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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋 7



チャンミンはそのまま、図書館に行った

やっぱり、僕はここが落ち着く
ふっと安堵のため息をついて、勉強室に行くと

チャンミンが貸した化学書で、テホが勉強をしていた。

「あ、チャンミニヒョン、久しぶりですね」

「うん、今リレーの練習でね。」

「すごいな、リレーの選手なんだ」

「僕が選手にさせられるほど、足の遅いクラスなんだよ」

「なるほど、でもラッキーですね」

「なんで?」

「だって!そんなクラスじゃなかったら
リレーの選手になんてなれないじゃないですか」

「でも学年全体でみたら、ビリなんだよ。
ほかのメンバーはそうでもないけど、僕だけが極端に遅くて」

「選抜メンバーとヒョンの間に誰もいなかった?」

「そういうこと。だから、みんなに迷惑かけてる」

「僕の兄さんがよく言ってます。
一生懸命やってるのはみんなに伝わるって。
それで、一生懸命やってきたことは、自分の自信になるって」

「…シンプル、だね」

「ほんと、ヒョンはアタマ悪いから
言うことはなんでもシンプルなんです」

「でも、なんか…逆にわかりやすいけど」

「言ってることは、なるほどって思います」

「うん…あ、勉強の方はどう?」

「それが、躓いてて…」

「え?どこ」

「ここから、先にいけないんです」

「あーそうなんだよ、みんなそう。
見方を変えるんだ、いい?」

2人は実り多い時間を過ごした




勉強を終えて、2人で図書館を出た。

「今日は教えてもらってありがとうございます」

「いや、大したことないよ。
僕もなんか基礎をやり直せてよかったかも」

「それならいいんですけど、迷惑だったかなって」

「よかったらさ、勉強教えるよ」

「えっ?でも、ヒョンだって勉強あるのに」

「うん、わからないところを教えるくらいだけど
今日やってみて、ほんと基礎の見直しになって、
僕にとってもすごくいいと思って」

「ありがとうございます!
ぜひ、お願いします!」


テホと別れて、チャンミンは校庭から逃げ帰ったことが
恥ずかしくなってきた

頑張ることが、自信になる

そうかもしれない、ビリだって一生懸命やった結果なら
自分も満足かも…



翌朝、バイクを走らせ、いつものようにユノがドンへを乗せて登校する。


「なぁ、ユノ、ちょっと駐めて」

「なんだよ、遅刻すんぞ」

「あれ見ろよ」

「あ?」


ドンへの指差す方向には
河原を走るチャンミンの姿があった


「チャンミン…」


ジャージにTシャツ、リュックを背負って走る

「自転車通学やめて、走ってんだな」

「ってかさ、リレーは短距離なんだから
あれって違くね?マラソン大会じゃねえんだよ」


「昨日さ、チャンミン帰る時泣いてた」

「………」

「頑張ろうとか、チャンミンなりに思ってんだろうな」


ユノは走るチャンミンの姿をじっと見つめていた

スッキリと細身の長身のチャンミンが
軽やかに河原を走って行く

視線を少し前方におきながら
眩しそうにするその横顔がとても綺麗だ


ハッと我に返ってユノはドンへに言った

「もう遅刻するから行くぞ」



************


<チャンミン 23歳 初夏>



ガバッとベッドの布団を剥いだ

暑いな

あたりを見渡すと、テーブルにはビールの空き缶が散乱し、ツマミがぶちまけられている

あー

数人がその辺に酔いつぶれて転がる

じっとりと蒸し暑い
酒の匂いと、なにやら発酵しているような匂い


チャンミンはよろよろと起き上がって

カーテンを開け、窓を開けた


さわやかな風が、チャンミンの髪を撫でる

室内の不健康な図とは別世界の外の情景


階下を見下ろすと、ジャージを履いた高校生が
わいわいと騒ぎながら歩いている

なんでジャージなんだろ

季節的に体育祭ってとこか。

ふいに後ろからチャンミンの腰に手が回される

「おはよ、チャンミニ早いね」

そう言ってチャンミンの頬にチュとリップ音がした

「おはよ、スンギ」

そう言って、チャンミンも振り向いてその男にキスをする

ふと

靡いてきた風の匂いが、あの日を思い出させる


「チャンミン、お前が一生懸命走るなら
俺が絶対挽回してやるからな」


ユノ…

振り向いて室内を見れば
自堕落な生活が一目瞭然だ

僕は今…あの日のあなたに恥じない生き方をしてるだろうか…


「チャンミン、ウチ行こうよ、シよ?」

男がチャンミンの耳元で囁く

「うーん、バイト行かなきゃ」

「休んじゃいなよ」

「来週からテストでバイトできないからさ」

「もしかして、テストだからって勉強するつもり?」

男がクスクスと笑った

「スンギ…」

「ん?」


「別れよっか」


「……」

「楽しかったよ」

「……あっそ」

「………」


「チャンミンってとっかえひっかえとは聞いてたけど
ほんとだね」


こうやって、なにかの拍子にユノを思い出す
そして、あなたを忘れられない自分にうんざりするんだ

今頃あなたは、やっぱり変わらずにユノでいるんだろうね…



***********



体育祭当日


プログラムは順調に進み
いよいよ、最後のクラス対抗リレーとなった。

まずは1年生からスタートし、
3年生のリレーが体育祭の花となるのだけれど

その年の2年生は異常な盛り上がりを見せていた

ユノがA組のリレーメンバーに召集をかけた

「いいか、俺たちは今日までキッチリと練習を積んできた」

「おう!」


チャンミンはドキドキしていた

ユノの腕が自分の肩に乗っていた

ぎっしりと筋肉が詰まったような、
ハリのある逞しいその腕

肌が触れるうなじが熱い

「チャンミンも朝練しながらがんばってた」

「え?」

知ってた?


チャンミンがユノを見ると、
その強い視線がチャンミンを捉える

そうか、あれだけ通学する生徒がいる中走ってたんだから、わかるか。


「お前、あれだけ朝練したんだから、自信もてよ」

「う、うん…」

「いいか?
たとえ抜かされたって気にするな」

「うん」


「チャンミン、お前が一生懸命走るなら
絶対俺が挽回してやるから」


ユノ…

その切れ長の瞳が
強く温かくチャンミンを見つめる


「わかった」


通りがかったB組がその円陣を見て笑う

「なにかと暑苦しいねぇA組さんたち」

振り向いたチャンミンが円陣から離れて
生徒に向かって行った

「挑発に乗るんじゃねぇ」

思わずユノがチャンミンを追った。

チャンミンが先日自分をからかったB組の第4走者の元に詰め寄る。

「なんだよ、転校生」

「なにがあっても、君には負けない」

チャンミンが至近距離まで詰めた

「へぇ」

「今日は、君には絶対抜かされないから」

大きな瞳でチャンミンが相手を見下ろした
その凄みに相手も引いた

「お、おぅ、やってみろや」


チャンミンがふんと鼻を鳴らし
もう一度睨みつけてから振り向くと


そこに腕組みをしたユノがいた


「挽回してよ?僕が順位をキープしておくから!」

「まかせろ」

ユノが爽やかに笑った


久しぶりに見る、チャンミンへ笑いかけてくれた
ユノの笑顔だった

チャンミンの胸の奥がなにかギュッと掴まれたように
痛くなった


ユノの笑顔に誓う

僕、頑張るよ



リレーが始まった。

5クラスでの対抗

ミノがなんとか3位をキープ

追い上げられたところで

第2走者

ここでなんとかギリギリ4位を保つ

すごい声援だ

A組担任のキム教諭が、チャンミンとユノのところまできた

「お前ら、死ぬ気で走れ!
そうしたら、何位だっていいからね!」

「はいっ!」

チャンミンは力強く答えた

「絶対1位とってやるから見てな」

ユノは得意げに笑う


そして、いよいよ順番が来た


A組の第3走者が4位を保ったまま、チャンミンにバトンを渡した

「行けっ!」


チャンミンは走った

とにかく何も考えずに走った

右にB組のアイツの姿が視界に入る

追い上げてきたんだ

悔しい!

絶対、負けるもんか


ユノ…

僕はユノに誓ったんだ!

チャンミンが土を蹴る足に力を込めた


視界からB組が消えた


「チャンミンやった!行けー!」

そんな声援がかすかに聞こえる


わずかだけれど、A組とB組の走者に差がついた

いつもなら、ここでハデに差をつけられて
見るも無残なビリだったチャンミン

目の前に3位の走者を捉えるまでになった


やがて、ユノが見えた


バトンを受け取る体勢のまま、少しずつ前に詰めるユノ

その瞳はチャンミンを真っ直ぐに見ている

黒い瞳が光る

チャンミンはその一瞬に思った


ああ、僕は…この人が好きだ

素直にそう思った


チャンミンは前のめりに転びそうになりながら
ユノにバトンを渡した

ユノはそれをしっかりと受け止め
前を走る3人に向かってすごい速さで挑んでいった


「チャンミン!すごい!やったね!」

ミノとキュヒョンがタオルを持ってチャンミンに駆け寄った

チャンミンは肩で荒い息をして
最後の一周を走るユノを見た

ユノは既に3位を走る走者を抜かし、2位の走者に迫っていた

「ユノ!すごい!」

大声援の中、ラストのストレート、ユノは1位の走者と肩を並べた

「ユノ!!!」



ユノも何も考えずに走った

目の前の走者はすべて邪魔だ

すべて抜かしてやる

ユノの頭には、河原を走るチャンミンの姿があった

あんなに一生懸命

アイツ頑張ってたんだ

俺は挽回してやるって約束したんだ



チャンミンは走るユノを見つめた

その無駄のないフォーム
誰から教わったのでもない、生粋の運動神経の良さ

ユノの真剣な表情がほんとうにカッコよくて

チャンミンは震えた


チャンミンはみんなと、ゴールでユノを待つ

凄まじいユノコールの中

ユノが自分だけに向かって走って来る感覚があった

え…

チャンミンに向かって、ユノが走って来る

ユノ!


ユノはゴールの白いテープの向こうで
立ち尽くすチャンミンに向かって走った


ああ、もしかして俺は

コイツが好きだと思ってるのかもしれない


その大きな瞳に
可愛い笑顔に

惚れたのかもしれない


ユノは白いゴールテープを腹に感じたけれど

驚いたような顔のチャンミンに抱きつくようにしてゴールした






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