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プロフィール

百海

Author:百海
百海(ももみ)と申します。ホミンペンです

約束 32



その年の年末

テレビは賞レースで盛り上がっていた。
チャンミンはほぼすべての賞にノミネートされていた。

もはや、国内でチャンミンを知らない者はいないのではないか、という人気ぶり


チャンミンは様変わりした。

白いコットンシャツはシルクのハリのあるシャツになり
いつのまにか、ギターを持っている姿を見なくなった。

たまにドラマに出る歌手、ではなくて
歌も歌う俳優、のほうが正しいかもしれない。

ジン・コーポレーションは大きなフロアのあるビルへ事務所を移し
アンティムの他にも、新人アイドルを何人か抱えていた


環境が天地をひっくり返したように変わる中

チャンミンにとって、ユノだけが不変だった。

チャンミンが高みに行くにつれ
ユノにもそれなりのアプローチが絶えず

チャンミンはなにかと嫉妬してユノを困らせて
そして喜ばせてもいた。

「僕には誰も寄ってこないけど
ユノってすごいね、ほんと」

やれやれといった感じのチャンミン。

「チャンミン、なんでお前に誰も寄ってこないかわかるか?」

「どうせ、モテないからだよ」

「パボだな、俺が完全阻止してるからだ」

「えーそうなんだ!そんなことしてたの?」

ケラケラとチャンミンが笑う
とても嬉しそうだ

お互いを甘く縛り合う関係が嬉しい

「脇が甘いんだよチャンミン、
お前、隙だらけだから」

「フフフ…」


収入のあるチャンミンは引っ越そうと提案したけれど
なぜかユノは嫌がった

「もっといいところに住めるよ?」

「うん…でも、ここでいいよ。
家に帰ったら、ニュートラルでいたい。」

「うーん、いいけど…
インテリアとかも凝りたいし。
いいところに住むって、なんかステータスだから」

「あんなボロアパートに住んでたくせに」

チャンミンは、身を乗り出して
その瞳をクルクルとさせる

「すごいと思わない?
まさかこんな有名になるなんてさ」

甘ったれな感じは全然変わっていないところに
ユノは安心する。


「そういえば、キュヒョンと連絡とってるのか?」

「キュヒョン??キュヒョンってあのキュヒョン?」

「そう、幼馴染のキュヒョン」

「あーうん、連絡くるけど、なかなか返信できてないな」

「そのうち連絡来なくなっちゃうぞ」

「大丈夫でしょ。僕のことはテレビでみてるだろうしね」

「………」

「それより、ユノ、年末の大賞だけど
久しぶりにギター弾くからさ、ユノに買ってもらった
あのギター使う」

「そうか、嬉しいよ、サンキュ」


珍しく朝ごはんをユノが作ると言い出して
手早くスクランブルエッグなどを作っている

意外にも手際がいい。

「ユノ、上手だね。」

「これだけはね。ホテルの朝食を作るバイトしてたから。ずっとスクランブルエッグだけ作ってた。」

「へぇー知らなかった、そんな時代があったの」

キッチンに立つユノをチャンミンが後ろから
抱きしめる

ユノの肩にアゴを乗せて
ユノがレタスをちぎるのをみている


「明日は一番大きな賞だな」

「何も聞かされてないけど、出来レースじゃないの?」

「それぞれの事務所がいろいろやってるけど」

「ウチも?」

「やってるよ、ほんとにいろいろ。
でも、この状況だとチャンミンは何かしらの賞をとらないとおかしいからね。大丈夫だろ」

「ギルさんも…ノミネートされてる」

「ああ、ギルはもう安定してるな
ずっと第一線で活躍してて、そこはすごいよ」

「僕は負けないよ、ギルさんだけには」

「お前らしくやっていけばいいよ」

「いやだよ、ギルさんに勝つまでは
のんびりなんてやれない」

チャンミンはパッとユノから離れ
そして、着替え出した

「ユノ」

「ん?」

「なんかさ、今のスタッフ気に入らない」

着替えながら、大きな声でチャンミンが言う

ユノはテーブルに皿を並べていた手を止めた

「え?この間変えたばかりじゃないか」

「うん、でも一流じゃない」

「どこが一流じゃないんだ?
みんないろんなアーティストに関わって来たベテランばかりだろ」

「ギルさんのところなんて、
海外で活躍してた人ばかりだから、いろいろ斬新なんだ」

「斬新なのがいいのか?」

「僕のやることは、スタンダードなことばかり」

「うーん…お前のキャラには合っていると思うけどな」

「そんなことないよ、ユノ。
トレスタのスタッフは全員海外で勉強したスタッフなんだって」

「へぇー」

「セキュリティもね、バイトは雇わないんだって
みんな正社員」

「チャンミンのセキュリティなんて、俺だしね」

ユノは可笑しそうに笑った。


今年、芸能界の新鮮な風となったシム・チャンミンは
数々の賞を総なめにした。

ギルとともにノミネートされていた賞は
すべてチャンミンが奪う形となった。

来年はどうなるかわからない

でも、少なくとも今は
シム・チャンミンは誰よりも一番輝いている

たくさんのトロフィーや花束をもらい
そのキラキラした瞳は常に客席で拍手をするユノにむけられていた。

ギルに勝つことが、ユノが自分だけのものになった証だとチャンミンは頑なに信じていた。

ギルに捨てられ、それを心の闇としてきたユノと一緒に頂点に上りつめ、ギルを2人で見下ろす

意外にも早く、その夢は実現した


最後の大きな賞を獲得した夜
チャンミンはユノをホテルに招待した。

そのホテルはかつてユノがチャンミンのセンイルを祝ってくれたホテル。

その最上階を予約した。


2人で窓から煌めく夜景を見下ろす
あの夜より高いところから見下ろす

「ユノ、ほんとうにありがとう。
ここまで来れたのは、ユノが僕といてくれたお陰だよ」

「お前の実力だよ」

「ねぇ、ユノ、一番高いところからの景色はどう?」

「凄いけど、怖い」

「え?」

「こんなところまで上がってきて凄いなぁと思う半面
高すぎて怖いよ」

「僕がいるよ、ユノ」

「チャンミンがここまで俺を連れてきてくれたんだな。
俺が挫折して来れなかったこの場所」

チャンミンはユノに向き直った

「違うよ!ここはユノが来るべき場所だったんだ。
だからこうして僕と一緒にその夢が叶ったと思ってほしい」

「ああ、そう思うよ。
あの頃、もう何もかも終わりだと思っていたけれど
今、ギルのように活躍してたら、チャンミンにも会えなかった」

「そうだよ!だから僕たちには良いことしか起こらないんだ、ね?全部いい方向に向いてるでしょう?」

ユノを見つめるチャンミンの瞳が必死だ。
ユノはゆっくりと視線を夜景からチャンミンに移す

チャンミンの大きな瞳には
あの夜よりも夜景が煌めいて映る

俺のために、一番高いところまで連れて来てくれたチャンミン

ユノはチャンミンの頬に手をやると
チャンミンはそっと目を閉じて、自分からユノに口付けて来た




年も明け、春に向けての新曲が出始めるころ

ある歌番組でチャンミンは専用の控え室を用意してもらい、本番までユノと過ごしていた。

「なぁ、チャンミン、俺らがここを専用にしなければ
大所帯のグループがここを使えたのに。
二つのグループがここの半分のスペースで辛そうだよ」

「いいんだよ、ユノ。僕たち売れているんだから」

「売れているからって、それとこれとは違うだろ」

「ディレクターがどうぞって言ってくれたからいいの」

「……」


まわりから、ユノはチャンミンに甘い、と言われていた。

仕事でもあるけれど、
傲慢な態度のチャンミンはユノにとってはただの甘えん坊だ。

本番になって、チャンミンはスタジオに行く。

そばにいたスタッフにチャンミンは指示を出した

「ギターは絶妙なタイミングで手渡して」

「はい、ステージに出る直前?」

「それだけじゃなくて、絶妙なタイミングで。
舞台袖のことだけど、客席からは見えるからね」

「は、はい…」

若いスタッフは少しビクビクしていた。

ユノはため息をついた。


「王子様の出番か?」

ユノの後ろからギルが声をかけた。

「王子さまかどうかはしらないけど」

「ユノの王子様だろ?」

「売れだしてきたから、ワガママでね」

「そりゃそうだよ、仕方ない」

「そう思うか?」

「今きっと、世界のすべてを動かせるような気持ちになってると思うよ。」

「ギルも…そんな気持ちだったか?」

「俺?俺はまだまだこれからだから
とてもそこまでの気持ちになんてなってないよ」

「何言ってんだか」

ユノが笑った。

「いや、ほんと」

「……」

「どんなに売れても…俺はいつも
横にユノがいたらなぁって思ってたよ」

「うそつけ」

「信じてもらえないか?
ほんとはわかってるんだろ?」

「何をわかれって言うんだよ」

「俺の苦しみだ」

「お前は苦しんでなんかない」

「苦しんでいたよ
ユノを引き取ろうと、俺がどれだけ奔走したか」

「もう、全部昔の話だよ」

「ま、そうだな」

「客席でチャンミン観てくる」

「またね」

ギルはヒラヒラと手を振ってユノを見送った。


ユノが客席に着くと
ちょうどチャンミンの歌が始まる時だった。

ステージの照明が少しだけ落ちて
伴奏のピアノが静かにメロディを奏でる

そのとき

チャンミンが、あれっ?という顔をした。

どうしたんだろう?

ユノが客席から立ち上がってスタッフの方へ動いた

チャンミンはスツールに座って
まさにギターを弾こうとしているのに
その動きが止まっている

チャンミン?

ピアノがなにかを察して、もう一度前奏を奏でる

なにがあったんだ


あ…

ユノが思わず足をとめた


ギターの弦が…切れている





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百海です。
昨夜も管理画面に入れず、抜けてしまいました。
申し訳ありませんでした。

原因はなんとなくわかるのですが
解決すると不都合も起こるので悩み中です

お話はこれからクライマックスに向かいます

花粉症の方には(私は重症)つらい季節ですが
いろんな別れや出会いの季節でもありますね。

皆さまが幸せに過ごせますように
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