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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋16



やれやれとユノが店に戻ってきた

「重くなかった?」

「昔からだから、慣れてるよ。
時間あるだろ?コーヒー淹れるよ
コーヒー飲めるか?」

「の、飲めるよ」

ユノは笑ってコーヒーの用意をしてくれている。

そのうちいい香りがしてきて、
ユノが白いマグカップを2つ持って、
ひとつしかないソファ席にチャンミンと隣あわせに座った。

「ありがとう」

「なぁ、チャンミン」

「なに?」

「スジンとは、どうなんだ?」

「……どうって?」

「いや、なんていうか、上手く行ってんのか」

「いってるよ」

「そうか…」

「スジンは可愛いし、綺麗だし
話も面白いしさ」

早口でまくしたてるようにチャンミンは話した


「そうか、良かったな」

「うん、やっと僕にも彼女ができて
良かった」

「………」

「………」

「……あれだな」

「?」

「そろそろ、チャンミンも初体験ってとこだな」

ユノが豪快に大きな声で言った

「突然なんの話だよ」

「キスくらいしたんだろ?」

「するわけないじゃん」

「グズグズしてると、スジンはどっか行っちまうぞ」

「キスなんて…そんなのタイミングとかだってあるだろうしさ」

「そんなのないよ、したくなったら
キスしよって言って抱きしめんだよ」

「ユノはそうかもしれないけど…っ!」

いきなり、チャンミンはソファに座ったまま、ユノに抱きしめられた

「!!!」

ユノがチャンミンの耳元に唇を寄せる

「キスしたい、しよ」

「なっ!!!」

ユノの息がチャンミンの耳の中に入った

それはチャンミンの身体の奥深くまで
電流のように走り抜けて行った

「なーんて、さ。こんな風に」

そう言ってユノは突き放すように
チャンミンから離れた

「……」

チャンミンはいい香りのコーヒーを前に
完全に固まってしまった

本当ならここで、お返しに抱きついて
キスしよ?なーんてねww
そんな風に言えればいいけれど

とてもじゃないけど、チャンミンはそんなことできない

「おーい!冗談だよ、チャンミン」

硬くなってしまったチャンミンをユノが揺さぶった

突然チャンミンがキッとユノを睨んだ

「キスくらい…そんなのいざとなれば
簡単だよ!」

チャンミンは意地を張って大きな声を出した

「へぇーしたこともないくせに
スジンの方がうわ手だぜ?」

「………」

「……したことないんだろ?」

「………」


ユノが前のめりになって、
下からチャンミンを見上げるように見つめてきた

「俺が教えてやろうか」

「なにを?」

「だから、キスだよ。
スジンを骨抜きにするようなキス」


「………」

「………」


2人しかいない小さなスナックの店内

何も聞こえない時間が流れる

閉めたシャッターの向こうで
微かにだれかが挨拶をしている声

バイクが走り抜ける音

そんなものが、まるで小さく音を絞ったテレビの音声みたいに他人事だった

2人は暗い室内で見つめあった


視線は優しくない

お互いに対戦相手を見つめるような視線

ユノがそっと動いた


ユノはゆっくりとチャンミンの頬に触れた

「こうやって…相手の顔を優しくホールドするだろ…」

ユノの顔が近づいて来る

その節だった綺麗な両手が、チャンミンの頬を包む
触られている頬が火傷しそうに熱い

チャンミンの耳には自分の鼓動しか聴こえてこなかった

全身の血が顔に集まっている気がする


このまま、どうなるんだろう!

まるで魔法にかけられたように動けない!


チャンミンは体を動かすこともできなければ
言葉を発することもできず

ユノが顔を斜めに傾けた時には

息をすることも出来なくなっていた


神さま!

僕はどうしたら!


目の前にユノの綺麗な鼻梁がある

目を伏せたユノのまつげが自分のそれに触れそう…



チャンミンの唇に想像よりも柔らかい
そして少しカサついた何かがそっと触れた

それは一度離れて、もう一度触れた

さっきよりも少し圧があった

そしてまた離れる


息が出来ない


ユノが顔の角度を変えて

一瞬、チャンミン、と囁いたような気がする

次の瞬間

食べられてしまうのかと思うほど
ユノが激しく口付けてきた


!!!!!


きつく抱きしめられて

逃げることも出来ず

チャンミンの思考回路は完全に停止した


そんな中でも、チャンミンは思った


全然嫌じゃない…

ずっとユノにこうされたかった自分がいる


けれどユノの柔らかい舌が入ってきたとき

チャンミンはびっくりして、
咄嗟にユノを弾き飛ばした


ユノはパッと悟ったようにチャンミンから離れた


チャンミンは、全身を震わせていた

「な、なに……」

はぁはぁと荒い息をして、でも言葉にならないチャンミン

ユノはフッと笑ってソファから立ち上がった


「わかった?こうやればいいんだよ」

「……」

「あとな、ひとつだけ。
お前、キスするときは目を閉じろ」

「……」


チャンミンは両膝に手をついて
自分の鼓動と呼吸が落ち着くのを待った


何分たったのだろう

チャンミンの唇に、まだユノの感触が
リアルに残っている


ユノは困り果てて、またソファに座った


「あ…悪かったよ…」


ユノは考えてみれば、チャンミンは誰ともキスをしたことがなかったと…

だけど

スジンとキスをするチャンミンなんて
想像するだけでハラワタが煮えくりかえるほどムカつく

衝動だった

衝動だったと言って許されるとは思わない

許されなくてもいい、とさえユノは思った


そういう意味では
自分がチャンミンのはじめてのそれを奪ったのに

ユノは何もうれしくなかった

きっとチャンミンは…イヤだっただろう


途中で止まらなくなってしまった自分を
ユノは憂いた

取り返しのつかないことをした自分を
ユノは悔やんだ


「謝れば済むって…そんな…」

チャンミンの手の甲にポロポロと涙がこぼれた

「あ…チャンミン…」

チャンミンは立ち上がって、
ユノの真正面に立った

その大きな瞳は怒りで震えている

涙が次から次へと頬を伝って流れて行く

「俺…」

そう言いかけたユノの頬に強烈なビンタが襲った

!!!

チャンミンがドアを叩きつけるように激しく閉めて
家を出て行った…



ユノは燃えるように熱い頬をさすって
ヘヘッと悲しく笑った

なんだあいつ

キスしたくらいで泣きやがって
あんなに怒ることないだろ

なんだよ…


チャンミンは自分というものを根こそぎ揺さぶられ
どこかに叩きつけられような
そんな衝撃に動揺が収まらなかった

何が…驚いたかって…

キスを…望んでいた自分だった

見てはいけない夢は
見たくてたまらなかった夢は

これだっただろ?と

だれかに見せつけられたような

そんな衝撃だった


チャンミンはスジンに電話をした

スジンにキスをしよう
そんな可笑しな決心をチャンミンはして
そうしてスジンと会った


「どうしたの?怖い顔してるよ、チャンミン」


ずっと黙っているチャンミン

困ってしまった

目の前にいるこのスジン
すぐに呼び出しても、完璧にメイクを施すスキル

この人工的なまつげがなかったら
一体どんな顔なのだろう

そんな風に思うと、目の前にユノのまつげが
フラッシュバックする

こんなに可愛いスジンなのに、キスしたいだなんて
まったく思えない

結局たわいない話をして
スジンと別れた


自分の気持ちから逃げようとすればするほど
その思いがはっきりしてくる

チャンミンは自分で作った迷路の中で
彷徨っていた






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