユノと離れるのはいやだ」

「チャンミン」

「僕も働く、学校辞める」

「何言ってんだよ」

チャンミンの首元にはあのシルバーのチェーンが光る

チャンミンもユノの首に光るチェーンに触れた

「ユノ、僕はユノを信じてる
ユノしか信じてない」

「……」

ユノは思わずチャンミンを抱きしめた

「ただ、好きなだけなのにな」

ユノはギュッと目を閉じた





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