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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

初恋 6



チャンミンはその日の帰りも図書館に寄った。

どうにも気になる…

ユノがチャンミンの最初の友達になりたかった。

ドンへの話が本当かどうなのか、
もしそうなら、少し嬉しいと思う自分がいた。

悶々とした思いを振り払うように
チャンミンは勉強に没頭しようと思った。

その日も、あの中学生の男の子が勉強室に来ていたけれど、どうも様子がおかしい。

そわそわと落ち着きがなく、何度か本棚を見に行っては戻って来る

中学生の広げた参考書の中に
あの化学書がないことにチャンミンは気づいた。

借りられてしまっているのか。

可哀想にな。

思い切って、チャンミンは静かに声をかけた

「ねぇ君、いつもの化学書がないの?」

男の子はびっくりしたようにチャンミンを見た
そして、こっくりと頷いた

「はい…借りられちゃってて…」


この子になら

お小遣いを貯めて買った僕の化学書だけど
この子なら大事に使ってくれそうだな

もう、僕は使ってないんだし…


「あのさ、僕、あれと同じ本持ってるんだ。
良かったら使ってくれないかな」

男の子はびっくりして、首をブンブンと横に振った

「そんなことダメです、あの本高いんだし」

「でも、もう使ってないんだ」

「でも、高価なものもらったりしたら
僕、兄に叱られます」

チャンミンはクスッと微笑んだ
ピュアな感じがとても好感が持てる子だ。

「あげるんじゃなくて、貸すっていうのはどう?」

「えーでも」

「それなら、お兄さんに怒られないでしょう?」

「………」

「ね?」

「…いいのかな」

「いいよ、貸すんだから」

「じゃあ…借りようかな」

切れ長で黒目がちの瞳で上目づかいにチャンミンを見ている。

「明日、持ってくるよ。
ここにいるでしょう?」

「はいっ!」

思わず大きな声で答えてしまったその子に
遠くの席の学生が人差し指を口元に持っていき
静かにするようにジェスチャーをした。

チャンミンと男の子は顔を見合わせて
バツ悪そうに微笑んだ


そして、その日は2人で図書館を出て
併設されている公園を歩いた


「シム・チャンミンです。高校2年」

「チョン・テホです。中学3年です」

「お!受験生?」

「はい。招待生を目指してて」

「僕も、大学の招待生を目指しているんだ」

「大学の?すごい」

「国立の医学部か、私立医学部の招待生」

「すごいなー」

「ウチ、母子家庭でお金ないからさ」

「僕の家もですよ?
母子家庭ってわけじゃないけど、いろいろあって」

「そうなんだ」

「小さい頃、両親が亡くなって、兄と親戚の家に預けられたんですけど…預かりたくなかったみたいで。
やっぱり、お金かかるのは困るみたい」

「そうか。。」

「兄が、まだ高校生なんですけど、住み込みでバイトしてくれて僕の分も学費稼いでくれてるから、そんなに甘えられないし」

「それじゃあ、お兄さんに化学書買ってとは言えないよね」

「言えません!でももらったりしたら、もっと怒るから」

「そっか。アハハ。
あれ?お兄さんは住み込みなの?」

「はい。叔母たちと相性悪くて」

バツ悪そうにテホが笑った

「でも、いいお兄さんじゃないか。
勉強教わったりできるといいね」

「え?ウチのヒョン??」

「うん…高校生でしょ?」

「ダメダメ、ヒョンは勉強なんて…
脳ミソが筋肉のヒトだから」

2人の笑い声が公園のさわやかな風に乗っていった



学校では、もうユノはチャンミンにはまったく興味がない様子だった。

挨拶をすれば、テキトーな感じで返ってくるだけ

目を合わせることもなければ
もうチャンミンを構おうとすることもない

チャンミンもキュヒョンやミノと楽しい時間を過ごしたり、それなりに学生生活は充実していた。


学校は体育祭の準備が始まっている


体育祭の花といえば、最後のクラス対抗リレー

そのメンバーをタイムから教師が選んで行く

今日はその発表があるということで
クラス全体が浮き立っていた

「ウチのクラスって、そんなに足の速いコいないよねー」

「ま、アンカーはユノでしょ?ドンへは走るのはちょっとだし、ミノと、あと誰?」

女子も予想をしにくいほど、
このクラスは足が遅い。特に男子。

先生からも「苦肉の索でした」との言葉がでるほど
人選には苦戦したらしい

結局、妥当な線でアンカーがユノ、そしてミノ、あと2人選ばれて、なんと最後がチャンミンだった

名前を呼ばれて、チャンミンは驚いて顔をあげた

「えっ?!僕ですか?!」

「そうよ。
確かに他のクラスなら、落選だけど、
このクラスではタイム的には5番目なの」

「そ、そんなのムリです!
僕、小学生の頃からリレーの選手なんてやったことないし」

その言葉にユノが大げさに頭を抱えた

「あーあ、ウチのクラス、ダメじゃね?」

「ユノ?」

キム教諭の眉が釣り上がる

「なんだよ」

「あんた、他のメンバーのせいで
うちのクラスが勝てないとか言わないよね?」

「は?」

「アンカーのユノが頑張ればいいのよ」

「なんだよ!それ!無茶振りだろうが!」

ユノはチラッとチャンミンを見て舌打ちをした


はーーーなんだか、もう!

チャンミンは泣きそうだった。


キュヒョンとミノがチャンミンを慰めた

「タイムがそれだけあったんだから、
大丈夫だよ、な?」

「……ユノに睨まれた」

「ん?」

「僕が選手になって、負担が増えたみたいで」

「そんなこと…気にすんなよー
大丈夫、ユノすげぇ速いから」


とは言うものの


放課後、リレーの選手だけが集められて練習が行われるようになると
チャンミンだけがギリギリで選ばれたという事実があらわになってしまった。


チャンミン達Aクラスはアンカーをユノとして
タイムの遅いチャンミンを4番手に持ってきた。

一番手のミノから3番手まではそこそこなAクラスなのに
4番手のチャンミンで大幅な遅れをとってしまう

せっかく他のメンバーが3位までを守ってくれても
チャンミンで一気に差をつけられ、ビリになってしまう。

さすがにそこまで行くと、ユノも1位まで戻すことができない。

各クラス、アンカーにはそれぞれ強豪を持ってきているのだ。

何日かその練習が続き、
最終日、とうとうユノがキレた。

「なぁ、シム・チャンミン!
トップを維持しろとは言わねぇけどさ、
ビリはどうにかしてくれよ、あ?」

「……」

ミノが助け舟をだしてくれる

「ユノ、そんなこと言わずに。
チャンミン、少しずつタイム伸びていってるんだから」

「はぁ?伸びてんのか?これで。
俺にはどんどん差が広がってるようにしか見えねぇ
なにしろ、やる気がねぇ」

チャンミンは黙っていた
口をへの字に結んだまま、地面を見つめて黙っている

吹き抜ける風が
校庭の土を少し舞い上げている

ユノが顎をあげてチャンミンを見る

「お前、勝とうとかいう気ねぇだろ」

「………」

「こんなリレーなんてなんの役にも立たねぇとか思ってんだろ」

「……」

「俺、そういう奴、1番ムカつく」

「ユノ〜無理無理」

ユノの後ろからB組の4番走者が笑いながら声をかける

「こいつ、俺が順位抜く時、ため息ついてんだぜ?」

「オメェは関係ねぇよ」

ユノがB組のその生徒を睨んだ

その時

「ため息なんか、ついてない!」

それまで黙っていたチャンミンが突然叫んだ

その場にいたリレーメンバーが全員驚いてチャンミンを見た。

「自分だって、B組のリレーメンバーで1番遅いから4番手のくせに!」

「は?なんだと?」

「自分より下のヤツにしか、強く出れないくせに!」

「あ?もう一回言ってみろ」

詰め寄ってきたB組の生徒とチャンミンの間に
サッとユノが立ちはだかる

B組の生徒はチッと舌を鳴らしてその場を離れた

チャンミンは踵を返して、校舎に戻って行った。

「おい!シム・チャンミン!お前逃げんのかよ!」

ユノがその背中に向かって叫んだ

「………」

チャンミンは歯を食いしばって涙をこらえていた


「チャンミン…」

ミノがその後を追うとするのをユノが止めた

「追うな。イヤならメンバー交代すりゃいい話だ」

向き直ったユノはB組の生徒を睨みつけた

「お前、今度チャンミンに何か言ったら
二度と起き上がれなくしてやる」


その様子をミノが意外そうに見ていた

ふぅん…なるほどね




チャンミンは泣きながら着替えて
カバンを抱えて校舎を出た

「あれ?チャンミン?」

ふとドンへに声をかけられ、顔をあげてしまったチャンミンは思い切りその泣き顔を見られてしまった

「あ……」

「どしたの?」

「……」

チャンミンは唇を引き結び
そのまま走り去った

「あ、ちょっと…」

ドンへはチャンミンの悲しそうな後ろ姿を見送った





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