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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 40



「今日はこんなにたくさんの人が来てくれて嬉しいです」

拍手と声援が聞こえる

「ネットやテレビでも発表したとおり
僕は今日で普通の人になります」

観客はわかってはいても
おーと残念そうな声が客席からあがる


「いろいろ心配させることも多かったですよね?」

チャンミンはにっこりと笑った

ざわめく観客

中には拍手もあった

「最後に、やっぱりこの歌を歌いたいと思います
聴いてください」

チャンミンのギターが優しくメロディを紡ぎ出す


あなたがいれば何もいらない

どうして早く気づけなかったのだろう

今になって

僕にはあなたしかいなかったとわかる

こんなにも愛してる

ずっと一緒にいる約束を
僕はまだ忘れていないよ


心を込めて歌った

チャンミンはあれからずっと
全ての歌をユノに向かって歌っていた

盛況のうちにライブは終わった


チャンミンはギターを抱えてステージ袖へと戻ると
スタッフたちが花道を作って拍手で迎えてくれた

「ありがとうございます」

「本当にありがとう」

チャンミンは一人一人に礼を言った

花道の最後にはギルが拍手をしていた

「おめでとう、シム・チャンミン」

「ありがとうございます。
いろいろとお世話になりました」

チャンミンは深々とお辞儀をした。

スタッフから労われ、みんながそれぞれの仕事に戻る

ギルとチャンミンはトレスタのセキュリティと共に
地下の駐車場へ降りていった

黒いバンに乗り込むと、
チャンミンとギルは後部座席に座った

無線で、ファンが多過ぎて車を出すのは危険だと
待ちの指示があった。

運転手が様子を見てくると言って、バンを離れた
「ここまでファンが来るようなことはないので」

「わかった。大丈夫」

チャンミンがふーっとため息をついて
シートに体を預けた

ギルがそんなチャンミンの横顔を見る

「チャンミンはこんな生活とおさらばだな」

「はい」

「田舎に帰るんだって?」

「はい、この2年で結構貯まったんで
ちょっとした店でもだそうかと思って」

「へぇ、ユノがいたら、一緒にやってたのにな」

「そうですね。」

「チャンミンがトレスタに来て、もう2年か。
ユノがいなくなってもうそんなにたつのか」

「………」

「……遺体は上がらないな」

「着ていたパーカが、あの後上がってきただけ」

「そうか…」

「どこかで生きてると思うことにしてます。
それでここまでやってこれました。
どこかでユノが見ていてくれるんじゃないかって」

「ユノは結局、チャンミンだったんだな」

「?」

「あいつがあんなことするなんて
よっぽどチャンミンを愛してたんだな」

「……」

「放火したとか、ジンをナイフで脅したとか
何を狂ってんだと思ったけれど
ユノは狂うほどチャンミンを思ってたんだ」

「………」

「僕なんかとっくに忘れられていたんだよな
バカだな、ほんと」

「でも結局、僕はギルさんにはお世話になって」

「罪滅ぼし…かな。
トレスタもチャンミンを欲しがってたから
いろいろと揉み消してくれたんだと思うよ」

「ありがとうございます」

「ユノだって、器物損壊まで罪状下がって、結局不起訴になったのに。ジンだって、証言をひっくり返したらしいじゃないか」

「………」

「そんなの意味ないか、もう」

「もし、どこかで会えたら、そう伝えます」

「そうだな、みんながユノを悪く言わなかったって
伝えたいね」

「そう…ですね」


「チャンミン、元気でな」

「ギルさんも元気で」


家に帰り、チャンミンはスマホをタップして
耳元にあてた。


「あ、スンホくん。」

「はい」

「僕さ、今日最後のライブ終わって」

「お疲れ様でした。」

「うん、いろいろとありがとう。」

「結局なんの力にもなれなくて。
あ、今月も送金ありがとうございます。
確認しました。」

「うん、でも、来月からは。」

「わかってます。
なんの情報も得られなくて
ほんとに申し訳ないです」

「そんなことないよ。ユノのパーカを見つけてくれたじゃないか」

「ええ、でも…なんかそれが余計に…」

「………」

「ユノヒョンが…生きてないっていう証拠みたいで」


チャンミンは思い出していた

あの後チャンミンは、毎日毎日漢江のほとりを歩き続け、ユノの痕跡を探し歩いていた

季節が変わっても、それを止めるつもりはなかった。
ユノはチャンミンのすべてだったから。

スンホがユノを探すのを手伝ってくれた。
チャンミンの心のどこかに、ユノは河の底からもう上がっては来ないという諦めの感情が生まれつつあったけれど。

それを認めたら、もう生きていけないような気がして
スンホはある意味、チャンミンの希望だった。


「もし、そうだとしても、ユノは生きていなくても
ユノが僕にそれを知らせてくれたのかなって」

「チャンミンさん…」

「もう諦めろってことなのかも」

「………」

「諦められるわけないのにね…ユノはバカだ」

「ユノヒョンだって、自分のこと、バカだと思ってますよ」

「フフフ…僕がこんなにしぶといとは、思わなかったんだろうね」

「ほんと…すみません
ユノヒョンを見つけてあげられなくて」

「うん、いろいろありがとう」


チャンミンは部屋の荷物を出し終わり
引越しの準備を整えた

最後にもう一度、屋上へあがってみようかと思った。


今日も空は真っ青だ

いつもここが僕の頂点だ


何もない空

ユノとの思い出に浸る時間

あの温かい温もりを、この肌が覚えている

涙を拭いてくれた大きな手

キスをしてくれる唇

優しく細められる綺麗な瞳

チャンミン、とあの甘い声で
もう一度名前を呼ばれてみたい


さようなら、ユノとの思い出

僕のすべて

僕のユノ



チャンミンは屋上から、ユノと暮らしたこの街を見下ろして見た。

バイトしていたコンビニが見える

最後にコンビニのおばちゃんのところへ挨拶に行こうか
そう思って店を訪れた。


「あら!チャンミン」

「僕、引っ越すんだよ」

「テレビで見たわ。引退したのね」

「うん、田舎に戻るんだ」

「いいことだわ。親孝行ね」

「どうだろうね。」

「お母さん、喜ぶわ」

「そういえばね、前に話した僕の父さん」

「え?あ!あのチャンミンを駅に置いて行った?」

「うん、どこにいるかわかったんだよ」

「え?!そうなの?!」

「去年、亡くなってた」

「まあ…」

「どこにいるかは、母さん知ってたらしくて」

「そう……」

「僕がデビューしてね、欠かさずテレビを見てたらしい」

「なんてこと…会いたかったでしょうね」

「さすがにね、それはできなかったみたい」

「お父さんもチャンミンに申し訳ないと思い続けてたのね」

「どうなのかね…」

「きっと、そうよ」

「ん……」


おばちゃんは空気を変えるように笑顔を見せた。

「よかったら、なにか持って行きなさいよ
私が買ってあげるわよ。この店の中のものだけだけど」

「フフ…じゃあね、プルコギ!」

「あーら、やっぱり恋人の好きなもの選ぶんだから」

「へへっ」

おばちゃんはプルコギを袋に包んでチャンミンに渡した。

「ありがとうございます」

「あたしね、昔から、あなたのそうやって
ちょっとしたことでも、ちゃんとお礼を言うところ
偉いと思ってたのよ」

「恋人にも…そこ褒められてました」

「そう、そんなところに惚れたのかもね!」

「へへっ」



翌日、チャンミンは荷物の手配をすべて終えて

キーを管理人に渡して、マンションを出た。


スマホに着信があって、チャンミンはタップした

「キュヒョン?」

「ああ、ご苦労さまでした、チャンミン」

「うん、これから帰るよ」

「僕も、夏休みには帰るから
そうしたら、みんなで飲もうよ」

「そうだね。」

「その前にお前の店がオープンしたらとりあえず
行ってやるから。
このイケメンのキュヒョン様が店の常連になったら
それこそ、大繁盛だ」

「あーなんか先行き不安だなぁ…」


その頃


スンホは走る

何度電話をかけても、チャンミンは話中だ

「ヒョン!なんだよこんな時に!」

スンホは走った



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百海です。
明日は最終回です。

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました(T . T)(T . T)(T . T)
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