プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 34



ドラマもクランクアップを終えて
ちょっとした打ち上げがあった。

そのメンバーのほとんどがトレスタの俳優だったこともあり、事務所の内部事情などもチラチラと話題になる

だけど、その話のどれもが
チャンミンにとっては羨ましい話ばかりで。

ギルの言った「移籍」という話が
チャンミンの中で「希望」という形に変化していく


チャンミンはジンに頼み込んで
事務所の方針について話し合いの場を作ってもらった。もちろんユノも交えて。

「他の事務所はこういうミーティングを定期的にやっているんです。方向性を考えるために」

「ウチだって考えてるよ。
だからこうやって、アルバム作りと俳優の仕事をうまく組み合わせてるんじゃないか」

「じゃあ、今後は?」

「今後?」

「もっと大きな会場でライブができますか?
俳優として映画に出れる?」

「そりゃオファーが来たらできるさ」

「でも、そんな機会があったとしても
今の僕にはそこまでの力がない」

「そんなことないだろ、な?ユノ」

黙っていたユノが口を開いた

「チャンミンにレッスンの場を作ってほしいんだ」

「お前まで、何言ってるんだ。
チャンミンの力を信用してやれよ。
自信持つようにお前からも言え」

「ジン、ステップアップするためには勉強が大事だ。
ギターも中途半端で終わってるし」

「意味がわかんねぇ。
アンティムも、チャンミンも成功してるじゃないか。
俺のやり方が間違ってないからだ。
仕事をすることが経験になって力がつくんだよ」

チャンミンの成功で、ジンは自分のやり方に自信を持っていた。

話は平行線に終わった。
こうなるのはチャンミンにはわかっていた。

ジンに強く出ないユノにもイライラする。

その後はバラエティ番組で、トークの収録があった。

「失礼しまーす」

ヘアメイクがチャンミンの髪を触ろうとした時
チャンミンがその手を制した。

「ちょっと待って。いつもの担当と違うね」

「あ、店長はほかの仕事が入って今日は私がかわりに…」

「それって連絡あった?」

「いえ…あ、特に個人で専属って契約はしていないかと…」

「なんでいつも君のところに頼んでると思ってるの?
同じスタッフ寄越すのが当たり前。
来れないならちゃんと連絡するべきだ」

「あ…すみません」

「それにさ、僕の仕事を差し置いて行かなきゃならない仕事ってなに?」

元々はっきりした顔立ちのチャンミン。
怒ると凄みが出る

「えっと…」

ヘアメイクはもう泣きそうだ

ユノがヘアメイクの後ろから歩いて来て声をかける

「今はいいよ、後でまた来てくれる?」

「はい、すみません」

ヘアメイクに優しく言って、とりあえず別室で待機させた。

誰もいなくなった控え室
チャンミンに向き直ったユノに笑みはない。


「チャンミン、いい加減にしろ」

「…どうして?僕、何か変なこと言ってる?」

チャンミンは膝を小刻みに揺すっている。

「お前、何様だと思ってるんだ」

ユノの低い声に
チャンミンがイライラした様子で早口でまくし立てる

「僕が何様かって?
昨年の賞を総ナメにした、シム・チャンミンです。
でも、セキュリティはバイト、ヘアメイクにはナメられる、レッスンも受けれずもう力はこれで限界!」

そう言って、チャンミンは持っていた台本を床に投げつけた

ユノがため息をついて台本を拾う。

「チャンミン、セキュリティは心配するな。
それは俺が…」

「ユノは何人分の仕事してるの!!」

「……何人分?」

「僕を守ることに一杯一杯で、今後の話さえ
ろくにできない」

「そんなことは…」

「…こんな風に場つなぎで動いていたら
僕はすぐに転落してしまうよ」

「……」

2人だけの控え室に沈黙が流れる

ユノは反論ができなかった


「ユノ…僕…移籍してもいいかと…思ってるんだ」

「なんだって?」

「今の事務所じゃ、僕の面倒は見きれないでしょ」

「移籍って、お前…」

チャンミンが立ち上がった

「ねぇ、ユノ。
一緒に移籍しない?」

「何言ってるんだ…」

ユノが驚いたようにチャンミンを見つめる

「契約は1年でしょう?
僕と一緒に移籍しようよ。
トレスタがね、今の僕なら引き取ってくれるかもしれない」

「トレスタ?」

チャンミンの口から意外な言葉が出た

「今回のドラマで、みんなの話聞いてもいいなと思ったし、この間ギルさんと話したら今の旬な僕なら受け入れてくれるって、欲しいって話も出てるって。
もちろんユノも一緒に!」

ユノの表情が歪んでいる
理解不能、といった感じだ。



「行きたいなら、お前一人で行けよ」

「ユノ…」

「ここまで頑張ってきて、なんで俺が移らなきゃならない。」

「じゃあさ」

「なんだ」

「これからの僕はどうなるの?
セキュリティの問題はどうだとしても
力を貯める時間が欲しい、これからの為にも。
トレスタは語学をやったり、時代劇の殺陣の訓練
楽器、いろいろ先を見越して力をつけさせてくれる。」

「そんなにそっちがいいなら行けよ」

チャンミンは食い下がった

「ユノだって、わかってるでしょう?
僕にも勉強が必要だけど、ジンさんにはその考えが全然ないことも、今日わかったでしょう?」

必死な表情のチャンミンは眉尻が下がり、
大きな瞳を潤ませてユノを見つめる

「僕の事を本当に思ってくれるなら
移籍を考えてくれてもいいんじゃないかな」

「試すのか?俺を」

「じゃあ、ユノはどう思ってるの?!」

「……」

「今のままで、いいと思ってる?」

「いいとは、思ってないさ」

「だったら!考えてみてよ、ね?」


その夜、ユノはチャンミンを抱いた

愛しくて可愛くて
なにもかも見失ってしまいそうだ。

無垢な魂

ユノの心も身体も捉えて離さない
美しすぎるチャンミン

組み敷くユノの下で
月の光に喘ぐチャンミンは

なぜか今夜は別人に見えた

チャンミンではない身体を抱いているようで
違和感を覚えるユノ


君は誰?

どこから来たの

なんで俺に抱かれている?

俺の愛しいチャンミンはどこに行った?


どこからも返事はなかった

自分はまた置いていかれたのかと
ユノはそんな不安な気持ちになった。

一緒にいるという約束だったのに

チャンミンは俺を置いてどこかに行ってしまったのか。


情事の後の満たされた時間

ユノは腕の中でスヤスヤと眠るチャンミンを見つめていた

安心した

チャンミンは変わらない寝顔でここにちゃんといる

俺の胸にすり寄って眠っている

俺たちは傷を舐めあって生きる2匹の仔犬のようだ
厳しい外の世界で共に生きる

守ってやらなきゃ

俺より深い傷を負った
この純粋すぎる魂を守らないと

わがままを言って、傲慢に振る舞うのも
その不安な気持ちからだとしたら

俺はチャンミンを守りきれていない。

チャンミンのためを考えたらどうするべきなのか
答えはもう出ている






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