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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 38



「僕は、君をこの部屋に連れてきて
役目は終わりだよ」

「どう言う事ですか?」

「わからない?」

ギルが意味深に笑う

チャンミンはギルを睨みつけた

「まったくわかりません」

「みんなやっていることだ。
誰もが社長から目をかけられたくて必死。
いくらでも自分の体を差し出すよ」

「へぇーギルさんもそのひとりですか」

ギルはチャンミンに向き直ってまっすぐに見つめた

「そうだよ。」

「……」

「僕なんてまだ、何も知らなかったからね」

「……」


「でも、ユノが忘れさせてくれた」


その言葉にチャンミンのこめかみがピクリと動く

「これは、ユノも一緒にトレスタに引き取るための
ベッドと食事だ。わかるね。ユノのためだよ」


「卑怯なやつ」


「なんとでも言え。君がそれを拒否したら
ユノは無しだ」

「そうしたら、僕も無しだ」

「そんなことしてみろ、2人とも芸能界にはいられない」


チャンミンの心に、あの真っ青な空が浮かんだ

僕たちの頂点はここじゃない


「観念した?シム・チャンミン。
あんまり押さえつけるとか、そういう手荒なマネはさせないでくれ」

「……」

「仕方ないよ。なにかを得るためには犠牲はつきものだ。」

「……あなたは結局ユノが忘れられないんだ。
ユノはとっくにあなたなんか忘れているのに。
僕とユノを引き離したいだけ」

ギルがチャンミンを睨んだ

「恨みでもいい…
僕はユノの中にいつまでも居続ける」

「狂ってる」

「いいよ、それでも。
ユノから君を奪うことで、一生僕を恨んでくれたら」

ギルは窓辺に行って、夜景を見下ろした

「ユノと2人でこの夜景を見たんだろ
僕を見下した気分はどうだった?」

「……」


チャンミンはセッティングされたテーブルから
ナイフをひとつ手に取った

「僕は、ユノ以外の誰かに抱かれるつもりはないんです」

ギルがチャンミンに背を向けたまま、クスクスと笑っている。

「そりゃあ、そうだろうけど、仕方ないよ」

チャンミンはナイフを持ったまま、ゆっくりと近づく

「僕は、ユノ以外の誰かとキスをするつもりもないし
ユノ以外の誰かに触れさせるつもりもない」

「この夜景をもっと高いところから見下ろすなら
そんな可愛い事は言ってられないんだよ。
そういう世界だ」

「残念ながらギルさん、
僕はもっと高いところを見つけてしまったんです」

「へぇ」

そう言って振り返ったギルは
チャンミンの包帯が巻かれた手で持っているナイフを見つめた。

まるで、こうなる事がわかっていたかのようなギルだった。

「チャンミン……」

「……」

「こんなこと、ユノが知ったら…悲しむぞ
取り返しのつかないことをして、2度とユノと会えなくなるかもしれないんだ」

「だったら、ユノの中から消えてください。
もうユノを苦しめないで」

チャンミンは泣きそうな顔になり
その唇が震えている

ギルはそんなチャンミンを眩しそうに見つめた

「ユノは…僕を忘れられない
僕が今、君に刺されて死んだとしてもね」

「あなたは決してユノを幸せにできないくせに」

チャンミンの顔が涙と共に歪む

「だからなんだ。
苦しむってことは執着なんだよ」

「なんでそんな風に…苦しめる?」

「ユノが欲しいからさ…」

ギルは微笑んだ

「誰がユノをあんたなんかに渡すか…」


チャンミンは何も聞こえなくなった

ユノの笑顔がチャンミンの心に一瞬浮かんだ

ユノは…僕だけの


チャンミンはナイフを手にしたまま、
ギルに抱きつくように飛びついた

「うっ」

聞こえたのは、ギルの一瞬の呻き声

感触もなにも…なかった

チャンミンの目に映ったのは
ギルの肩越しに見える煌びやかな夜景だった。

このホテルで一番いい部屋から見る景色。

それは宝石箱をひっくり返したように煌めき
眩いばかりに輝いていたけれど

あの屋上から見た真っ青な空よりも
それはくすんで見えた

ユノ…僕はあなた以外の誰のものにもならないよ


ギルがゆっくりとチャンミンに全身を預ける

「こんなことして…バカだな…」

へへっとギルは笑っていた

その時

カードキーでロックが外される音がした

「早く…出てけ」

チャンミンの耳元でギルが囁いた


ドアが開き、トレスタの社長が入ろうとするのと同時に
チャンミンは社長を押しのけて部屋から走り出た

「うわぁ!ギル!!!」

チャンミンは背中で叫び声を聞きながら
高級な絨毯の上を走った


どうやって帰ったかわからない

ホテルから人を押しのけてタクシーに乗ったことしかわからない。

チャンミンは泣いた

なんてことをしたんだろう

ユノからチャンミンを奪おうとしたギルが許せなかった

けれど

もう自分はユノと一緒にいられないかもしれない

チャンミンは自分の肩を両手で抱きしめて泣いた
右手の包帯には血がついている

ユノ…ユノ…

会いたいよ…怖いんだ…

どうか、その温かく甘い声で僕に言って

「大丈夫だよ、チャンミン」

僕はその一言で救われていたんだよ

今までも…ずっとね

ああ、だけど

だけどユノ…僕はあなたと一緒にいる約束が守れないかもしれない


チャンミンはなんとか家にたどり着き
シャワーを浴びた

湯の雫が全身を這う

我に返り
自分のしたことがだんだん怖くなって来た

人殺しをしてしまった

身体中が震えだす

ユノ…ユノ…早く帰ってきて!

シャワーを浴び終えたチャンミンは
スマホで芸能ニュースやSNSをくまなく調べた

それでもギルが殺されたというニュースは入って来ない。

しばらくして、ギルが過労で倒れて入院というニュースが入ってきた

え?

撮影中のドラマは降板するかもしれないけれど
3ヶ月後のライブツアーは予定通り

死んではいなかった?

チャンミンはへなへなとその場に座り込んだ

それでも僕は逮捕されるのだろうか

正直、頭に血が上っていてキチンとした記憶はないものの、ギルを刺したのかどうかもハッキリしない。

少し落ち着いて、チャンミンは床に膝を抱えて座っていた

どのみちトレスタに行く話はもうないだろう

けれど、あのままあの部屋にいたら
自分はどうなっていたか。

それを思うとまた身震いがした

ユノには話さないと

不安で怖くて、チャンミンは泣きながらユノに連絡をした。

すぐにユノが出た。


「チャンミン?」

「ユノ!僕、大変な事を…」

「どうした?」

「とにかく会いたい」

「俺も…お前に話があるんだ…」

「家に帰ってこれる?」

「それが…帰れない…ごめん」

「じゃあ、僕がユノのところに行く」

「漢江の橋まで来れるか?」

「行くよ、今から出る」

「待ってる」

「ユノ」

「ん?」

「愛してるよ」

「…俺も愛してる」


その時、部屋のインターフォンが鳴った

「はい?」

「警察のものです。開けていただけませんか」


チャンミンは目の前が真っ暗になった




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